質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第三六号

高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定及び処分研究に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年三月五日

徳永 エリ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定及び処分研究に関する質問主意書

 原子力発電所から生み出される高レベル放射性廃棄物を最終的にどのように処理するかについて政府は、使用済み核燃料を再処理する過程で発生する廃液をガラス固化体に封じ込め、地下深くに埋設する地層処分を国策としてきた。しかし、現在まで処分場の立地場所は定まっていない。
 政府は昨年十二月、高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定に係る従来の方針を転換し、国が主導して候補地を選ぶ方針を決めた。一方で、独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)の幌延深地層研究センターが立地する北海道では、地層処分技術に関する研究開発が行われている幌延町や周辺地域がなし崩し的に処分地にされるのではないかとの疑念が消えていない。
 このような中で、政府方針及び地元・周辺自治体との協定や約束、確認事項などについて、以下質問する。

一 昨年十二月十七日の最終処分関係閣僚会議では、最終処分に向けた手順として、「有望地の選定」、「重点的な理解活動」、「複数地域に対し、国から申入れ」という過程を経て、従来の「法定プロセス」に移る旨の「高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた新たなプロセス」(以下「新プロセス」という。)が合意された。

1 これまで「調査受入自治体の公募」後、「文献調査」、「概要調査」、「精密調査」のプロセスにより選定・調査を行うこととされていたが、今回の案によると、文献調査の前に最終処分の有望地を選定することとなっている。こうした手順の変更を提示するに至った理由を示されたい。
2 今後、国が提示する有望地については、科学的な裏付けやデータ等、選定の根拠を示すべきと考えるが、予め有望地選定の際に必要とされる科学的な根拠・基準について明示されたい。
3 前記一の2の科学的根拠に関し、有望地の住民や自治体に対して「説明会の開催等」を実施する旨の記述があるが、「等」には何が含まれるのか、具体的に示されたい。
4 国が申し入れるとされる複数地域の有望地は、何か所程度を想定しているのか、示されたい。

二 日本学術会議(以下「学術会議」という。)は一昨年九月、「高レベル放射性廃棄物の処分について」と題する回答書を原子力委員会に提出した。学術会議は従来の地層処分政策の抜本的な見直しを求め、高レベル放射性廃棄物の暫定保管と総量管理を柱に、政策の枠組みを再構築するよう提言している。

1 学術会議は、地層処分について、「地層の変動やガラス固化体の劣化など、千年・万年単位にわたる不確定なリスクが存在するため、踏み切るには課題が多い」としている。そこで、リスク回避のために「比較的長期にわたる暫定保管」を提案しているが、この提案を受け入れる考えはあるか、政府の見解を明らかにされたい。
2 経済産業省は、地層処分の安全性に対する信頼性が不十分と認める一方で、依然として地層処分を前提に取組を進めるとの方針と承知している。信頼性が十分ではないとの認識がありながら新プロセスを見切り発車させることは、大きな問題があると考える。また、学術会議による「討論の場の設置による多段階合意形成の手続き」を求める提案を蔑ろにするものともなるが、改めて学術会議が提言する「多段階合意形成の手続き」を取り入れる考えはないのか、政府の見解を明らかにされたい。
3 新プロセスでは、処分事業の「可逆性・回収可能性を担保」するとの記述があるが、これは具体的にどのような状態を想定しているのか、示されたい。また、新プロセスでは、「代替処分オプションの調査・研究を並行的に進める」こととされているが、学術会議の提言とは相容れないものと考える。学術会議の回答書を受け入れない理由について明示されたい。

三 平成十年十月に核燃料サイクル開発機構(現・原子力機構)が発表した「深地層研究所(仮称)計画」では、幌延町における試験研究期間は全体で「二十年程度」としているが計画に変更はないか。また、その終期は、事前調査から二十年を経過する平成三十二年頃と解してよいか。加えて、平成十二年十一月十六日に北海道と幌延町、核燃料サイクル開発機構が締結した「幌延町における深地層の研究に関する協定書」(以下「三者協定」という。)では、研究終了後の措置として、「地上の研究施設を閉鎖し、地下施設を埋め戻す」とした。この三者協定に基づいた研究終了後の措置について変更はないか、示されたい。

四 幌延町における試験研究終了後の跡地利用については、これまでの経緯に鑑み、政府が責任を持つべきと考えるが、跡地の再開発、利用に関する政府の方針を示されたい。

五 昨年二月、使用済み核燃料の直接処分の研究費を初めて国が予算に計上し、五年程度研究を実施する計画があると報道されたが、本研究に係る予算の執行状況及び本事業の進行状況を明らかにされたい。また、平成二十六年度予算以降の対応について、国は、使用済み核燃料の直接処分を原子力機構の研究業務として位置付けるのか、示されたい。

六 原子力機構の「第三期中期計画」は本年九月を目途に策定されると承知している。そこで、現時点における策定作業の状況と策定に向けた工程表を明らかにされたい。

  右質問する。