質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七八号

特定秘密の保護に関する法律案に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十二月二日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   特定秘密の保護に関する法律案に関する再質問主意書

 本年十一月十二日に私が提出した特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」という。)に関する質問主意書(第百八十五回国会質問第五八号。以下「質問主意書」という。)に対し、同十一月二十二日付けで答弁書(内閣参質一八五第五八号。以下「答弁書」という。)が安倍晋三内閣総理大臣より送付された。しかし、閣議決定を経た答弁書でありながら、その一部において、既に存在しない行政機関である、内閣に置かれていた社会保障制度改革国民会議の長が、本法案に基づく特定秘密の指定や特定秘密の取扱者に対する適性評価を実施するとする、目を疑わせるような誤謬があった。
 国民の人権である知る権利を大幅に制限することとなる重大な法案についての質問に対し、このような誤謬が閣議決定を経た文書に存在することは、看過することの許されない事態と思料する。
 そこで、以下質問する。

一 「本法案でいう特定秘密の指定権者であり、特定秘密の取扱者に対する適性評価の実施者である行政機関の長の具体的な役職名を全て明らかにされたい」との質問主意書の質問一に対して答弁された社会保障制度改革国民会議が、既に平成二十五年八月二十一日に廃止されていることが確認され、内閣官房から答弁書についての誤りが通知された。そもそも同会議は社会保障制度改革推進法第九条に基づき内閣に置かれたもので、その委員も同法第十条の規定により内閣総理大臣が任命したものである。いわば、内閣総理大臣に直属するに等しい行政機関の存否について、閣議決定を経て内閣総理大臣名において送付される答弁書で誤謬が生じることは、単に事務方の誤りというより、内閣総理大臣自身の責任が問われるのではないか。政府の見解を示されたい。

二 内閣法制局は、内閣法制局設置法第三条(所掌事務)の第一号において、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」とあり、さらに同条第三号において、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」とある。この規定に照らせば、今回の答弁書について、既に存在しない社会保障制度改革国民会議の長が、特定秘密の指定や特定秘密の取扱者に対する適性評価の実施について権限を有するという、法律上あり得ない誤謬に対して適切な意見を述べるべきであったと考える。内閣法制局が答弁の誤りを防ぎ得なかったことから、その所掌事務を果たさなかった重大な責任が生じており、内閣法制局による審査がまともに機能しなかったことは、明らかであったと思料するが、いかがか。答弁書における誤謬についての内閣法制局、その事務を統括し、その職員を統督する内閣法制局長官の責任、また、内閣法制局長官を任命した内閣の任命責任について、政府の見解を示されたい。

三 答弁書の一に示された行政機関のうち、「内閣法制局、原子力防災会議、安全保障会議、中心市街地活性化本部、地球温暖化対策推進本部、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、都市再生本部、知的財産戦略本部、構造改革特別区域推進本部、地域再生本部、郵政民営化推進本部、道州制特別区域推進本部、総合海洋政策本部、宇宙開発戦略本部、総合特別区域推進本部、人事院、宮内庁、公正取引委員会、国家公安委員会、金融庁、消費者庁、総務省、公害等調整委員会、消防庁、法務省、公安審査委員会、公安調査庁、財務省、国税庁、文部科学省、文化庁、厚生労働省、中央労働委員会、農林水産省、林野庁、水産庁、経済産業省、資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁、国土交通省、運輸安全委員会、観光庁、気象庁、海上保安庁、環境省、原子力規制委員会、警察庁、会計検査院、本法案第二条第四号及び第五号の政令で定める機関」は本法案の別表の第一号(防衛に関する事項)、第二号(外交に関する事項)、第三号(特定有害活動の防止に関する事項)及び第四号(テロリズムの防止に関する事項)に関する情報であって、特定秘密として指定すべきどのような情報を有するのか。個別的な情報ではなく、情報の性質及び分類上の特徴について、政府の見解を具体的に示されたい。

四 答弁書の一で示された行政機関のうち、「原子力規制委員会、公安審査委員会、中央労働委員会、運輸安全委員会、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、知的財産戦略本部」は行政機関の長や構成員(委員、本部員)の全員又はその一部が非常勤の民間からの有識者で構成されるものであるが、これらの機関についても、非常勤である民間から登用された行政機関の長が、特定秘密の指定や適性評価を実施するのか。また、非常勤の構成員も特定秘密の取扱いを行うのか。その場合は本法案に基づく適性評価は、これら非常勤の構成員に対して行われるのか、あるいは免除されるのか。免除される場合は、その根拠及びそれによって特定秘密が漏えいしないことの担保をどのように考えているのかを示されたい。

五 「具体的に想定されている特定有害活動の事例を示されたい」との質問主意書の質問四に対して、答弁書は「外国の工作機関が日本人の拉致を行う活動が挙げられる」としている。今年、元CIA職員だったエドワード・スノーデン氏が入手した文書によって、米国国家安全保障局(NSA)により世界中のインターネット通信や電話による通話が傍受されていること、その中には北大西洋条約機構加盟国等の首脳の携帯電話に対する直接的な盗聴もあったことが明らかとなり、ドイツのメルケル首相は米国のオバマ大統領に抗議を行った。このような第三国による我が国閣僚や国会議員などに対する通信傍受・盗聴も、特定有害活動の事例に当たるのか、政府の見解を示されたい。

六 「本法案が想定する特定秘密に当たる情報が漏えいした重大な事案が発生したことはあるか」との質問主意書の質問九に対し、答弁書は「平成十七年に発生した中国潜水艦の動向に関する情報の漏えい事件」を挙げた。これは、平成十七年五月三十一日付け読売新聞朝刊に掲載の記事「中国の潜水艦、火災か 南シナ海を海南島に向け曳航 日米が監視」に関するものか。記事の内容によれば、中国の通常型動力潜水艦「明」級が南シナ海で潜水中に何らかの事故を起こして航行不能となり、海南島に向けて曳航されているという事実について「日米防衛筋」から確認して報道したものであるが、こうした報道の何が「特定秘密に当たる情報が漏えいした重大な事案」なのか、理由を示されたい。また、この件に関して、報道機関への働きかけを含めて政府がとった措置、処分についても示されたい。

七 本法案で規定される行政機関の長が実施する適性評価について、それぞれの実施機関ごとに別々の要領で実施されるのか、あるいは統一した要領において実施されるのか。また、どのような行政機関、組織が、適性評価の具体的作業(調査等)の実施や情報の提供を行うことを想定しているのか。適性評価で対象者及び家族、同居人等を調査する際、行政の中の調査機関の他に、民間の団体や調査機関等が調査業務に携わる場合があるか。民間の団体や調査機関等が特定秘密の取扱いを業務とする場合、その適合性は何によって担保し、また、その業務に従事する役職員に対する適性評価は、どのような機関、組織が具体的作業(調査等)を実施するのか。新規に適性評価を行う場合、また、継続的な評価や五年後に再度、適性評価を実施する場合のそれぞれについて、具体的に示されたい。

  右質問する。