質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第九七号

「慰安婦」問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年五月十二日

藤田 幸久   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   「慰安婦」問題に関する質問主意書

一 稲田朋美内閣府特命担当大臣が昨年五月二十四日の記者会見において、「戦時中は慰安婦制度ということ自体が悲しいことであるけれども、合法であったということもまた事実である」と述べている。この発言について、政府の見解を明らかにされたい。

二 前記一に関して、慰安婦制度が合法であったとするならば、同制度はどのような法規によって合法性が担保されていたのか示されたい。また、戦前において、慰安婦制度を合法と評価した政府見解があったのか、明らかにされたい。

三 戦前のいわゆる「公娼制」の柱となっていた娼妓取締規則(明治三十三年十月内務省令第四十四号)は、娼妓となるための手続や規則を定めている。同規則では、十八歳未満の者は娼妓となることができず、娼妓稼業をなすためには、戸籍謄本、家族の承諾書などを持参の上、自ら警察に出頭し、自由意思で娼妓になる意思があることを申告しなければならなかった。また、府県令の規定で指定された地域外には居住できず、官庁の許可した貸座敷でなければ娼妓稼業は行えず、警察に備えられた娼妓名簿に登録しなければ娼妓稼業に就くことができなかった。さらに、いつでも廃業する自由があることなどが定められていたが、慰安婦にはこれらの規定が適用されていたのか。同規則の違反者には罰則も定められていたが、慰安婦に関して同規則への違反で処罰された者はどのくらい報告されているのか。

四 前記三の娼妓取締規則に従って軍の慰安所が運営されていたとすると、内務省の下で警察が、軍「慰安婦」の名簿も娼妓名簿として管理していたことになる。政府は、そのような名簿を入手し、調査しているのか。

五 駐屯地内の軍の慰安所には警察の管理が及んでいたのか。警察の管理が及ばない場合、これを管理する軍の法規が制定されていたのか。

六 慰安婦制度は、一九九〇年以前に、戦前・戦後を通じて、公表されたことがあるのか。

七 陸海軍が設置した「慰安所」の適法性に関する公文書の存否を調査したのか。その結果、適法性が裏付けられたのであれば、その根拠を示されたい。

八 戦前、中国・上海の旧日本軍海軍慰安所で「従軍慰安婦」として働かせるため、日本人女性十五人をだまし、長崎から移送した慰安所の日本人経営者らを当時の刑法の国外移送誘拐罪に当たるとして、有罪とした長崎地裁判決文(國外移送誘拐被告事件に関する長崎地方裁判所刑事部昭和十一年二月十四日判決)と同控訴審判決文(控訴審長崎控訴院第一刑事部昭和十一年九月二十八日判決)が現存することが二〇〇四年六月十五日に新聞で報じられているが、政府はこの判決文を入手し、調査したのか。
 慰安婦問題の真相究明のために重要な戦前の公文書であるので、同上告審の大審院判決(昭和十二年三月五日第四刑事部)も含めて内容を示されたい。

九 前記八の三件の判決は、刑法第二百二十六条違反を認定しているとされるが、当時の刑法第二百二十六条第一項、第二項の構成要件はどのようなものか。また、現在の所在国外移送目的略取及び誘拐罪の構成要件はどのようなものか。前者と質的に異なるのか。

  右質問する。