質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第六一号

ガーナ人強制送還死訴訟に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年四月七日

浜田 和幸   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   ガーナ人強制送還死訴訟に関する質問主意書

 平成二十二年三月、強制送還中のガーナ人男性アブバカル・アウドゥ・スラジュさんが東京入国管理局職員(以下「入管職員」という。)の過剰制圧行為で急死したとして、遺族が国を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決が今年三月十九日に行われた。東京地方裁判所は「入国管理局職員の行き過ぎた制圧行為が原因」として、国に約五百万円の支払いを命じた。この判決に対して、国は今年三月三十一日に東京高等裁判所に控訴した。
 判決では、スラジュさんの死因について「猿ぐつわで口や鼻からの呼吸が制限され、前かがみの体勢を強制されたことで窒息死した(中略)自殺防止のために猿ぐつわなどを使用したこと自体は違法とはいえないが、呼吸の状態を確認できない前かがみの姿勢を強制した点は違法と評価せざるをえない」と認定している。
 また、入管職員の供述では、スラジュさんが送還時に抵抗したためうつ伏せの状態にして担ぎ上げたとしていたが、口頭弁論の中では実際のビデオが提出され、スラジュさんは抵抗どころか自ら立ち上がり護送車を降りている。
 右の点を踏まえて、以下質問する。

一 こうした事実認定と動かぬ証拠がありながら、なおも控訴する理由及び争点を示されたい。

二 原告の遺族は「入管職員の違法性が認められ、心のわだかまりが取れた。正式に謝罪してもらいたい」と訴えている。国の控訴により原告側も控訴せざるを得なくなったが、命を奪われた遺族の心情を察すれば、これ以上の心理的負担をかけないために控訴を取り下げるべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。

三 入管職員への尋問から、送還時における法定外戒具の使用は日常的に行われており、ビデオ撮影も東京入国管理局の裁量で停止できるなど、人権が保障されずに送還されている実態が判明した。こうした実態を改める意思があるのか、政府の見解を明らかにされたい。また、何らかの方策を検討しているのか、併せて示されたい。

四 入管職員の教育について、欧米では教育ビデオなどを用いて共通認識を高めている。スラジュさんの制圧に当たって窒息の危険性を把握しなかった点と、救護に当たって詐病と決めつけ対処が遅れた点について、国内では具体的にどのような制圧・救護方法の教育が行われているのか。また、事件の前後で教育内容は改善したのか。

五 国外退去忌避者への国費送還は事件後に一旦停止されていたにもかかわらず、昨年再開されたことが確認されている。「ほとぼりが冷めた」ともいえるタイミングで再開された理由は何か。職員の教育が徹底されたと公に確認できるまでは中止すべきと考えるが、いかがか。

六 今年三月三十一日、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)が、「収容していた外国人男性二人が死亡した」と発表した。イラン人男性が二十八日午後七時五十分ごろ、食事をのどに詰まらせ、病院に運んだが翌日に死亡した。三十日午前七時ごろには、カメルーン人男性が意識不明の状態で見つかり、病院で死亡した。この男性は二十七日に体調不良を訴え、医師の診断を受けていたという(三月三十一日付け毎日新聞)。それぞれ三十三歳と四十三歳で、働き盛りの男性が立て続けに二人も死亡するなどということは偶然の一致では起こりえず、収容者の生命保全や人権尊重を怠っているとしか考えられない。
 難民申請者が腕を骨折した際、病院側に診療を拒否された事例もあると聞く。国内外で問題視されている、こうした収容外国人への異常な扱いを改善すべく、ルール作りや職員の人権意識向上プログラムを行っているのか。行っている場合にはその内容を、行っていない場合には、今後そのような予定があるのか示されたい。

  右質問する。