質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四五号

JR北海道で発生した連続事故及び日本国有鉄道改革の見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十一月六日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   JR北海道で発生した連続事故及び日本国有鉄道改革の見直しに関する質問主意書

 最近、JR北海道でレール破断、列車の発煙・出火、燃料漏れ、脱線等の事故が相次いでいる。これらの事故の背景として、実施から二十六年を経過した日本国有鉄道の分割民営化(以下「国鉄改革」という。)を指摘する声があることを踏まえ、以下質問する。

一 JR北海道は、国鉄改革による会社発足時、社員数が約一万三千人であったが、現在は約六千八百人と約半数に減少している。一方、特急列車の本数は会社発足時、一日当たり七十八本であったものが現在は百四十本とほぼ倍増している。また、札幌と釧路の間における特急列車の所要時間は最短で約四時間三十分であったものが現在は約三時間四十分と約五十分も短縮している。鉄道の運行現場の実態を無視したこのような極端な人員削減と増発が、運行現場に過酷な負担を与え、事故続発の原因となっているものと考えられるが、この点に関し、JR北海道を監督する立場としての政府の見解を明らかにされたい。

二 二〇一二年度末におけるJR各社の社員数は、JR東海が営業キロ千九百七十・八キロメートルで一万八千九十四人であるのに対し、JR北海道は営業キロ二千四百九十九・八キロメートルで六千七百八十九人となっている。営業キロ一キロメートル当たり社員数にするとJR東海の九・一八人に対しJR北海道は二・七二人に過ぎない。
 営業キロがJR東海より長いJR北海道が、JR東海の約三分の一の社員数で鉄道の運行に当たろうとすること自体無理であり、事故が続発するのは当然であると考える。JR北海道を監督する立場として、この事態をどのように考えているのか、政府の見解を明らかにされたい。

三 新聞各紙の報道によれば、「修繕、改修のための資材を本社に手配しても、要求数通り納品されることはまずない」との声がJR北海道現場労働者から上がっているとされる。そもそもJR北海道、四国、九州の三社は、国鉄改革当時から経営安定基金を設け、その運用益から欠損を補てんするよう措置されている。自立的経営が不可能であることは当初から明らかであり、JR北海道の自力再建は困難であると考えられるが、国鉄改革に当たった政府として、責任をどのように考えているか明らかにされたい。

四 現在、JR各社の保線や車両整備は、そのほとんどを協力企業の請負労働者が担っているが、国鉄改革に際し、優れた技術を持った労働者が解雇され、協力企業の請負労働者に切り替えられた際に技術が継承されなかったことが脱線事故の原因として指摘されている。解雇された労働者は、国鉄改革に反対していた特定の労働組合に所属する者に集中しており、JR新会社への雇用に当たって労働組合による差別を行わないよう求めた参議院日本国有鉄道改革に関する特別委員会附帯決議(一九八六年十一月二十八日)にも反するものであった。被解雇者が提起した訴訟においても組合差別の存在は確認されているところである。
 このような経過から考えれば、JR北海道の一連の事故は、所属労働組合のみを理由として、優れた技術を持った労働者に至るまで、勤務成績に関係なく解雇した結果であり、国鉄改革に起因すると考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 道路の維持管理は政府や地方公共団体などの公共セクターが実施しており、空港もほとんどが公共セクターによる維持管理が行われている。しかしながら、鉄道に関しては線路の維持管理は原則として鉄道事業者に委ねられている。同じ公共交通である以上、道路や空港と同様、鉄道線路の維持も国や地方公共団体により行われることが必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

六 一九九八年五月、黒野匡彦運輸事務次官(当時)が「国鉄改革は百年後も正義であり続ける」旨発言したとされるが、JR西日本で福知山線脱線事故が起き、JR北海道でも連日事故が続く今なお、その認識に変化はないのか、政府の見解を示されたい。

七 政府は、旧国鉄をJR地域六社に分割した手法について、誤りはなかったと考えているのか。誤りはなかったと考えている場合、なぜ旧日本電信電話公社、旧日本道路公団及び旧日本郵政公社の分割の際、同様の手法を採らなかったのか。

八 JR福知山線事故やJR北海道の連日の事故を踏まえ、国鉄改革を検証し、見直す考えはないのか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。