質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第九九号

内閣参質一八六第九九号
  平成二十六年五月二十三日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員尾立源幸君提出戸籍謄抄本等の不正請求事件並びに本人通知制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員尾立源幸君提出戸籍謄抄本等の不正請求事件並びに本人通知制度に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「戸籍謄抄本等の不正請求」の意味するところが必ずしも明らかではないが、偽りその他不正の手段による戸籍の謄本等の交付請求(以下「戸籍謄本等の不正請求」という。)に係る被害状況の実態については、法務省において法務局又は地方法務局を通じて市区町村から報告を受けるなどしてその把握に努めているところである。把握している戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第百三十三条の規定を具体的に適用した事例としては、御指摘の「プライム総合法務事務所事件」などがある。

二及び六について

 戸籍謄本等の不正請求の防止等のために講じた措置としては、市区町村を管轄する法務局若しくは地方法務局又はその支局(以下「管轄法務局等」という。)において、当該市区町村の戸籍事務担当者に対する研修等の際に、個人情報の保護が必要とされている情勢に鑑み、いわゆる「戸籍公開の原則」を見直し、戸籍の謄本等を請求することができる場合を制限した平成十九年の戸籍法改正の趣旨を踏まえて戸籍謄本等の交付請求を認めるか否かを厳格に審査するよう指導している。また、法務省において、日本行政書士会連合会等の関係団体(以下「関係団体」という。)に対して戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)第十一条の二第四号に定める統一請求書の適正な管理等について適宜要請し、指導内容を行政書士等に周知するよう依頼しているほか、行政書士等が紛失するなどした統一請求書に関する情報を集約した上、管轄法務局等を通じてこの情報を全国の市区町村に提供するなどしている。
 お尋ねの「住民票の写し請求等の厳正な取扱」に関する関係団体に対する働きかけ等については、総務省において、関係団体に対し、制度改正などの機会を捉えて、住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令(昭和六十年自治省令第二十八号)第十一条第二号に定める、関係団体が発行した住民票の写し等の交付を申し出る書類等の適正な管理等について、適宜要請している。
 お尋ねの戸籍謄本等の不正請求の「実態調査」やその「防止に向けた必要な措置」、「個人情報保護の原則を守るよう関係士業団体等に働きかける」こと及び「関係省庁と連携した偽造防止策や啓発の強化等について有効な手立てを講じるべき」ことについては、戸籍謄本等の不正請求の実態及びこれによる被害状況について、今後とも、市区町村等の関係機関と連携して情報の収集に努め、必要に応じて、この情報を全国の市区町村に提供するなどの措置を講ずるとともに、個人情報の保護の観点から、引き続き、関係団体に対し、統一請求書等の適正な管理等に更に努めるよう働きかけ、戸籍謄本等の不正請求の防止に取り組んでまいりたい。
 戸籍謄本等の不正請求に係る被害の相談については、市区町村や管轄法務局等において戸籍事務に関する相談として既に対応しているところ、引き続き、このような対応を適切に講じてまいりたい。

三及び四について

 お尋ねの「「本人通知制度」を法定化」することについては、御指摘の「本人通知制度」を実施した場合には、正当な理由に基づく戸籍謄本等の交付請求を萎縮させる効果が生じるおそれがあるほか、手続の密行性が求められる民事保全法(平成元年法律第九十一号)に基づく保全命令の申立てをしようとする債権者の利益を害するおそれがあるとの指摘があること、市区町村に通知に係る事務処理上の負担が生じることなどから、御指摘の「本人通知制度」について立法的措置を講ずることや、お尋ねのように「全国各地方自治体における実施状況について早急に調査」し、「地方自治体における必要な経費を国として補助」することについては、政府としては考えていない。

五について

 お尋ねの「戸籍等交付窓口における交付請求の不当性の判断基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、戸籍謄本等の交付請求の要件は戸籍法第十条の二、第十条の三等で明確に定められており、交付請求がその要件に適合しなければ戸籍謄本等を交付しないこととなるものである。
 偽造した委任状を用いた戸籍謄本等の不正請求の防止については、委任状がその作成名義人により作成されたものであるかを審査し、筆跡等に不審な点があれば調査をすることとなること、同条等の規定に基づき、現に請求の任に当たっている者を特定するために必要な事項を厳格に確認していること及び委任状の偽造等は、刑罰の対象となることから、お尋ねの「委任状の正当性を確認する方法を統一する等」の措置を講ずる予定はない。

七について

 お尋ねの「①の通達の発出、②の啓蒙、③の旅券事務所等への啓蒙」に係る「具体例」については、法務省において、「戸籍法の一部を改正する法律の施行に伴う戸籍謄本等の公用請求等について(依頼)」(平成二十年五月十五日付け法務省民一第千四百二十八号法務省民事局総務課長通知)及び「戸籍法以外の法律の規定に基づく戸籍謄本の交付請求等について(依頼)」(平成二十二年六月二十八日付け法務省民一第千五百六十六号法務省民事局総務課長通知)を各府省庁に宛てて発出するなどし、国又は地方公共団体及びその関係機関が国民等から戸籍に関する情報の提出を求める場合における当該情報の範囲については、必要最小限にとどめることが望ましいことから、各種の手続の内容に応じ、戸籍に関する情報の提出を求める際には、可能な限り必要な事項のみを記載した戸籍の抄本等を利用することを推進するよう、旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)を所管する外務省を含め、関係機関に対して協力を依頼しており、今後とも、必要に応じて、このような協力を要請してまいりたい。

八について

 戸籍謄本等の不正請求により、戸籍の謄本等の交付を受けること等については、戸籍法等の法律の規定により禁止されており、現に請求の任に当たっている者の確認を始めとする戸籍謄本等の不正請求を防止するための仕組みも設けられていることから、取締りや現行法の規定の厳格な運用の徹底を図ることが重要であると考えている。
 また、お尋ねの「関係団体等」及び「自主規制」の意味するところが必ずしも明らかではないが、警察庁では、従来から、探偵業務における調査の対象となる個人の権利利益の保護の徹底等について、加盟する探偵業者に指導を徹底するよう、探偵業者から成る業界団体に対して指導を行ってきたところであり、引き続き、必要な指導を行ってまいりたい。

九について

 市区町村の戸籍事務担当者による戸籍簿の不正な閲覧に係る事案の再発防止策については、管轄法務局等の職員による市区町村の職員に対する研修、市区町村の戸籍事務担当者を構成員とする全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会における法務省の職員による講演等を通じて、引き続き、戸籍に関する情報の適正な管理について指導してまいりたい。