質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第四九号

ストロンチウム九十等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年三月二十日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   ストロンチウム九十等に関する質問主意書

 本年二月六日、昨年九月の段階で、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島原発」という。)二号機の海側にある井戸水のストロンチウム九十を主とするベータ線を出す放射性物質の濃度が一リットル当たり五百万ベクレル(放出濃度限度の約十七万倍)であったとの報道があった。また、本年二月二十四日に、昨年八月に発生した汚染水三百トンの漏洩事故で、ストロンチウム九十等ベータ線を出す放射性物質の濃度が、当初発表の十倍の一リットル当たり八億ベクレルであった可能性もあるとの東京電力株式会社による訂正(以下「東京電力による訂正」という。)があった。これらの井戸水や周辺タンク群からの漏洩汚染水が海へと滲み出ていることは今や東京電力も認めているところである。
 ストロンチウム九十は一旦体に入るとほとんど排出されず(体内半減期十八年)、また、セシウムと異なり土壌吸着が弱く、はるかに危険な物質だとされている。
 ストロンチウム九十の汚染水を閉じ込め海に流出させないよう、府省間の縦割りを超えて国として取り組み、国民の食の不安を解消すべく行政の責任を果たすべきとの観点から、本年二月二十八日に被災地の市民団体とともに行った関係府省との意見交換の内容を踏まえ、以下質問する。

一 ストロンチウム九十が体内に入った場合の挙動や有害性について明らかにされたい。

二 ストロンチウム九十は歯や骨に蓄積するだけでなく、人間や生物体内のカルシウムに代替するとの指摘があるが、その点につき、政府の見解を明らかにされたい。

三 ストロンチウム九十の人体への有害性について、明確になっていない場合には、現状より慎重な規制方針を採るべきと考えるが、いかがか。

四 ストロンチウム九十の有害性に関する研究体制はどのようになっているのか。

五 高濃度のストロンチウム九十を含む汚染水が、海洋へ流出していることを政府は認めるのか。

六 福島原発炉心冷却汚染水の海洋への流出の実態は判明しているのか。どこからどのように海洋へ流出しているのか、海洋へ流出した汚染水はどのように拡散しているのか示されたい。また、海底の土砂の汚染状況はどのようになっているのか示されたい。特にストロンチウム九十とプルトニウムについてはどのように海洋へ拡散しているのか、季節による違いも踏まえて示されたい。

七 海洋に流出した汚染水中にはストロンチウム九十以外に、どのような放射性物質が含まれていると認識しているのか、全て挙げられたい。また、そのうち、今後有害性が問題になる可能性があると考えている物質がある場合には、その物質名を挙げられたい。

八 二〇一二年六月に放射性物質も環境基本法により規制されることになり一年半が経過した。環境基本法改正前の第十三条に明文化されていた「放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置」は現時点では具体的にどのように講じられているのか。また、放射性物質の規制の要となる環境基本法第十六条の放射性物質の「環境基準」がいまだ定められていないことは行政の不作為ではないか。

九 「世界で放射能の環境基準を制定している国はない」との見解が二月二十八日の意見交換の席で環境省から示されたが、世界最高の原子力規制をするという原子力規制委員会の姿勢から後退した考えではないか、政府の見解を示されたい。

十 原子力発電所再稼働の前に、放射性物質の環境規制(環境基準、同基準を達成する排出基準、ストロンチウム九十その他の食品の摂取基準など)に係る法整備を行うべきではないか。

十一 二〇一三年八月二十一日に、福島原発で高濃度の放射能汚染水がタンクから漏れた問題について、原子力規制委員会は国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル三(重大な異常事象)に相当すると発表した。ところが、東京電力による訂正も発生している。このような状況を踏まえても、まだレベル三としたままでよいのか。

十二 現在も福島原発事故による原子力緊急事態宣言が継続中であって、解除されていないことについて、国はウェブサイト等で国民に一目で分かるよう、周知を図るべきではないか。

  右質問する。