質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七四号

生活保護引下げに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十一月二十八日

福島 みずほ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   生活保護引下げに関する質問主意書

 本年八月から段階的な生活保護基準引下げ(以下「引下げ」という。)が始まった。再来年までの三年間で、総額六百七十億円の段階的な引下げが予定されているが、当初より生活保護受給世帯のほとんどの世帯(九十六パーセント)が影響を受けると認識されており、とりわけ子どもの貧困が問題視される中、子育て世帯の下げ幅が最大十パーセントであることは、引下げが子どもの貧困を助長していると厳しく指摘したい。
 そもそも、引下げの論拠そのものに問題があった。厚生労働省に設置された「社会保障審議会生活保護基準部会」の検証結果が反映されたのは九十億円であり、削減額の九割方はデフレ論を根拠とするものであった。また、その計算に用いた「生活扶助相当CPI」に関しては、二月十八日に私が提出した「生活扶助基準の見直しに関する質問主意書」(第百八十三回国会質問第三〇号)への答弁書(内閣参質一八三第三〇号)を基に研究者が分析した結果、生活保護受給世帯の家計支出の実態の検証もないまま、電化製品の価格変動の影響を過大に算定していることから、比較対象年の選定の恣意性が指摘されたところである。
 さらに、論拠の説得力を欠いた引下げを始めたところ、その日々の暮らしへの影響の大きさから、引下げ中止を求め、十月十一日現在、一万百九十一人の当事者が審査請求を行っている。
 この間、厚生労働省に対して、①生活扶助費削減によって、生活保護が廃止になった世帯数・世帯類型別件数・都道府県ごとの件数、②生活扶助費削減によって、実際に基準が下がった世帯数・世帯類型別件数・都道府県ごとの件数、③その他、生活扶助費削減に関するあらゆる統計を資料要求したところ、①及び②については数字を把握しておらず、③については引下げに伴い作成した統計資料はないとの返答だった。
 しかし、引下げによって生活保護が廃止された世帯があれば、それは生活保護受給世帯の生存権保障に関する重大な変更であり、政策上の重要なテーマであると考える。そこで以下のとおり、質問する。

一 引下げに関する統計について

1 九十六パーセントの生活保護受給世帯が影響を受ける引下げに関する統計を、誰が、いつ作成しなくてよいと判断したのか。
2 前記一の1の統計について、今後作成する予定はあるのか。
3 引下げに伴う、システム改修費に四十八億円を要したが、莫大な金額を投じたシステムの情報で前記一の1の統計を算出することができないのか。
4 十月二十五日の厚生労働省社会・援護局保護課からの回答で「お尋ねの予算、政策評価による検証は行っていない」と記述されているが、なぜ行っていないのか。
 国民生活に大きな影響が及ぶことから、検証を行うべきと考えるが、いかがか。行わない場合には、その理由を示されたい。

二 生活保護受給世帯による審査請求に関して

1 一万百九十一人の当事者から審査請求が行われたが、これらの声は、引下げが不当だという主張である。これらの主張をいかに受け止め、どのような対応をするのか、政府の見解を明らかにされたい。
2 前記二の1に関して、引下げが当事者のためになっていないにもかかわらず、四十八億円のシステム改修費を要して実施されたことは妥当だと考えるか、政府の見解を明らかにされたい。

三 他制度への波及について

1 今回の引下げが、連動する他制度に波及した影響について、影響を受けた各府省の個別制度の名称と波及人数を調査しているか。
2 就学援助制度に関しては、当初から関係者より懸念が表明されていた。本年六月二十一日の参議院厚生労働委員会の質疑で、政府参考人の関靖直氏より、「生活保護法に規定をいたします要保護者に対する就学援助につきましては、今般の生活扶助基準の見直しに伴いまして、これまで国庫補助の対象となっていた者の一部が対象とならなくなる可能性がございます。厚生労働省の調査によりますと、対象とならなくなる者は仮にいるとしても極めて少数と見込まれますが、平成二十五年度当初に要保護者として就学支援を受けていた者につきましては、引き続き要保護者として国庫補助の対象としてまいります」と答弁し、総務省とも相談し、対象を継続するとしている。
 ところで、旭川市の教育委員会の試算では五百人が対象外になるとされているが、この五百人は対象外にならないということでよいか。

  右質問する。