質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七六号

拉致問題等と特定秘密保護法案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十一月二十九日

有田 芳生   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   拉致問題等と特定秘密保護法案に関する質問主意書

 拉致問題等と特定秘密の保護に関する法律案(以下「この法案」とする)に関し、以下質問します。

一 この法案は第一条において、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要あるものを特定秘密の対象とするとしています。一方、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律(以下「北朝鮮人権法」とする)には第二条第一項において「国は、北朝鮮当局による国家的犯罪行為である日本国民の拉致の問題を解決するため、最大限の努力をするものとする」とあります。拉致に関する情報は安全保障問題として特定秘密の対象になりますか。その場合、安全保障問題としての拉致問題はこの法案の対象となるが、人権問題としての拉致問題はこの法案の対象外であると理解してよろしいですか。

二 この法案第一条において、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要あるものを特定秘密の対象とするとしています。一方、政府は北朝鮮人権法第二条第三項に掲げる「その他北朝鮮当局による人権侵害問題」とは、政府未認定の拉致被害者並びに過去に朝鮮半島出身者である夫等に随伴して北朝鮮に渡航した日本人配偶者の安否確認及び故郷訪問についての問題が含まれるとしています。「その他北朝鮮当局による人権侵害問題」は、この法案による特定秘密に指定されるのですか。それとも、人権問題としての「その他北朝鮮当局による人権侵害問題」はこの法案の対象外になるのですか、政府の見解をお示しください。

三 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律第七条に基づく国の「人権教育・啓発に関する基本計画」に、北朝鮮当局による拉致問題等が平成二十三年四月一日に盛り込まれました。同法第四条には国の責務が、また、同法第五条には地方公共団体の責務が明記されています。これらの機関が自己の責務を全うするうえでこの法案が障害とはならないですか、政府の見解をお示しください。

四 この法案で特定秘密と指定された情報については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく行政文書の開示請求及び行政不服審査法に基づく審査請求(異議申立)の対象にはならないのですか、政府の見解をお示しください。

五 政府は、平成二十五年十月一日現在で北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者の数は八百六十三人、この内三百八十三人について都道府県警察のホームページに、その氏名等の情報を公開していることを明らかにしています。この取組は、拉致問題を特定秘密とするこの法案に抵触するものですか、政府の見解をお示しください。

六 拉致問題対策本部の一組織である「拉致問題に関する有識者との懇談会」には複数名の民間人がメンバーに入っています。これら民間人が懇談会において討議される拉致問題について外部に口外した場合には、この法案によって処罰されるのでしょうか、政府の見解をお示しください。

七 政府は、これまでに適宜「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下「家族会」とする)のメンバーと懇談し、状況説明や情報交換等に努めています。こうした家族会をはじめ北朝鮮による拉致問題等の解決を目指して活動する国内外の団体及び個人が、政府から提供を受けた特定秘密に指定された拉致問題に関する情報を口外した場合、この法案によって処罰されるのでしょうか。処罰の対象となる場合には、関係条文を示したうえで政府の見解を明らかにしてください。

  右質問する。