質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八八号

放射性物質による汚染がれきの焼却処理等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十二月五日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   放射性物質による汚染がれきの焼却処理等に関する質問主意書

 東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)により、放射性物質に汚染されたがれきが福島県を始め、大津波被災県や関東の都県で大量に発生した。
 この放射性物質による汚染がれきは、福島、宮城、岩手、茨城などの各県の一般廃棄物の焼却施設において焼却処理されているところであるが、個別の焼却データを見ると、放射性セシウムの回収率について、当初言われていた九十九パーセントからはるかに低いものが散見されている。このことは、第百八十回国会において提出した質問主意書で憂慮してきたとおり、汚染がれきの焼却により、大気を通して放射能汚染が広がっている可能性が懸念されるものである。
 原発事故から三年が経過しようとする現在、放射性物質による汚染がれきの焼却処理方式を見直し、新たに埋設などの他の方式を検討すべきではないかと考える。
 これ以上国土を汚染させることなく、人々を被ばくさせることなく、将来世代に対し安全で安心な国土を引き継ぐため、具体的な焼却施設データ等について、以下質問する。

一 福島県鮫川村における汚染物の焼却処理の放射能回収率について
 平成二十五年八月六日付けの環境省指定廃棄物対策チームの報告書「農林業系副産物等処理実証事業の確認運転結果(全体報告)」(以下「報告書」という。)において、確認運転の結果二-一運転データの表一によると、福島県鮫川村の焼却炉において七月十六日から十八日にかけて行われた負荷運転では放射能に汚染された牧草や稲わらを焼却した結果、放射性セシウムの回収率が七十五パーセントになっている(焼却対象物中放射性セシウム総量六十一万六千二百ベクレル、もえがら中放射性セシウム総量三千九百ベクレル、ばいじん中放射性セシウム総量四十五万九千二百ベクレル)。
 これは環境省が九十九パーセント以上の回収率と周辺住民へ説明し、焼却を推進してきたこととあまりに異なる結果である。

1 この結果をどう説明するのか政府の見解を示されたい。
2 報告書によると、二十五パーセントが大気中へ放出されたことになり、このような結果が出たことから、焼却をいったん中止し再検討すべきと考えるが、いかがか。
3 岩手県宮古市の焼却炉においても、市民グループの計算では回収率が八十四パーセント程度であると聞く。他の焼却炉における前述の表一のようなデータを集約している場合には、示されたい。
4 汚染がれきを焼却している各焼却炉において、前述の表一のデータを集約すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 バグフィルターによる排ガス中放射性セシウムの除去について

1 汚染された牧草等と一般ごみとの混合物を燃焼処理した場合に発生する燃焼ガスの煙の微粒子の直径の分布割合(粒径分布)を示されたい。
2 環境省の広域処理情報サイトの「よくあるご質問」のQ十四で、バグフィルターで〇・一ミクロンまでの微粒子を除去可能と記載されているが、この根拠となるデータを示されたい。
3 全国の一般のごみ焼却場で使用しているバグフィルターで捕捉される粒径はどの程度か、メーカーの仕様書に記載されている最小径について、最大値、最小値及び平均値を示されたい。
4 汚染物中の放射性セシウムは燃焼させると煙の微粒子にどの程度付着(吸着)するものか、その割合について科学的根拠を示されたい。私は全ての放射性セシウムが吸着するものではないと考えるが、もし煙の微粒子に吸着しない放射性セシウムがあるとすれば、いかなる化合物となって放出されるか、示されたい。

三 焼却による排ガス中の放射性セシウムの測定について
 バグフィルターを抜けた焼却による排ガスを排気筒から等速誘引し(円筒)ろ紙等で微粒子を除き、ついで水に排ガスを通すことで水にセシウムを抽出し、ろ紙と水(ドレン)の放射性セシウムを測定する方式が行われている。

1 現在測定に用いられている方式は、いつ、どこで決められたのか。また、その際に課題に挙げられた事項を示されたい。
2 排ガス中の放射性セシウムを含む微粒子が集められた(円筒)ろ紙(〇・三ミクロンまで)によって、どのように放射性セシウムを測定するのか示されたい。その検出限界値はどのような条件で、どのように決定されるのか示されたい。
3 線香の煙を水に通した場合、その煙粒子が全て水に移動するわけではないことは目視によりわかるが、ろ紙を通過した排ガスを水に通過させた場合にどの程度放射性セシウムが水に抽出されるか、水への抽出割合に関する科学的根拠資料を示されたい。
4 現在の排ガス中の放射性セシウム濃度測定方式は十分信頼できるものか、政府の見解を示されたい。
5 今年二月五日から四日間にわたり試験焼却が行われた岩手県宮古市の焼却炉の場合、現在の排ガス検出限度(ろ紙、ドレン部についてセシウム一三四、セシウム一三七各々について一立方メートル当たり二ベクレル)では、バグフィルター前の排ガスですら送風量の関係で検出限界値以下になる。ましてフィルターを通すため更に濃度が低下する。これでは最初から不検出がわかっており意味がないのではないか。全国各地の焼却による排ガス中の放射性セシウムが不検出になっている原因ではないか。地域の人々をあざむくものでないのか、政府の見解を示されたい。
6 このような測定方式は薄めて焼却する発想であり、周辺環境や人々の健康を守るためのものではない。濃度規制に加え、厳しい総量規制を取り入れるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 焼却場の排ガス中における放射性セシウム一三四、セシウム一三七の基準がそれぞれ原子力施設の基準二〇ベクレル毎立方メートル、三〇ベクレル毎立方メートルを当てはめるよう指導されているようだが、原子力施設ではない一般のごみ焼却場の排ガスや周辺環境にこの基準値を用いることは、環境汚染防止の観点から納得できない。基準値を原子力施設の値の十、百、千分の一以下にする等、各自治体が自らの裁量で設定することは何ら問題ないと考えるが、いかがか、政府の見解を示されたい。

五 福島県や周辺県で汚染調査重点地域に指定されているところでは、様々な場面で被ばくが予想される。これに加えて更に焼却による汚染まで加えることはあまりに配慮に欠けることになるのではないか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。