質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六五号

国会と特定秘密保護法案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十一月十八日

荒井 広幸   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   国会と特定秘密保護法案に関する質問主意書

 本年十月二十五日に国会に特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」という。)が提出された。特定秘密保護のための法制度は、我が国の社会、国民の安全を確保するため必要なものであり、先進各国においても整備されていることから、法制化自体には賛意を表するが、時期的に拙速、内容が未消化のままであってはならない。このため、今国会成立にはこだわらず、丁寧な議論を経て修正を加え、次期通常国会の早期に成立させるべきと考える。
 他方、国会側の特定秘密情報の取扱いについては、衆参両院で検討し、「提供を求める場合の手続」、「提供される場」、「提供後の取扱い」といった基本的なルールを法改正も含め、定めるべきである。このため本法案中の国会に関する事項に、「国会に提供する場合の手続等は、国会側で今後検討し、必要な措置を講ずる」旨を盛り込むことも考えられる。
 さらに、国会側のルール作りに際しては、特定秘密は秘匿しつつ国益を判断し行政を監視するという基本理念のもと、国会法改正により、提供を受ける衆参合同委員会の新設、提供を受ける新たな会議形態の設定、漏らした場合の議員の懲罰等について、規定していくことが考えられる。右の点を踏まえ、国会との関係における問題点につき、以下質問する。

一 特定秘密の国会への提供について

1 特定秘密の提供の判断は、行政機関の長にほぼ全面的に委ねられることとなる。この結果、政府側が提供の求めに応じず、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす場合にのみ認められる「内閣声明」(国会法第百四条第三項、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(以下「議証法」という。)第五条第三項。これまで一例のみ)が濫発されるおそれがあるのではないか。
2 秘密を知る者の範囲を制限すること、業務以外に利用されないようにすること等、特定秘密の保護のための措置が、政令で定められることとなるが、国会側が講じる措置を政令で定めることは適当ではないのではないか。

二 国会側への影響について

1 国会から特定秘密の提供を求める場合には、国会法第百四条又は議証法第一条による正規の手続を常に取らなければならないことから、柔軟、機動的な審議の支障となるのではないか。
2 理事会や理事懇談会に対して特定秘密の提供をできないこととなるが、こうした場のほうが秘密保護には適していると考えるが、いかがか。
3 委員会、本会議の「秘密会」でなければ特定秘密を提供しない点について、行政側が国会の審議形態に条件を付するのは、国権の最高機関である国会の権威をないがしろにし、三権分立の点からも問題があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
4 秘密会に関しては、「秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない」(憲法第五十七条第二項)、「秘密会議の記録中、特に秘密を要するものとその院において議決した部分は、これを公表しないことができる」(国会法第六十三条)と、「記録を公開しない秘密会」について規定があるが、本法案は単に秘密会に係る規定を引用しているため、会議録が公開されることとなってしまう。政府側は、政令で定める「特定秘密の提供のために講ずべき措置」として、「記録を公開しない秘密会」とするように注文を付けると考えられるが、法定されていない要件を政令で付け加えて、議院や委員会の運営に内閣が容喙するのは許されないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
5 国会議員には、免責特権(憲法第五十一条)が認められているため、本会議や委員会で特定秘密を漏らしても罰せられないこととなる。この点においても、政府側が提供を拒む口実になるのではないか。免責特権は自由闊達な国会審議を保障するために認められており、これを理由に提供を拒否することは憲法の趣旨に反することとなると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
6(1) 所属政党の会合において、特定秘密とされる事項について、説明し意思決定を形成していく手続も行うことができず、政府の政策が適切であるか否かを政策担当秘書等が調査したり有識者から意見を聴くこともできなくなることから、政党政治の機能不全、行政監視の弱体化を招くのではないか。
(2) 過失犯、共謀、教唆及び煽動も罰するとしており、結果として、議員側の一層の萎縮を招き、政府側の優位性をさらに強化させることにつながるのではないか。

三 本法案が成立し施行された場合には、施行後三年を目途として、法律の施行状況を勘案し、特定秘密の指定、特定秘密の提供その他特定秘密の保護制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるべきと考えるが、この点につき政府の見解如何。

  右質問する。