質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四六号

内閣参質一八六第一四六号
  平成二十六年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員吉田忠智君提出独立行政法人水資源機構に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉田忠智君提出独立行政法人水資源機構に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、独立行政法人水資源機構(以下「機構」という。)の前身である水資源開発公団(以下「公団」という。)は、水資源開発促進法(昭和三十六年法律第二百十七号)の規定による水資源開発基本計画(以下「基本計画」という。)に基づく水資源の開発又は利用のための事業を実施すること等により、国民経済の成長と国民生活の向上に寄与することを目的として設立され、その後、公団が機構に移行するに当たり、独立行政法人水資源機構法(平成十四年法律第百八十二号。以下「機構法」という。)第十二条第一項第一号等の規定により、原則として、機構が行う同号イに掲げる施設の新設については、「水の供給量を増大させないものに限る」こととされたが、「水の供給量を増大させないもの」とは、基本計画に定められる水の供給の目標を増大させないものと解している。

二について

 お尋ねの「緊急」とは、具体的な期間を指すものではなく、お答えすることは困難である。

三について

 お尋ねの南摩ダム、川上ダム、丹生ダム、小石原川ダム及び木曽川水系連絡導水路については、予備調査の開始後、それぞれ、五十年、四十七年、四十六年、三十四年及び十四年が経過している。

四及び五について

 国土審議会水資源開発分科会調査企画部会が平成二十年十月に取りまとめた「総合水資源管理について(中間とりまとめ)」(以下「中間とりまとめ」という。)の公表以降、機構において、基本計画に基づく水資源の開発のための事業(以下「水資源開発事業」という。)について中止したものはない。
 また、御指摘の「開発からマネジメントへと転換できなかった」及び「利水計画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、中間とりまとめにおいて、「気候変動を見据えた水源開発も含め、多くの課題の解決を図る」必要性が示されており、御指摘の「総合的なマネジメント」は、必ずしも水資源開発事業の中止を意味するものではない。

六について

 御指摘の「砂のたまった他の既存のダムの長寿命化対策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、機構法第十三条第一項の規定に基づき作成された「川上ダム建設事業に関する事業実施計画(第二回変更)」(以下「事業実施計画」という。)において、川上ダム建設事業の目的の一つとして、高山ダム、青蓮寺ダム、布目ダム及び比奈知ダム(以下「既設ダム」という。)の堆砂除去のための代替補給による流水の正常な機能の維持が挙げられている。
 既設ダムの堆砂除去による受益者は、既設ダムによる洪水調節又は流水の正常な機能の維持による受益者である。また、その費用の負担者は、事業実施計画において、国並びに大阪府、京都府、奈良県及び三重県とされている。

七について

 お尋ねの「既存のダムの長寿命化対策のためのダム建設」の意味するところが必ずしも明らかではないが、川上ダム建設事業は、機構法附則第四条第一項の規定に基づき実施されている。

八について

 公団の歴代の総裁の氏名は、進藤武左ヱ門、柴田達夫、山本三郎、望月邦夫、高秀秀信、川本正知及び近藤徹であり、それぞれの者の最終官職は、資源庁長官(当時)、建設事務次官(当時)、建設事務次官(当時)、近畿地方建設局長(当時)、建設事務次官(当時)、建設省河川局長(当時)及び建設技監(当時)である。また、機構の歴代の理事長の氏名は、近藤徹、青山俊樹及び甲村謙友であり、それぞれの者の最終官職は、建設技監(当時)、国土交通事務次官及び国土交通省技監である。
 国家公務員の退職後における再就職の状況は、公務を離れた個人の情報であり、一般に政府が把握すべき立場にないことから、お尋ねのすべてにお答えすることは困難であるが、機構を退職した者の再就職の状況については、「独立行政法人整理合理化計画」(平成十九年十二月二十四日閣議決定)等に基づき、機構において、平成十六年度から平成二十五年度までの各年度の状況を「独立行政法人から関連法人への補助・取引等及び再就職の状況の概要」等に記載し、機構のホームページで公表している。

九について

 機構は、基本計画に基づく水資源の開発又は利用のための施設の改築等及び水資源開発施設等の管理等を行うことにより、産業の発展及び人口の集中に伴い用水を必要とする地域に対する水の安定的な供給の確保を図ることを目的とし、独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号。以下「通則法」という。)及び機構法に基づき設立された独立行政法人であり、御指摘のような批判は当たらないと考えている。

十について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、機構の利益剰余金は、平成二十五年三月三十一日現在で、九百八億千百九十七万九百八十三円である。

十一について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、機構が、その設立以降、利益剰余金を国庫に納付した事実はない。

十二について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、機構は、通則法第三十条第一項の規定に基づき、独立行政法人水資源機構第二期中期計画(以下「第二期中期計画」という。)の変更の認可を受け、第二期中期計画の「七(三)積立金の使途」に「維持管理費等に係る利水者等の負担軽減を図るため、新たに管理システムの更新整備等に活用する。」旨を追記しており、国土交通大臣等においては、この認可に先立ち、国土交通省独立行政法人評価委員会(以下「国土交通省評価委員会」という。)等の意見を聴いているところである。

十三について

 お尋ねの「国際会議への参加」及び「海外の水資源に関する情報収集」に支出した総額は、それぞれ、約五百万円及び約千百万円である。

十四について

 お尋ねについては、計八か国で開催された国際会議に、機構の職員延べ二十七人が参加しており、機構と水資源管理を担う海外の機関との間で、水資源に関する技術情報及び知識を共有すること等を通じて、技術力の維持及び向上が図られたものと認識している。

十五及び十六について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、機構の職員の国際会議への参加及び機構による海外の水資源に関する情報収集は、第二期中期計画を踏まえ、機構法第十二条第一項の規定に基づき、機構と水資源管理を担う海外の機関との間で、水資源に関する技術情報及び知識を共有すること等を通じて、技術力の維持及び向上を図ることにより、利水者等の負担軽減につなげることを目的として、機構の積立金を活用して実施したものである。

十七について

 お尋ねの「評価」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではなく、また、お尋ねの「判断基準」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。
 なお、機構の積立金の使途については、通則法第三十二条第一項の規定に基づき、機構は、国土交通省評価委員会の評価を受け、当該評価の結果については、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会(以下「政策評価・独立行政法人評価委員会」という。)が評価を行っているところであり、平成二十四年度における機構の業務の実績に関する評価については、国土交通省評価委員会は、「独立行政法人水資源機構
 平成二十四年度業務実績評価調書」における「業務運営評価(個別項目ごとの認定)」の「評定理由」において、「積立金の使途については、将来の経常的な管理経費の縮減や維持管理費負担の抑制のために、適切に使われており、評価できる。」と評価しており、政策評価・独立行政法人評価委員会は、機構の職員の国際会議への参加及び機構による海外の水資源に関する情報収集に関して、同条第五項の規定に基づく意見を述べていない。

十八について

 お尋ねについては、機構は、自ら行う施設の管理等に関する具体的な課題について、当該施設のある地形、地質、環境等の特性を踏まえて調査、検討等を行っているものであり、御指摘の「二重行政」には当たらないものと考えている。

十九について

 独立行政法人の評価制度については、国民に対する説明責任を果たしつつ、評価手続の効率化を図るとともに、目標設定及び業績評価の実効性を高めるため、主務大臣が独立行政法人の業績評価を行い、総務省に新たに設置する独立行政法人評価制度委員会が主務大臣による業績評価結果等を点検する仕組みに改めるなどの抜本的な改革を行うための独立行政法人通則法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第六十六号)等が平成二十六年六月六日に成立し、同月十三日に公布された。政府としては、平成二十七年四月一日からの同法の施行に向け、所要の準備を進めているところである。