質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇七号

民法改正案の国会提出に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年五月二十六日

前川 清成   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   民法改正案の国会提出に関する質問主意書

 民法(債権法)改正案に関して、次期通常国会に一括して提出した場合、国会における法案審査に極めて大きな影響が生じてしまうことを平成二十六年四月二日付け質問主意書あるいは同年四月二十四日の参議院法務委員会において指摘したところであるが、かつて平成十七年五月十九日、新会社法制定(会社法全面改正)に際して、簗瀬進議員は以下の通り質疑し、南野法務大臣は以下の通り答弁している。
簗瀬進君 「これ衆議院では審議時間は何時間ぐらいだったでしょうか、この法案について。」
国務大臣(南野知惠子君) 「三十五時間ぐらいいただいたかなと思っております。」
簗瀬進君 「委員の質問の時間が三十五時間ということですか、それは。」
国務大臣(南野知惠子君) 「参考人質疑その他も含めまして、全体的な委員会が開催された時間でございます。」
簗瀬進君 「関係資料として出されたもののページ数を足し合わせてみますと七千八百四十ページなんですね。眼光紙背に徹するという言葉がありますけれども、大臣、これお目通しはどの程度なさったんでしょうか。」
国務大臣(南野知惠子君) 「全部読ませていただいたと言うと、これうそになります。でも、要所、要点についてはいろいろレクも受けておりますし、そういう点については関心を持ってポイントを聞かせていただいております。」
簗瀬進君 「三十五時間で割ってみますと、七千八百割る三十五ですから、一時間当たりどの程度読めたのかなというその分量が出てくるわけでございます。
 実は、私ども民主党の中で最後までこの法案に対する対応、いろいろな御意見が出ました。その中で、このような重要法案、あるいはこれからの日本の経済社会の姿を決めてしまう重要法案に対する国会の審議能力を大幅に上回るような法案の提出の仕方なんじゃないのか、こういう意見が大変強くございました。三十五で割りますと一時間に三百ページ以上読まなきゃならない。(中略)とても読み切れないような法案なんですよ。しかも、九百七十九条でございますから、その中で本当は逐条審議でもやらせていただければと思うんですけれども、それが三十五時間の中で収まってしまうと。私は、これは非常に国会の審議能力をある意味で軽視、あるいはもっとはっきりとした言い方をすれば、国会の形骸化につながるような法案の提出の仕方なのかなと、こういうふうにどうも思わざるを得ないんですね。これでは私は責任を持って議論ってできないじゃないですか。
 こういうことを、基本法についてこんな対応をするということについて大臣の御所見、是非とも聞いておきたい。」
国務大臣(南野知惠子君) 「衆議院でも検討していただいた時間は三十五時間と申し上げましたが、時間数というよりも中身の濃さということによって、すばらしい委員会の先生方によって中身が検討されていき、これが深まっていくものと理解いたしております(以下略)」
簗瀬進君 「大臣、若干の考え違いがあるんじゃないのかなと思います。
 役所が何時間掛けるということと私の質問の趣旨は全然違うんですよ。逆に、役所が大変時間を使って、逆に国会議員が時間が少な過ぎるということは、それ自体何を意味しているのかというと、正に官僚主導の政治を大臣自身が容認をした、そういう答弁なんですよね。また、その官僚主導型で国会のチェック機能が弱くなってもいいよと、こういうふうなことを先ほどの御答弁は意味しているように私は受け取れます。いかがでございましょうか。」
 以上は会社法に関する議論であったが、民法(債権法)も会社法同様に基本法であり、国民の日常生活を規律するルールを定める点では、会社法以上に国民生活に直接、深く関わる法案審議となる。
 それにもかかわらず、会社法同様に「一時間あたり三百ページ」のペースで審議が行われたならば、文字通り「国会の形骸化」、「官僚依存」、「法制審丸投げ」の批判に対して何ら抗弁することはできない。
 そこで、民法(債権法)改正案の国会提出に先だって、政府に以下の通り質問する。

一 会社法の制定に際して三百二十六本もの関連する法律の改正を要したが、民法(債権法)の場合、改正を要する関係法案の数及び合計の条文数はいかがか。

二 民法(債権法)改正案提出に際して、国会へ提出される関係資料はどの程度の量になるか。

三 国会審議を実質化するためには、民法(債権法)改正案を一括で提出せずに、例えば分野毎に、数回に分けて提出するべきではないか。

四 平成二十六年四月十一日付け「民法改正作業と国会審議に関する質問主意書」に関する答弁書において、政府は「現段階ではお答えすることはできない」と答えたのは無責任である。何故なら政府がどのようなかたちで国会に提出するかと、国会審議とは密接に関連するからである。
 ついては、あらためて民法(債権法)改正案の国会提出に関する政府の方針を明確にされたい。

  右質問する。