質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一六〇号

福島第一原子力発電所一号機で確認された水漏れに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月十九日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   福島第一原子力発電所一号機で確認された水漏れに関する質問主意書

 東京電力株式会社(以下「東電」という。)は、五月二十八日の記者会見で、東電福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の一号機の地下一階で起きている汚染水の漏えい箇所の一つをロボットによる調査で特定したことを発表した。圧力抑制室から格納容器へと圧力調整のために取り付けられた真空破壊ラインの継手部分を保護するカバーからの漏えいが確認されたとしている。
 記者達からの質問に対し、漏えいは、カバー内側にある蛇腹状の伸縮継手が腐食したものと推定していること、また、その腐食は、海水注入したことによる塩分の腐食であると考えられるとの見解が示されたという。しかし、汚染水の漏えいの原因は海水注入による腐食であるとの証拠は存在しない。また、汚染水の漏えいは福島第一原発の事故収束を妨げているだけでなく、他の原子力発電所での同様の漏えい再発を防ぐためにも重要であることから、以下質問する。

一 東電は、真空破壊ラインの継手は、厚さ一・五ミリのステンレス製であり、圧力の変化で生じる伸縮を吸収するため蛇腹状の形状をしており、一号機の建設以来、一度も交換したことがない部品であるとしている。政府は、このことを東電に確認した上で、その正否について明らかにされたい。

二 国会の「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」は報告書で、原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)が全国の原子力事業者に対して、改訂耐震設計審査指針(以下「改訂指針」という。)に照らした耐震バックチェックを求めていたが、福島第一原発についてはわずかしか実施していなかったとしている。また、改訂指針の要求を満たさない機器・配管系が多数あることを把握し、耐震バックチェックを急ぐ必要性について、東電も保安院も認識していたにもかかわらず、東電は最終報告書提出予定を二〇一六年一月としており、地震動に耐えられるような補強がなされないまま、東日本大震災を迎えることになったとしている。
 東電は五月三十日の記者会見で、右の点を指摘され、今回の漏れが見つかった部分についても耐震バックチェックが実施されていなかったことを認めた。政府としても、東電に確認した上で、その正否について明らかにされたい。

三 政府は、福島第一原発と同様の厚さや材質で、蛇腹状の伸縮継手が使われた原子力発電所が、全国の原子力発電所の中で福島第一原発一号機以外にどこに存在するのか確認しているか。確認している場合には、全ての存在を明らかにされたい。確認していない場合には、いつまでに確認を済ませるのか、政府の方針を明らかにされたい。

四 福島第一原発一号機は、一九七一年の運転開始以来四十三年が経過している。記者会見で、東電は、漏えいの原因を蛇腹状の伸縮継手が塩水で腐食したと推定しながらも、耐震性の不足による破壊が原因ではないかとの記者の質問に対し、百パーセントは否定できないと回答している。
 老朽化と耐震性の不足による破壊が起きたことが否定できない以上、また、汚染が続いており確認が困難である以上は、同様又は類似の部品が使われている原子力発電所における部品の交換を、原子力規制当局は確実に求めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 原子力規制委員会が本年一月から開始した「原子力発電所の高経年化技術評価等に係る審査会合」では、全国の原子力事業者に対し、旧体制で行われなかった改訂耐震設計指針に対するバックチェックを完了させた上で、基準を満たせない機器や配管系の交換が全て確実に行われているかどうか確認しているか。していない場合には、その理由を明らかにされたい。

  右質問する。