質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四三号

内閣参質一八三第一四三号
  平成二十五年七月二日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員井上哲士君提出航空自衛隊経ヶ岬分屯基地への米軍Xバンドレーダーの配備と弾道ミサイル防衛への対応等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員井上哲士君提出航空自衛隊経ヶ岬分屯基地への米軍Xバンドレーダーの配備と弾道ミサイル防衛への対応等に関する質問に対する答弁書

一の1及び3について

 お尋ねのXバンド・レーダー・システムの我が国への追加配備は、我が国に飛来する弾道ミサイル情報の確度及び同時追尾能力を更に向上させ、弾道ミサイル防衛により万全を期する必要性を踏まえたものである。このような我が国防衛上の有用性の確保のための地理的条件、展開地周辺の電波環境、同システムを設置するための十分な地積の確保の可能性等、様々な観点から米側とも協議しつつ最適な展開地を検討した結果、航空自衛隊経ヶ岬分屯基地(以下「経ヶ岬分屯基地」という。)を最適な候補地として選定したものである。

一の2について

 御指摘の報告書については、青森県が設置した専門家による検討会において、その検討結果をまとめたものと承知しており、政府としてコメントする立場にない。

一の4及び5について

 自衛隊は、他国からの攻撃を未然に防止するため、常時継続的な情報収集、警戒監視活動を行うとともに、万一、我が国への攻撃の予兆等が確認された場合には、その攻撃の態様に応じて、必要な措置を採ることとしている。このような自衛隊の態勢は、周辺住民等にも説明したとおり、経ヶ岬分屯基地を含む我が国への攻撃を抑止する効果を十分に持つものと考えている。
 Xバンド・レーダー・システムを追加配備する必要性については、一の1及び3についてで述べたとおりである。

一の6について

 一般に弾道ミサイル防衛システムは、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散が我が国を含む国際社会にとって差し迫った課題となっている中で、弾道ミサイルによる攻撃が行われた場合に国民の生命や財産を守るという専ら防御的なものである。したがって、同システムの整備等により、「北東アジア地域において、かえって他国の軍事技術開発を誘発し、この地域でさらなる軍備・軍事力の拡大を招きかねない」との御指摘は当たらないものと考えている。

二の1について

 電磁波による影響を理由として健康被害を訴える方がいることは承知しているが、政府としては、国際非電離放射線防護委員会が電磁波の健康への有害な影響を防止するために定めたガイドラインを踏まえて電磁波の強度に係る基準を定め、必要な規制を行っているところであり、現行の基準により人体への危害の防止は図られているものと考えており、「日本の高周波規制値は国際比較で見て異常に高い」との御指摘も当たらないものと考えている。

二の2について

 政府は、発生する電磁波の強度等を含めたXバンド・レーダー・システムの性能諸元を把握しており、同システムの経ヶ岬分屯基地への配備に当たっては、万一にも人体に好ましくない影響を与えないよう、当該性能諸元や我が国政府及び米国政府がそれぞれ定めている電磁波の強度に係る基準を踏まえ、必要に応じて同システムの周囲に立入禁止区域を設定するなど、安全性を確保する措置を講じていくこととしている。
 また、地上波テレビやラジオが使用する周波数帯域は、同システムが使用する周波数帯域とは異なるため、同システムの運用が、展開地周辺の地上波テレビやラジオの受信に影響を与えることはないと考えているが、万一、同システムの配備後、同システムに起因する電波干渉が生じた場合には、政府として、米側と調整を行い、必要な措置を採る考えである。

二の3について

 Xバンド・レーダー・システムの出力の詳細については、米軍の能力に関わるものであることから米国は公表しておらず、防衛省としても公表を差し控えているが、同システムが周辺住民や環境等に与える影響の有無等については、これまで周辺住民等に対し公表できる範囲で説明しているところである。

三の1について

 米国国内法令に基づく環境アセスメントについては、政府としてお答えする立場にない。一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されず、我が国の環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)は、我が国に駐留する米国軍隊(以下「在日米軍」という。)には適用されない。また、同法においては、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業として定められたものについて事業者が環境影響評価を行うことが定められており、今回配備されるようなXバンド・レーダー・システムの設置については、同法が対象とする事業の種類とはなっていない。

三の2について

 御指摘の「日本環境管理基準」は、在日米軍が作成し、運用しているものであることから、お尋ねについては、政府としてお答えする立場にないが、政府としては、米側が環境保護及び安全への取組を適切に実施するよう働きかけてまいりたい。

四の1について

 経ヶ岬分屯基地へのXバンド・レーダー・システムの配備については、日米間で緊密に調整を行ってきており、その中で、周辺住民等からの様々な懸念や要望等については米側に伝え、その対応については、回答を得たものから逐次周辺住民等に説明をしてきており、引き続き米側と調整の上、できるだけ早期に説明してまいりたい。

四の2について

 お尋ねについては、御指摘のドクターヘリを含む航空機が、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第八十一条の二の規定に基づき米軍車力通信所周辺に設定された飛行制限区域を捜索又は救助のために飛行する場合には、日米間の協議により、当該航空機の運航者は、事前に米軍車力通信所の要員と調整を行い、停波を含めた必要な措置が採られることとなっている。

四の3について

 米側からは現在のところ、配属される要員の飲料水・生活用水等のために一日五十トンの水が必要となるとの説明を受けているが、環境対策の必要性を含め、水資源の確保及び排水処理の方法については、米側と調整中である。
 米軍車力通信所においては、隣接する航空自衛隊車力分屯基地と同様の方法で適切に水資源の確保及び排水処理を行っており、現在のところ、周辺環境に対する影響が出ているものとは承知していない。

五の1及び2について

 弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルの配備段階への移行については、平成十七年十二月二十四日の「「弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発」に関する内閣官房長官談話」において、日米共同開発の成果等を踏まえ、判断することとしており、現時点で我が国が配備を決定したものではなく、このことは米側にも伝えている。
 同ミサイルについては、いまだ開発中であるが、いずれにせよ、自衛隊や米軍の能力に関わるものであることから、その性能の詳細についてお答えすることは困難である。

五の3について

 お尋ねの「日米共同技術研究、開発、BMDシステム整備(装備品の初度費も含め)等に要した費用」については、その算出に膨大な時間を要するためお答えすることは困難であるが、各項目ごとに、年度別の予算額をお示しすると、海上配備型上層システムの共同技術研究は平成十一年度から平成十八年度まで実施しており、平成十一年度約十億円、平成十二年度約二十億円、平成十三年度約四十四億円、平成十四年度約七十六億円、平成十五年度約二十六億円、平成十六年度約七十六億円、平成十七年度約九億円、平成十八年度約七億円、弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発は平成十八年度から実施しており、平成十八年度約三十億円、平成十九年度約二百十五億円、平成二十年度約百九十九億円、平成二十一年度約二百三十八億円、平成二十二年度約百九十三億円、平成二十三年度約七十四億円、平成二十四年度約七億円、弾道ミサイル防衛システムの整備等は平成十六年度から実施しており、平成十六年度約九百九十二億円、平成十七年度約千百八十九億円、平成十八年度約千三百六十二億円、平成十八年度補正予算約百四十二億円、平成十九年度約千六百十一億円、平成二十年度約千五百十五億円、平成二十一年度約八百七十八億円、平成二十二年度約三百九十三億円、平成二十三年度約三百九十九億円、平成二十四年度約五百六十四億円、平成二十四年度補正予算約百九億円となっている。
 平成二十五年度については、弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発経費に約十一億円を計上しており、弾道ミサイル防衛システムの整備等の予算として約二百七十二億円を計上している。