質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六三号

内閣参質一八六第一六三号
  平成二十六年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員石上俊雄君提出我が国半導体産業の国際競争力強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石上俊雄君提出我が国半導体産業の国際競争力強化に関する質問に対する答弁書

一について

 半導体集積回路は、情報通信機器等の様々な分野において使用されており、また、半導体集積回路の製造等に関連する産業(以下「半導体関連産業」という。)は、部品の製造や供給を始め裾野が広く、我が国経済の活力と雇用を支える重要な役割を担っていると考えている。

二について

 お尋ねの「我が国の半導体産業が抱える問題点と課題」については、我が国の半導体関連産業を取り巻く企業間競争の激化や資源環境制約の高まり等のグローバルな環境変化に対応し、各企業が、市場のニーズや動向を十分に踏まえた研究開発や設備投資を進め、新たな市場の創出により、産業活動における新陳代謝を活性化することが、厳しい国際競争にさらされている我が国半導体関連産業の企業の競争力向上に資するものと考えている。

三について

 我が国の半導体関連産業は厳しい国際競争にさらされており、政府としては、諸外国における取組の現状などを踏まえて、国際競争力の強化に取り組むことが重要であると認識している。

三の①について

 法人税改革については、「経済財政運営と改革の基本方針二〇一四」(平成二十六年六月二十四日閣議決定)において「数年で法人実効税率を二十パーセント台まで引き下げることを目指す。この引下げは、来年度から開始する。財源については、アベノミクスの効果により日本経済がデフレを脱却し構造的に改善しつつあることを含めて、二〇二〇年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保するよう、課税ベースの拡大等による恒久財源の確保をする」としており、これに沿って、平成二十六年末に向けて、その具体的内容について、検討していくこととしている。

三の②について

 設備投資促進を目的とした償却資産に係る固定資産税に関する税制措置については、平成二十五年十二月十二日に与党が取りまとめた「平成二十六年度税制改正大綱」において、「固定資産税が基礎的自治体である市町村を支える安定した基幹税であることを踏まえ、政策目的とその効果、補助金等他の政策手段との関係、新たな投資による地域経済の活性化の効果、市町村財政への配慮、実務上の問題点など幅広い観点から、引き続き検討する」とされたことから、政府としては与党における検討を踏まえて対応してまいりたい。

三の③について

 研究開発税制については、平成二十六年度税制改正において、試験研究費の増加額について一定の税額控除を認める特例の拡充を行った。

三の④について

 パテントボックス税制については、経済産業省において、同税制を含め諸外国における知的財産の創出・活用促進のための支援策の実施例等について調査・研究を行っているところであるが、同税制に係る具体的な検討は行っていない。

三の⑤について

 電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)については、第百八十五回臨時国会において広域的運営推進機関の創設等を内容とする電気事業法の一部を改正する法律(平成二十五年法律第七十四号)が、第百八十六回通常国会において電気の小売業への参入の全面自由化等を内容とする電気事業法等の一部を改正する法律(平成二十六年法律第七十二号)が成立したところであり、引き続き、改革の第三段階として、送配電等業務の運営における中立性の一層の確保を図るための措置等を実施するために必要な法律案を平成二十七年の通常国会に提出することを目指すなど、電気事業に係る制度の抜本的な改革を行っていく中で、電気の安定供給の確保及び電気の小売に係る料金の最大限の抑制を図っていくこととしている。

三の⑥について

 為替については、G7やG20の合意を踏まえつつ、適切に対応してまいりたい。

三の⑦について

 お尋ねの「国内外における技術進歩取り込みペースの同程度化や、国内における個別企業・自治体間許認可協議に基づくいわばグレーゾーン解消情報の全国展開」の意味するところが必ずしも明らかではないが、規制改革については、経済活性化、民需主導の経済成長を実現する重要な手段であり、政府としては、強力かつ着実に取り組んでいる。例えば、半導体関連産業については、産業競争力強化法(平成二十五年法律第九十八号)に基づく企業実証特例制度を活用し、高圧ガス保安法(昭和二十六年法律第二百四号)に基づく容器保安規則(昭和四十一年通商産業省令第五十号)に規定する容器再検査の方法に関する特例を設けており、今後とも、国内外における技術開発の動向等を踏まえつつ、規制改革を進めてまいりたい。

三の⑧について

 お尋ねの「半導体模倣品の駆逐に向けた認証トレーサビリティの標準化推進」については、構築される制度の信頼性及び制度間の相互運用性を向上させる観点から、国際標準化機構(ISO)において、「不正防止対策及び管理―偽造や不正な貿易を防止する相互運用性のある対象の識別及び証明制度のためのガイドライン(仮称)」規格(以下「本規格」という。)の制定に向け、日本からも専門家が参加し作業が進められており、現在、その最終段階にあると認識している。また、お尋ねの「流通経路における監視強化など流通リスク増大への対応」については、これまでは特段の対応は行っていないが、本規格の制定後、政府として産業界への周知徹底を図り、適切な流通の確保が図られるよう、支援に努めてまいりたい。

三の⑨について

 お尋ねの「海外の実用新案制度」については、海外における我が国企業に対する訴訟リスクの低減等にも資するべく、関係国の特許当局等との協議の場において、それぞれの制度の相違点等を踏まえた国際的な調和に向けて検討を行っているところであり、引き続き、このような取組を進めてまいりたい。

三の⑩について

 化学物質管理については、これまで国際連合や経済協力開発機構の枠組みの下で我が国も化学物質管理を行っており、引き続き、国際的な動向を踏まえ、適切に対応してまいりたい。

三の⑪について

 お尋ねの「長期供給製品への対応」については、一義的には、製品の供給者と購入者との間の契約に基づき、各契約当事者において判断されるべきものであると考えており、政府としては、現時点において、具体的な検討は行っていない。

三の⑫について

 事業継続計画(以下「BCP」という。)の策定の支援及びサプライチェーンの強靱化の推進については、中小企業に対し、中小企業BCP策定運用指針の策定、BCPを策定した中小企業に対する低利融資等、BCP策定に係る支援を行っており、また、大企業に対し、想定外の事態にも配慮した訓練の実施を通じてBCPの実効性向上に向けた取組を行っているところ、これらの取組は、サプライチェーンの強靱化に資するものと考えている。今後とも、企業規模に応じて、BCPの策定や実効性の向上に向けた更なる施策を検討してまいりたい。

三の⑬について

 半導体集積回路を用いた設備を含め、省エネ効果等の観点から政策的意義の高い設備については、エネルギー使用合理化事業者支援補助金等により支援を行っている。今後とも、より合理的なエネルギー需給構造の実現と温室効果ガスの排出抑制を同時に進めていくという観点から、引き続き、省エネルギー性能の高い設備の普及促進を図ってまいりたい。