質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一六八号

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書の位置付けに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月二十日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書の位置付けに関する質問主意書

 平成二十六年五月十五日に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書(以下「本報告書」という。)が公表され、政府の憲法第九条に係る解釈を変え、集団的自衛権の行使を認めるべきとの意見が提示された。しかしながら、政府の憲法第九条に係る解釈は、国会における長年の議論の積み重ねの中で示され、蓄積されてきたものであり、その中で全体の整合性をとるべく構築されてきている。政府だけの判断で一方的に解釈変更をすることは、これまでの国会論戦を軽視することになりかねない。右の点を踏まえ、以下質問する。

一 本報告書に基づき安全保障政策を転換した場合、集団的自衛権の行使について、いわゆる「限定容認」を行うことになるが、日本がこの七十年近く憲法第九条の理念に基づいて蓄積・構築してきた安全保障政策の大転換となるのではないか、政府の見解如何。

二 五月十五日の総理記者会見において記者から指摘もあったように、集団的自衛権の行使容認の問題は、平成二十四年の衆院選、平成二十五年の参院選の自民党公約に掲げていたとはいえ、選挙で大きな争点となっていないものである。右の指摘に対して、安倍総理は「私の街頭での演説を聞いた方々はご存じだと思いますが」と答えていたが、安倍総理の街頭演説を聞いた国民がどれだけいるか疑問である。街頭演説をもって国民に説明したとするのは不十分ではないか、政府の見解如何。

三 政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権を行使できるようにした場合、文民統制が十分に働くか問題になってくると考えるが、政府として対策を検討しているのか。

四 本報告書の提言は、日本の安全保障政策の大転換となるものであり、日本国民にも大きな影響を及ぼすものである。「憲法改正では時間がかかる。国際情勢の急速な変化に対応できない。」との指摘もある。しかしながら、立憲主義を採る法治国家として、集団的自衛権の行使を認めようとする場合、憲法改正の手続によって国民の意思を問うべきではないか。緊急性を理由に拙速な解釈改憲を行い、憲法秩序の安定性を損ねることはあってはならず、憲法に定めた改正手続を経るべきと考えるが、いかがか。

五 本報告書に記載されている具体的事例や集団的自衛権の行使などは、米国、韓国等にも深く関係することである。また、周辺国との緊張を高めるものになってはならない。本報告書を諸外国に対して十分に説明し、諸外国の考えも十分に確認する必要があると考えるが、いかがか。

  右質問する。