質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第二二号

内閣参質一八六第二二号
  平成二十六年二月二十八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員川田龍平君提出臨床研究における医師と製薬会社による患者の権利侵害に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出臨床研究における医師と製薬会社による患者の権利侵害に関する質問に対する答弁書

一について

 ぎまん的顧客誘引とは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)で禁止される不公正な取引方法のうち、独占禁止法第二条第九項第六号の規定に基づき、公正取引委員会が不公正な取引方法(昭和五十七年公正取引委員会告示第十五号)第八号において指定する「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること」であるところ、一般論としては、医薬品の製造販売業者が、自己の供給する医薬品の内容等について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引することは、ぎまん的顧客誘引に該当する。なお、昭和五十七年以降、ぎまん的顧客誘引として独占禁止法に基づく法的措置を採った事案はない。
 また、公正競争規約は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第十一条の規定により、事業者又は事業者団体が、消費者庁長官及び公正取引委員会の認定を受けて、表示又は景品類に関する事項について設定する業界の自主基準であり、御指摘の「労務提供」により、医療用医薬品製造販売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約(平成九年公正取引委員会告示第六十六号。以下「本件規約」という。)に違反することとなるか否かについては、本件規約を設定し、その運用をしている医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(以下「協議会」という。)において判断されるものであり、政府としては、お答えを差し控えたい。
 さらに、お尋ねの「データの不正操作等が立証されない場合でも、当該医薬品の製造販売事業者の社員が関与を隠していた場合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、ぎまん的顧客誘引は、事業者が、「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること」であり、当該医薬品の製造販売業者の社員が関与を隠していたかどうかは、ぎまん的顧客誘引に該当するか否かに直接関係するものではない。

二及び三について

 公正競争規約は、一についてで述べたとおり、業界の自主基準であり、御指摘の「奨学寄附金の提供など」又は「労務提供」により、本件規約に違反することとなるか否かについては、協議会において判断されるものであり、政府としては、お答えを差し控えたい。
 また、お尋ねの「調査」に着手しているか否かについては、公正取引委員会が行う事件調査の具体的な活動内容に関わる事柄であり、お答えを差し控えたい。

四及び五について

 厚生労働省医政局においては、御指摘のSIGN研究の研究代表者が所属する東京大学に対する聞き取り調査の結果を踏まえ、同大学に対し、できるだけ早く事実関係の詳細な調査(以下「本件調査」という。)を実施するよう依頼したところであり、本件調査の結果の最終的な報告を受けていない現時点においては、お答えを差し控えたい。

六について

 御指摘の疑惑については、東京大学に対し、本件調査の実施を依頼したところであり、お尋ねについてお答えすることは困難である。

七について

 お尋ねの「臨床研究実施計画書の内容」については、本件調査の実施を依頼したところである。