質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一三一号

日米安全保障条約と集団的自衛権行使の解釈変更に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月十三日

小西 洋之   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   日米安全保障条約と集団的自衛権行使の解釈変更に関する質問主意書

一 一般論として、条約又は法律に違反する、あるいは、矛盾・抵触する閣議決定は法的に無効であると解してよいか。

二 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安全保障条約」という。)第三条の趣旨について、特に、「憲法上の規定に従うことを条件として」の文言の意味及び当該規定が措置された理由並びに経緯について、詳細に示されたい。

三 日米安全保障条約第三条の「憲法上の規定に従うことを条件として」との規定は、我が国において集団的自衛権を行使することは憲法に違反するものであるため、「我が国が米国のために集団的自衛権の行使を行わないことが日米両国間で了解されたもの」と解してよいか。

四 日米安全保障条約第三条は、憲法の定める手続に基づき、国会承認をされている。この国会による承認行為は、国会が当該承認行為を通じて「我が国において、集団的自衛権の行使は憲法上許されない」との憲法解釈を機関として決定しているものと解してよいか、政府の見解を明らかにされたい。

五 一般論として(第二次安倍内閣が現に企図しているように)、集団的自衛権の行使が可能であるとの憲法解釈の変更を閣議決定により行った場合、当該閣議決定は日米安全保障条約第三条との関係で法的に無効であると解してよいか。

六 一般論として(第二次安倍内閣が現に企図しているように)、集団的自衛権の行使が可能であるとの憲法解釈の変更を閣議決定により行った場合、当該閣議決定は、かつて日米安全保障条約第三条が国会承認された際に国会が機関として決定している「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」との憲法解釈と反する、あるいは、矛盾・抵触するものであって、その意味において当該閣議決定は国会承認の範囲を超えるものであり、法的に無効であると解してよいか。

七 安倍総理は、去る二〇一四年六月十一日の民主党海江田代表との党首討論において、「集団的自衛権の行使を行う場合には、日米安全保障条約を改定するつもりはない」との趣旨の発言を行っている。仮に、第二次安倍内閣において、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更を行った際には、日米安全保障条約第三条を改正する必要はないという認識でよいか。また、そうした認識である場合は、当該第三条の国会承認との関係で、法的な問題は一切生じないと考えているのか。

八 一般論として、条約に違反する、あるいは、矛盾・抵触する法律は法的に無効であると解してよいか。

九 一般論として(第二次安倍内閣が現に企図しているように)、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更に係る閣議決定を行い、その後、安倍総理が国会審議等において再三述べているように、集団的自衛権の行使に係る自衛隊法等の法改正が国会においてなされた場合、日米安全保障条約第三条を改正しない限り、当該閣議決定のみならず当該自衛隊法等の改正事項についても、法的に無効であると解してよいか。

十 また、同様に、安倍総理が再三国会審議等において述べている憲法解釈の変更の後に行うとする日米防衛協力ガイドラインの改正(見直し)についても、日米安全保障条約第三条を改正しない限り、当該改正事項は法的に無効であると解してよいか。

十一 仮に、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈に基づき、我が国が米国のために集団的自衛権を行使することを可能とする日米安全保障条約第三条の改正案が国会承認された際には、政府が国会答弁等で認めているところの同条約第五条(米国の対日防衛義務)及び第六条(日本の施設提供義務)との関係により成立している双務性は失われることになる、すなわち、日米安全保障条約は片務性を帯びるものになると解してよいか。

十二 日米安全保障条約第三条のもとで、米軍がその軍事方針あるいは軍事作戦において、自衛隊が米国のために集団的自衛権を行使することを想定している、あるいは、期待しているという事実は存在するか。また、そうした事実が将来においても生じうると考えているのか。生じうると考える場合は、どのような軍事的状況下においてであるかその具体的根拠を示されたい。

十三 前記一から十一については、太田国土交通大臣に別途それぞれに関する見解を問い、その上で、第二次安倍内閣における集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更に係る閣議決定への署名拒否の意思の有無及び署名拒否の意思を有さない場合はその具体的理由を明らかにされたい。なお、本質問の趣旨と関係のない、「現在行われている与野党協議の結果を受けて検討する」等の答弁は答弁漏れとみなすので断じて行わないこと。

  右質問する。