質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第六七号

集団的自衛権並びにその行使に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年四月十日

福島 みずほ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   集団的自衛権並びにその行使に関する質問主意書

一 日本国憲法第九条は、どのような行為を禁止しているのか、政府の見解を明らかにされたい。

二 日本国憲法の基本原則の一つである平和主義が意味するものは何か、政府の見解を明らかにされたい。

三 集団的自衛権と個別的自衛権のそれぞれの定義について、示されたい。

四 集団的自衛権と個別的自衛権とは、数量的な差異によって峻別されるものか否か、政府の見解を明らかにされたい。

五 二〇〇四年一月二十六日の衆議院予算委員会において安倍晋三委員は「「わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものである」、こういうふうにありますが、「範囲にとどまるべき」というのは、これは数量的な概念を示しているわけでありまして、絶対にだめだ、こう言っているわけではないわけであります。とすると、論理的には、この範囲の中に入る集団的自衛権の行使というものが考えられるかどうか。」と質問している。
 これに対して、秋山收内閣法制局長官は「憲法九条のもとで許される自衛のための必要最小限度の実力の行使につきまして、いわゆる三要件を申しております。我が国に対する武力攻撃が発生したこと、この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと、それから、実力行使の程度が必要限度にとどまるべきことというふうに申し上げているわけでございます。お尋ねの集団的自衛権と申しますのは、先ほど述べましたように、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するものでありまして、ただいま申し上げました自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したことを満たしていないものでございます。したがいまして、従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面がございますが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で申し上げているものでございまして、お尋ねのような意味で、数量的な概念として申し上げているものではございません。」と答弁している。
 すなわち、自衛のための実力行使の程度が必要限度にとどまらなくてはならないという要件は、個別的自衛権行使に際して要件を課したものであり、集団的自衛権に関してはそのような数量的概念によってはかられるのではなく、そもそも「我が国に対する武力攻撃が発生したこと」という第一要件を欠くがゆえに本質的に違憲であり許されない旨、明確に答弁しているわけである。
 政府は、このように集団的自衛権の行使は違憲であるとの論旨を維持するということでよろしいか。

六 国際連合発足後、集団的自衛権を援用して行われた武力行使には、どのようなものがあるか、政府の承知するところを明らかにされたい。

七 第一次安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会が検討した安全保障問題の四類型が、集団的自衛権の行使として援用された例は、諸外国においてこれまでにあるか、政府の承知するところを明らかにされたい。

八 小泉純一郎総理(当時)はイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(以下「イラク特措法」という。)の審議において集団的自衛権の行使を一貫して強く否定した。例えば、二〇〇三年六月十一日の国家基本政策委員会合同審査会において、土井たか子委員が「今まで論議の中で随分これは問題にしてきた集団的自衛権の行使、わけても、今回は交戦権の行使ということにもなっていくわけでありまして、この点に対して、集団的自衛権の行使に踏み切るというふうにもう総理自身はお考えになっていらっしゃるのかどうか」とただしたところ、小泉総理は「これは戦闘行為、武力行使に行くんじゃないんです。国連決議で、イラクの人道支援、復興支援のために行くんです。これがなぜ集団的自衛権に変わってくるんですか。戦闘行為、武力行使に行くんじゃないんですよ。」と否定した。また、集団的自衛権については二〇〇四年八月二日の衆議院本会議で「憲法第九条のもとにおいては集団的自衛権の行使は許されないとする政府の憲法解釈は、今まで一貫しております。これまで積み重ねていた議論を私は尊重したいと思っております。」と述べている。仮にイラク特措法制定時に、集団的自衛権行使が認められていたとすれば、イラク特措法は、米軍と一体化した武力行使を前提とした、全く異なる法律になっていたと考えられるが、いかがか。

九 政府は集団的自衛権の解釈変更に関して「政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えており、仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねない」(平成十七年十一月四日内閣参質一六三第一四号)としてきた。また「集団的自衛権の行使を憲法上認めたいという考え方があり、それを明確にしたいということであれば、憲法改正という手段を当然とらざるを得ないと思います。したがって、そういう手段をとらない限りできないということになる」(一九八三年二月二十二日衆議院予算委員会における角田禮次郎内閣法制局長官の答弁)としてきた。
 しかし、安倍総理は二〇一四年三月五日の参議院予算委員会において「内閣としてこの憲法について、行政府として、内閣として解釈をしていくということになるわけでありますが、この集団的自衛権あるいは集団安全保障等々についての、またPKOもそうなんですが、憲法との関係について安保法制懇において今議論をしているところでございまして、様々な事態を分類をいたしまして、そうした分類におきまして、我が国の安全、そして国民の生命を守る上において今までの解釈でいいのかどうかということについての議論を行っているところでございます。そうした議論の結果を待ち、その上において法制局を中心に協議をいたしまして、必要であれば、必要ということになれば解釈の変更を行っていくということになるわけであります。」と答弁している。
 右に示した政府の長年の立場と安倍総理の立場とは、相互に著しくかけ離れ、整合性が取れないと考えるが、いかがか。

十 政府は一貫して集団的自衛権の行使が憲法違反であるとしてきたが、これまで違憲であるとしてきたものがなぜ合憲になり得るのか、その理由を示されたい。

  右質問する。