質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五八号

特定秘密の保護に関する法律案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十一月十二日

山 本 太 郎   


       参議院議長 山 崎 正 昭 殿



   特定秘密の保護に関する法律案に関する質問主意書

 政府が今国会に提出した特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」という。)は、行政機関の一存で安全保障等に関わる情報を特定秘密に指定し、特定秘密の保有及び取扱いや提供を厳しく制約して国民や国会及び裁判所から秘匿し、重罰をもって特定秘密の漏えいや管理を害する行為による特定秘密の取得を禁ずるものである。
 これは報道による取材活動や国民、市民運動による情報開示の働きかけ、国会議員による行政監視の取組や公正な裁判の維持を阻害し、民主政治の存続・発展に必須の行政に対するチェック機能を喪失させることにつながる。
 また、特定秘密の取扱者について適性評価を実施することで、本人のみならず家族、同居人、親族のプライバシーにまで介入し、併せてこれらの職務従事者に重罰による行動制約をかけることで著しく人権を制限することを想定している。これが行政機関の職員のみならず契約業者の役職員又は都道府県警察の職員まで対象となることから、公益通報者保護法に規定された内部告発者の保護の趣旨が空文化され、不正告発の抑止につながることは明白である。
 また、特定秘密の指定に関し基準があいまいであり、指定期間が五年ごとに延長でき、三十年を超える場合も内閣の承認で可能としていることは、国民に知られると不都合な情報を永遠に秘匿することにすらつながる。過去に「日米核密約」があったことや、原子力発電に関する情報開示が不十分で行政や電力会社に対するチェック機能が働かず、重大な原発災害を招いてきた経過に照らしても、主権者たる国民の「知る権利」を阻害し、国民が求める行政の透明性向上の願いに逆行するものである。
 本法案が安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案(NSC設置法案)と一体のものとして提案されたことは、集団的自衛権行使に踏み出し、日米軍事同盟の機能強化を進めようとする安倍政権が、同盟国との軍事情報共有を念頭にしているものと思われ、国際紛争を平和的・非軍事的に解決することを国是とした日本国憲法の立場を否定する方向であることも看過できない。
 そこで、以下質問する。

一 本法案でいう特定秘密の指定権者であり、特定秘密の取扱者に対する適性評価の実施者である行政機関の長の具体的な役職名を全て明らかにされたい。

二 本法案を米国、英国、独国及び仏国の特定秘密の指定基準と比べた場合、いずれの国もやがて全情報が公開されることを前提に、秘密、機密、極秘のような三段階に評価分けして指定解除期間や取扱者のレベルを区分しているのに対し、本法案は秘密指定の段階もなく評価基準があいまいであり、指定期間(秘匿期間)も五年たつごとに延長可能な上、三十年以上の秘匿も内閣承認で可能である。これは、情報公開制度を根本において否定するものであり、民主国家の在り方、行政の透明性について、米国等からの大きな立ち遅れを生むものと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 米国における秘密保護法制と本法案及び我が国での情報公開制度を比べた場合、日本ではアメリカ連邦政府情報公開法のような行政の透明性や知る権利を司法制度も含めて保証する法制度が確立していない。例えば、米国の場合、政府が情報開示請求に不開示決定を行い請求者がこれを不服とした場合、直ちに審査は司法の場に移され、政府には不開示決定の適法性について立証責任が生ずるが、我が国では不服申立てを受けた情報公開・個人情報保護審査会が、政府の不開示決定を相当と認めればそれまでである。その後、裁判で開示請求の正当性を争っても、同審査会の決定を理由として、開示請求者の求めが認められることは難しい。このような状況下、国民の知る権利が特定秘密保護法制によって一方的に制限・縮小される恐れがあるといえるのではないか。

四 本法案の特定有害活動の規定について、報道による取材活動や市民運動の活動家による行動が該当する可能性はあるか。また、具体的に想定されている特定有害活動の事例を示されたい。

五 本法案第二十一条で「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」とされることについて、報道の自由に対し、どのように具体的に配慮するのか。「法律を拡張して解釈」するとは、具体的にどのようなことをいうのか。また、政党や宗教団体の機関紙は、その配慮の対象となるのか。

六 本法案では特定秘密の取扱者について、大臣、政務官等を除き適性評価を受けることになるが、これが行政機関職員や契約業者の就業者等の中で「忠誠度の高いもの」、「そうでないもの」という区分を生み、組織運営や人事取扱い上の不都合、差別・不利益をもたらすのではないか。適性評価を受けることを拒否した者について、人事上の不利益取扱いが生じないようどのような措置をとるのか。また、適性評価の結果、特定秘密取扱いに不適性と結果が出た者に対する人事上の不利益取扱いが生じないようどのような措置をとるのか。

七 本法案による適性評価は家族、同居人、親族にいたるまでの調査が想定されているが、これらに対する調査は対象者本人の同意は取らず無断で行うのか。評価を受ける者が提供する情報以外に、どのようにして家族、同居人、親族についての情報を得るのか。

八 本法案に基づく適性評価を受け特定秘密の取扱者になった場合、故意・過失ともに秘密漏えいの際、厳罰を受けることになるが、これは行政機関職員、契約業者の役職員等が、特定秘密に関わる問題での不正に対する内部告発を行うことを抑制することになるのではないか。本法案については、公益通報者保護法との関連について何ら触れられていないが、内部告発者保護と本法案による重罰による行動制約の関係につき、政府の見解を示されたい。

九 自由民主党所属議員が「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」を提出した昭和六十年六月以来、本法案が想定する特定秘密に当たる情報が漏えいした重大な事案が発生したことはあるか。具体的に示されたい。

十 本法案の目的(第一条)に「高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中」とあるが、これは本来サイバーセキュリティの分野の問題であり、そうした方面での具体的・技術的対策こそ強化されるべきではないか。本法案が高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴う情報漏えいの危険にどの条項でどのように対処することを規定し、具体的にどのようにセキュリティが向上することを想定しているのか、具体的に示されたい。

  右質問する。