質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一五〇号

原発事故避難者の住宅の確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月十八日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   原発事故避難者の住宅の確保に関する質問主意書

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)から、三年三か月が経過したが、十数万人の住民が事故によって、住み慣れたふるさとを離れ、不自由な生活を強いられている。
 私は、去る六月九日に原発事故避難者の会「キビタキの会」が呼びかけ開催された住宅の安定的な確保を求める復興庁、内閣府及び国土交通省との懇談会(以下「懇談会」という。)に参加し、避難してきた住民の訴えを聞いた。キビタキとは、福島県の県鳥で、ふるさとに想いを寄せ、帰りたくても帰れない住民の気持ちを託したとのことである。
 現在、原発事故避難者は、災害救助法に基づく応急仮設住宅が供与されているが、去る五月二十八日に一年間の供与期間の延長が決定し、二〇一六年三月末までとされたところである。
 しかし、生活の基盤である住宅に関して、一年ごとの更新が繰り返されるというのは、極めて不安定な状態であり、将来の見通しも立てられない。学齢期にある子どもにはとりわけ度重なる引っ越しが多大な負担をかけるばかりか、大人にとっても大きな精神的経済的負担を与えるものである。
 「長期にわたる無償の住宅の提供を」との避難者の訴えは、当然であり、これまで原子力発電を国策として推進してきた政府が責任を持って対応すべきことであると考える。残念ながら、懇談会における担当省庁の対応には誠意が感じられず、政府の避難者への住宅政策を根本的に改める必要があると考え、以下質問する。

一 懇談会で「原発事故によって東京都に避難してきた住民は、何世帯何人か。全国では何世帯何人か。」との質問に、出席した省庁の担当官の誰もが答えられなかった。確かに自主避難など集計が困難な例もあると思われるが、支援対象を明らかにするのは、基本ではないのか。各自治体とも連携し、全国における避難者の世帯数及び総数を明らかにされたい。また、都道府県別の避難者の世帯数及び総数を明らかにされたい。

二 懇談会では、自主避難をした母親から、「どうして福島県に復興住宅を建てるのか」と質問したところ、「県外に作ってはいけないとは書いていない」と回答されたと聞いた。そうであるならば、避難者が多い福島県以外の自治体に対して、政府は福島県以外でも住宅建設の用意があることを積極的に広報するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 現在供与されている応急仮設住宅では、狭く、生活に困難を来している世帯も多い。例えば、いわき市から武蔵野市へ大人三人と子ども一人で避難してきた世帯は、都営住宅に入居したが、一LDK程度の広さのため、家族のうち七十代の女性が一年後に避難元へ帰らざるを得ない事態となった。七十代女性は福島県の災害公営住宅への申込みが外れ、今後の生活に不安を感じていると訴えていた。ただ住んでいるだけの暮らしではなく、子どもが健やかに育ち、お年寄りが安心できる広さの住宅が必要であり改善すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 現在の災害救助法に基づく応急仮設住宅の供与に関しては、五月二十八日に供与期間の一年延長が決定し、二〇一六年三月末までとされたが、その後の住宅の供与について、最終的な責任者である内閣総理大臣の見解を明らかにされたい。

五 原発事故の後、自主避難し、知人宅に身を寄せた女性は、知人宅であるという不便さから、やはり応急仮設住宅として都営住宅に入居したいと都の担当者に問い合わせをした。しかし、「事故直後にあった応急仮設住宅の提供は、現在新規で受け付けていないので、一般の受付と同様に申込みして欲しい」とのことで現在も入居に至っていない。このように避難の理由が原発事故である場合は、単なる引っ越しではないことから、少なくとも応急仮設住宅に入居できる対象とすべきではないか。

六 二〇一三年十月に閣議決定された被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)において、被災者への支援の「(8)住宅の確保」の主な具体的取組の中に、「同年四月以降については、代替的な住宅の確保等の状況を踏まえて適切に対応。」とあるが、どのように実施するのか。また、見直しについて、誰が、どのように判断するのか、明らかにされたい。
 強制避難であるか自主避難であるかを問わず、さらに、現在の避難先がどこであれ、原発事故の避難者が、長期にわたって安心して住み続けることのできる無償の住宅を確保することを基本方針の中に書き込む見直しをするべきであると考えるが、いかがか。

七 懇談会にて、原発事故避難者の会「キビタキの会」より、「基本方針の見直しができない場合、全ての原発事故避難者に対し安心して住み続けることができる住宅の提供は政府の責任であることを明記し、住宅を必要とする避難者には長期にわたる無償の住宅の提供を行う新たな法律をつくるべきである」との提案がなされたが、これは当然の要望と考える。懇談会に出席した省庁の担当官からは、「法律は規制のためにある」旨の回答があったが、様々な災害に際し、新たな法律を作り被災者を救済することも、政府の努めの一つであると考える。これまでにない甚大な原子力発電所の事故による多数の住民の住宅の確保を、包括的に行うための新たな立法措置について、政府の見解を明らかにされたい。

八 原発事故の被災者に対する住宅政策に関して、何人もの担当官が会合に参加しても、その場における責任者が明らかでなく、責任体制が不明確であり、復興庁、内閣府及び国土交通省の連携と避難者への対応には、組織的にも大きな問題を感じた。
 避難者対応の窓口を一本化して、事務局を設置し権限を付与して、日常的な対応に当たるべきと考えるが、いかがか。

  右質問する。