質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一一号

内閣参質一八六第一一一号
  平成二十六年六月六日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員前川清成君提出会社法改正案における「特別支配株主による株式等売渡請求手続き」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出会社法改正案における「特別支配株主による株式等売渡請求手続き」に関する質問に対する答弁書

一の1について

 株式等売渡請求制度(現在、国会に提出している「会社法の一部を改正する法律案(以下「本法案」という。)」による改正後の会社法(平成十七年法律第八十六号。以下「法」という。)第二編第二章第四節の二の規定による制度をいう。以下同じ。)は、実務上、ある株式会社の株主が、その株式会社の全ての株式を有するという支配関係を機動的に形成する役割を果たすものであり、例えば、①大幅な事業の改革等を行う必要がある株式会社において、短期的な損益の悪化による少数株主からの経営責任の追及をおそれることなく、長期的視野に立った柔軟かつ積極的な経営を行うことができるようにすること、②株主総会に関する手続を省略することにより意思決定を迅速化すること、③少数株主が存在することによる株主管理コストを削減すること等を目的として利用されることを想定している。

一の2について

 お尋ねの「先進諸国」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、米国、英国及びドイツにおいて株式等売渡請求制度と同様の制度が採用されているものと承知している。しかし、その制度の詳細については、承知していない。

二の1及び4について

 お尋ねの「株式移転の効果が「取得日」に生ずること」としたのは、株式会社の全ての株式を有するという支配関係を機動的に形成する観点から、一定の日に集団的、画一的に売渡株式等(法第百七十九条の二第一項第五号に規定する売渡株式等をいう。以下同じ。)の取得の効力を生じさせる必要があるためである。

二の2及び3について

 株式等売渡請求制度における売買代金支払債務は、債務の弁済の場所についての民法の原則に従い、持参債務となる。

二の5について

 お尋ねの「特別支配株主が対価を支払わない場合における、売渡株主の救済手段」としては、売渡株式等の大部分について対価が支払われない場合等に対応するものとして、本法案において、売渡株式等の取得の無効の訴えの制度を創設するところである。
 また、民法の一般原則により、売渡株主等(法第百七十九条の四第一項第一号に規定する売渡株主等をいう。)は、対価が支払われない場合には、債務不履行を理由として売渡株式等についての売買を解除することや、損害賠償請求をすることが可能である。

三の1について

 お尋ねの「時価」の意味するところは必ずしも明らかでないが、仮に特定の時点の市場価格という意味であるとすれば、売渡株式等が市場価格のある株式の場合には、特定の時点の市場価格は市場全体の動向等に左右される面もあり、必ずしも対象会社(法第百七十九条第二項に規定する対象会社をいう。以下同じ。)の株式の客観的な価値と一致するものではないし、市場価格のない株式の場合には、何をもって「時価」とするのかは一義的に明らかでない。したがって、常に「時価」をもって売渡株式等の対価とすることは相当でないものと考える。

三の2について

 対象会社が法第百七十九条の三第一項の規定に基づき承認をするに際しては、売渡株式等の対価が当該売渡株式等の客観的な価値に照らして相当であるかどうかが主な基準となるのであり、お尋ねの「「著しく不相当」であるか、否か」ではない。
 また、本法案がこの基準を明記していないのは、少数株主を含む株主の利益に配慮すべき立場にある取締役が善管注意義務に基づいてこの承認をするかどうかを判断しなければならない以上、この基準の内容は明白であるからである。