質問主意書

第185回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二〇号

がれきの広域処理に関連する復興資金の流用問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十月二十一日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   がれきの広域処理に関連する復興資金の流用問題に関する質問主意書

一 がれきの広域処理に関連し、市町村の清掃工場の焼却施設などの廃棄物処理施設の整備事業費への補助のための循環型社会形成推進交付金に、従来の通常枠に加え、復旧・復興枠を設けているが、その狙いと理由を明らかにされたい。

二 循環型社会形成推進交付金を復旧・復興枠の名目で支給された自治体には、事業費から交付金額を差し引いた残余部分に対しても、震災復興特別交付税で措置されている。その狙いと理由を明らかにされたい。

三 前記一及び二についての法令上の根拠を明らかにするとともに、支給された自治体名と、交付金額を明らかにされたい。

四 環境省は、環廃対発第一二〇三一五〇〇一号「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」(以下「環境省通知」という。)により、交付金を支給する方針を示しているが、そこに記載されている内容は、「条件が整えば災害廃棄物の受入れが可能」、「受入れを行った他の既存施設で処理を予定していたものの受入れが可能」という点である。この方針に照らした場合、復旧・復興枠で交付された自治体は、それぞれ環境省通知のどの点に該当して、交付金支給を決めたのか示されたい。

五 循環型社会形成推進交付金の通常枠での平成二十四年度の当初予算における交付した自治体、対象事業及び金額を明らかにされたい。また、予算成立後に事情の変化があったか。あった場合にはどの自治体におけるケースか示されたい。

六 前記五に関連して、復旧・復興枠の予算は、環境省所管の復興予算から充当したと考えられるが、名目及び予算化手続の詳細を明らかにされたい。

七 環境省通知に沿わない事例については、予算の根拠を失うと考えられるが、いかがか。

八 市町村から排出された一般廃棄物の処理は、当該市町村の処理事業であり、循環型社会形成推進交付金は、この処理事業に対して、環境省が補助する交付金事業である。従って事業主体はあくまで当該市町村にあると考えられるが、そのように解釈してよいか。また、通常枠か復旧・復興枠かの選択は、事業主体者たる当該市町村に選択権があると考えられるが、政府の見解を示されたい。

九 循環型社会形成推進交付金の通常枠について、予算化手続の流れは、①焼却炉やリサイクル施設、処分場施設等の廃棄物処理施設の整備計画を一般廃棄物処理基本計画として立案、②右計画に基づき、住民同意、環境アセスメント、都市計画決定等の要件をクリアー、③市町村から都道府県を通して申請、④市町村自身が予算化、⑤環境省の本予算案決定、⑥予算案の決定による内示通知、⑦内示を受け、市町村で入札による業者決定、⑧市町村による事業実施、⑨環境省から交付金の決定と支給、と考えられるが、いかがか。

十 堺市に循環型社会形成推進交付金約八十六億円の交付を行ったケースでは、通常枠として予算化したのか、それとも復旧・復興枠として予算化したのか。併せて、環境省から堺市への内示通知では、通常枠あるいは復旧・復興枠のどちらであったのか、明らかにされたい。

十一 堺市のケースでは、堺市は、環境省への循環型社会形成推進交付金の申請について、平成二十四年一月から二月にかけて、環境省からの問いかけに対し、三度にわたって通常枠でと答えていたにもかかわらず、環境省は復旧・復興枠で申請するように指示したとされる。この事実に相違ないか。

十二 前記十一に関連して、その際環境省は、堺市が「受入れについてご検討いただいている状況にあることから」と回答し、復旧・復興枠の対象とした判断根拠としているが、何を持って「受入れについてご検討いただいている」と判断したか明示されたい。

十三 広域処理が行われなかったケースについても、環境省通知では、「受入条件の検討や被災地とのマッチングを実施したものの、結果として災害廃棄物を受け入れることができなかった場合であっても、交付金の返還が生じるものではありません。」と記載している。「受入条件の検討」や「被災地とのマッチング」とは具体的にどのようなことを示すのか。また、堺市のケースでは、堺市が受入条件の検討を行い、「否」と判断する可能性を示唆していたにもかかわらず、環境省は「交付金の返還が生じるものではない」旨返答したとされているが、その妥当性について、政府の見解を明らかにされたい。

十四 堺市のケースでは、堺市から循環型社会形成推進交付金の通常枠での申請をされたにもかかわらず、環境省は、循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠での予算化を行ったと考えられる。これでは市町村を主体とする事業への、環境省からの交付金の支給という法的前提を欠くことになると考えるが、今回のケースを良しとする法的根拠を示されたい。

十五 堺市のケースに関し、平成二十五年六月十三日の参議院環境委員会では、平山誠議員の質問に対し、堺市が自らがれき受入れの要望を出したかのように梶原成元環境大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長は答弁している。しかしこれは環境省が全国の自治体に行った事前調査の結果であり、自治体によっては、がれきの受入可能量を答えたのではなく、焼却施設の余力の状態を回答しただけと答えている東京都のような事例もある。当該市町村が申請を行ったかどうかの議論が行われている場で、この答弁は実に紛らわしい作為的な答弁である。実際には前記十一でも示したように、堺市は、循環型社会形成推進交付金の通常枠での申請を行っている。石原大臣は梶原成元環境大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長答弁に同意し、堺市が自らの意思でがれきの受入れを申請したかのように誤解し、質問を事実誤認と述べたが、訂正するつもりはあるか。議員の質問を事実誤認と決めつけ、「事実誤認に基づいた意見に対して私がとやかく申すつもりはございません。」と答えている。この件について、石原大臣は釈明をすべきと考えるが、いかがか。

十六 富山県高岡市のケースでは、がれきの受入れを行ったのは、高岡市の清掃工場の焼却炉であり、循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠での交付金が支給された対象自治体と対象事業は、「高岡地区広域圏事務組合」の現在建設中の焼却炉整備(平成二十六年九月稼働)である。「高岡地区広域圏事務組合」に、なぜ循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠交付金八億円が支給されたのか。また「高岡地区広域圏事務組合」の構成市である、高岡市、氷見市、小矢部市の三市にこの焼却炉の建設に関連した特別交付税合計十億円が支給されたとされるが、支給された理由と法的根拠を明らかにされたい。

十七 平成二十五年六月十一日の参議院環境委員会での平山誠議員の質問に対し、梶原成元環境大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長は、高岡市が広域処理を受け入れ、今後新たな炉を建設してごみ処理事業を引き継ぐ「高岡地区広域圏事務組合」に交付金を支給したと答弁している。がれきの受入れ事業は当初計画の段階でも平成二十六年三月三十一日までの事業とされており、平成二十六年九月稼働の焼却炉では受入れ可能性がなかったにもかかわらず、なぜ支給を行ったのか、政府の見解を示されたい。

十八 環境省の循環型社会形成推進交付金の復旧・復興枠を使った交付金の支給は、堺市、高岡市の事例のように違法な復興資金の流用と言える。会計検査院の指摘を受けるまでもなく、違法・不当な支給については、直ちに返還を求め、環境省の通常枠からの補てんを行い、復興資金の流用を止めるべきと考えるが、いかがか。

十九 前記十八に関連し、環境省は堺市に対して、堺市の了解を得ずに循環型社会形成推進交付金の内示について通知を送付するとともに、それは復旧・復興枠のものであり、通常枠への変更はできないと説明したとされるが、事実か。根拠とともに示されたい。

二十 堺市及び高岡市のケースは、前政権下で計画されたものとはいえ、交付金の支給は、石原大臣の下で行われたものである。交付金の支給に当たっては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に照らして、適法・合理的に事業が行われているかを判断して支給する必要があると考えるが、政府の評価を明らかにされたい。

二十一 堺市のケースは、がれきの広域処理を進める事業の一環であったはずである。環境省と堺市とのやり取りでは、環境省の関心は専ら循環型社会形成推進交付金の通常枠から復旧・復興枠への切り替えであり、がれきの処理を依頼するということがなかったように思われるが、事実関係を明らかにされたい。

二十二 大阪では今年二月一日から、富山では四月二十六日からがれきの持ち込みが始まった。しかし、がれき広域処理の九割を占める宮城県発のがれきの収束は既に一月十日に発表され、岩手県発のがれきも埼玉県、静岡県への持ち込みは終わり、収束が発表されていた。そうした中でなぜ大阪や富山にがれきを持ち込む必要性があったのか、明らかにされたい。

二十三 堺市及び高岡市の経過を考えるに、広域処理の収束過程であるにもかかわらず、大阪及び富山に持ち込んだのは、がれきを受け入れたというアリバイ作りのためではないか。がれきの広域処理が本当に必要だったのか、岩手県におけるがれき量、県内処理予定量及び広域処理必要量について、搬出先に対応させた数的根拠を示されたい。

二十四 復旧・復興枠での循環型社会形成推進交付金の支給に伴い支給された特別交付税について、どのような手続で行われてきたか、前記九に示した流れに従って明示されたい。

二十五 がれき処理費は、平成二十三年度補正予算及び平成二十四年度当初予算の合計が、一兆七百億円だったとされるが、予算編成時点での各県ごとの市町村処理、被災県処理、広域処理それぞれの内訳と、現時点での執行状況の内訳を示されたい。

二十六 がれきの広域処理は、平成二十三年度秋の時点で、総計四百一万トン、宮城県発三百四十四万トン、岩手県発五十七万トンと発表されていたが、その時点での広域処理の予算の総額と内訳を示されたい。

二十七 がれきの広域処理は、最終的に何トン行われたのか。処理した市町村名とそれに要した費用、そして当初予算のうちの未執行部分について明らかにされたい。

二十八 がれきの広域処理は、当初計画以降、大きくは平成二十四年五月二十一日、同年八月七日、平成二十五年一月十日、同年七月十七日の時点で方針変更がされた。これらの時点でどのように変更があったのか、変更内容と理由について明示されたい。

二十九 がれきの広域処理に当たって、がれきは一般廃棄物として定義され、被災市町村が主体となって進めることとなり、被災市町村が処理できないときには、被災県に事務委託し、それでも難しい場合には広域処理を行うという流れで行ってきたと承知しているが、この根拠法令について明らかにされたい。

三十 前記二十九で示した流れからすると、広域処理の必要量の算出は、当該被災県が行う仕組みとなっていたと思料できるが、それでよいか。
 その際環境省が果たした役割は、全国の自治体の受入れ可能状況などの情報を当該県に情報提供する等だったかと考えるが、その他どのような役割を果たしたか、示されたい。また、環境省が広域処理必要量について、当該県に対してデータ上の変更を指示すること等はなかったか。また、当該県が業務委託している事業者に直接指示すること等はなかったか、明らかにされたい。

三十一 環境省から被災県に職員が派遣され、がれきの広域処理等について支援したと聞くが、被災三県に何人の職員が派遣されたのか、派遣当初から月単位で示されたい。併せて、その際の主な業務も明らかにされたい。

  右質問する。