質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第三九号

ビットコインに関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年三月十日

大久保 勉   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   ビットコインに関する再質問主意書

 先般提出した「ビットコインに関する質問主意書」(第百八十六回国会質問第二八号)に対する答弁書(内閣参質一八六第二八号。以下「答弁書」という。)の内容に疑義があるため、改めて以下のとおり質問する。

一 私に対し日本銀行が行った説明及びその際の提出資料によると、ビットコインの発行残高は約千二百万BTC(BTCはビットコインの単位を示す。以下同じ。)であり、本年二月十七日の交換レート(一BTC=六百二十一米ドル)で計算すれば七十七億米ドル相当となるとのことである。この発行残高を見れば、ビットコインは決済手段及び投資手段として認識されつつあると言える。
 この状況を踏まえ、ビットコインが価値の尺度、価値の保存又は交換の手段としての機能を利用者に提供しているとの意見について、政府の見解を示されたい。

二 答弁書の「一及び二について」では、「関係省庁において連携を図りつつ、情報収集に取り組んでいるところである」とされている。しかし、七十七億米ドル相当に上るビットコイン発行残高や、株式会社MTGOXによる民事再生手続の申請など、最近の状況を考慮すると、早急に情報収集を行い、必要な関係法令の整備を速やかに行うことが望ましいと考える。
 政府として、ビットコインに関連する法令を整備する時期の目途はあるか。特に、今期国会の会期中に対応を行うことは可能であるのか、明確に示されたい。

三 答弁書の「三について」では、「強制通用の効力」又は「強制通用力」との用語が用いられている。

1 「強制通用の効力」又は「強制通用力」とは、いかなる意味を持つのか。法令に基づく用語であれば、その根拠法令及び具体的な定義を示されたい。
2 「強制通用の効力」又は「強制通用力」を担保する主体は、どのようなものであるのか。特に、日本で流通する外国通貨の場合について、具体的に示されたい。
3 日本国内においては、米ドル、人民元、インドルピーなどの外国通貨の強制通用力は、法令で必ずしも担保されていないと考えることから、ビットコインも外国通貨と同様の性質を持つとの意見もあるが、政府の見解はいかがか。もし、この意見と異なる見解であれば、その理由も併せて示されたい。

四 答弁書の「四について」のうち「お尋ねの2について」の部分では、ビットコインの売買仲介、口座開設及び「送金」業務について銀行が営むことができる業務に該当しない旨が示されている。
 銀行が、自己勘定において、ビットコインを購入することや、ビットコインを投資対象に組み込んだ投資信託、ビットコインを原資産とするデリバティブ商品等に投資することは可能であると考えるが、これらの行為についての法令上の是非をその根拠及び条件とともに示されたい。

五 プットオプション(例えば、一BTCを五百米ドルと交換する権利)等のデリバティブ取引を、預貯金取扱金融機関がそれぞれの根拠法に掲げる業務(例えば銀行であれば、銀行法第十条及び第十一条に掲げる業務)のいずれかとして、また、金融商品取引業者が金融商品取引法第三十五条に掲げる業務として、それぞれ行うことは可能であるのか。可能である場合は、その業務の法的分類(例えば、固有業務、付随業務等のいずれに当たるのか)もそれぞれ示されたい。
 また、ビットコインの価格に連動した預貯金又は有価証券を、預貯金取扱金融機関又は金融商品取引業者等が、設定、発行、仲介又は投資を行うことは可能であるのか。その法的根拠も併せて示されたい。

六 ビットコインは通貨ではないとされることから、ビットコインを不特定多数の顧客より元本を保証して募集したり、継続的に貸出したりしたとしても、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」等の法令には違反しないと考えるが、政府の見解を示されたい。仮に、何らかの法令に違反する場合には、その法令上の根拠とともに具体的な解釈を示されたい。
 また、例えば百BTCを一年後に三十BTCの利息を付加した百三十BTCで返済する貸借契約のように、ビットコインを利用して利息制限法又は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」等に定められた利率を超過した契約を行うことは可能であるのか、政府の見解を示されたい。

七 株式会社MTGOXは、民事再生手続の申請前には世界最大のビットコイン交換所とされていた。その一方で、ビットコインがマネーロンダリングに利用される懸念があるとの米国議会調査局の報告があり、ビットコイン推進団体の幹部が連邦裁判所に訴追される事案も発生していた。
 こうした状況下で、株式会社MTGOX等、日本国内にあるビットコイン交換所(取引所も含む。以下「国内交換所」という。)の円建て又は外貨建て口座を持つ預貯金取扱金融機関には、マネーロンダリングに関する相当の注意義務が発生していたとの意見について、政府の見解を示されたい。仮に注意義務があったとすれば、どの程度であったかについても、併せて示されたい。
 また、例えば、ビットコインを購入するために預貯金取扱金融機関における当該交換所の口座に振り込まれる多額の現金に対して、当該口座を持つ預貯金取扱金融機関には、振込人の本人確認、ビットコインの購入の有無及び本人確認書類の保管等を行う必要がこれまであったのか、あるいは、今後そのようなことを行う義務はあるのかについて、政府の見解を示されたい。

八 ビットコインの交換所を国内に設立して運営する場合、その業務に関して、何らかの登録等や、関係省庁への報告義務が課されることとなるのか、政府の見解を示されたい。また、ビットコインの交換所を所管する法令及び省庁についても示されたい。

九 ビットコインの交換所を国内に設立して運営する場合、その業務に関わるマネーロンダリング対策等のため、何らかの登録等が求められたり、ビットコインの売買金額及び「送金」内容等について、関係省庁への報告義務が課されることとなるのか、政府の見解を示されたい。

十 答弁書の「三について」では、ビットコインが通貨及び外国通貨に該当しない旨が示されているが、政府は、ビットコインを金や骨董品のような「モノ」として認識しているのか、あるいは電磁的記録として認識しているのか、見解を示されたい。
 また、ビットコインが電磁的記録とされるのであれば、電子計算機に不法に侵入してビットコインの記録を変更する行為は電子計算機使用詐欺罪に該当するとの意見があるが、政府の見解を示されたい。

十一 日本の企業が第三国を経由して北朝鮮に時計、香水、キャビア又は牛肉等の贅沢品を輸出した代金相当のビットコインを受領し、国内交換所で円に交換した場合、法令上の問題はないか、政府の見解を示されたい。仮に問題が生じるとすれば、取締りを行う根拠法令及び所管省庁についても併せて示されたい。
 また、国内居住者が国内に所有する一億円の価値があるビットコインを北朝鮮に「送金」した場合、法令上の問題はないか、政府の見解を示されたい。何らかの届出、許認可が必要であれば、その理由及び根拠法令についても併せて示されたい。

十二 答弁書の「四について」では、一般論として所得税及び法人税の課税対象となる旨が示されている。

1 ビットコインの交換で経済的利益を得た者が確定申告を行う際、一般論として所得の区分は何に該当するのか(特に、譲渡所得に該当するか)、政府の見解を示されたい。また、法人税の申告の場合における取扱いについても、併せて示されたい。
2 非居住者及び外国法人であっても、ビットコインの国内交換所で経済的利益が発生した場合、一般論として課税対象となり得るという理解でよいか、政府の見解を示されたい。

十三 ビットコインの交換で経済的利益を得た場合、財産及び債務の明細書に記載すべき対象となるか。また、国外財産調書制度の対象となるか、政府の見解を示されたい。これらの対象となる場合、財産及び債務の明細書については該当する財産の種類、国外財産調書については該当する国外財産の区分及び種類についても、併せて示されたい。

十四 答弁書の「四について」では、一般論として消費税の課税対象となる旨が示されている。仮に、ビットコインの国内交換所において一BTCを五万円で交換した場合、本年三月十日現在であれば、二千五百円の消費税が課税されるという理解でよいか、政府の見解を示されたい。その場合、交換手数料又は「送金」手数料についても、消費税が課税されるという理解でよいかも示されたい。また、消費税が課税される場合、納税義務者は誰となるのか、併せて示されたい。

  右質問する。