質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第九七号

内閣参質一八三第九七号
  平成二十五年五月二十四日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員江口克彦君提出大学の設置認可の在り方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員江口克彦君提出大学の設置認可の在り方に関する質問に対する答弁書

一について

 経済協力開発機構が平成二十四年に公表した「図表でみる教育(二千十二年版)」と題する報告書によると、平成二十二年における我が国の大学を含む「大学型高等教育」への進学率は五十一パーセントであり、同報告書に掲載されている経済協力開発機構加盟国の平均である六十二パーセントより十一パーセントポイント低い状況にあると承知している。政府としては、我が国の直面する社会の急激な変化に対応するための基礎的な力を有し、将来に活路を見いだす原動力となる有為な人材や、今後需要の見込まれる分野における厚みのある中核的・専門的な人材層を確保するためには、大学を始めとした高等教育における質・量ともに充実した人材の養成が必要であり、基本的には、これまでの大学の設置認可の弾力化等の方向性は維持すべきものと考えている。

二について

 大学の設置認可については、この認可に係る制度が大学の質を保証する観点から重要な役割を果たしているとの前提の下、大学が自らの判断で社会の変化等に対応して多様で特色ある教育研究活動を展開できるよう、平成十五年の学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)等の改正等により、最低限の基準を維持しつつ、その弾力化や審査基準の簡素化、審査の準則化等を図ってきたところである。その結果、大学の新規参入や組織改編が促進され、適切な競争等を通じて、多様で特色ある教育研究活動の活性化が図られるようになったが、一方で、頻繁な組織改編や設置計画の変更等が行われることなどにより、学生の体系的な学びや学修成果の達成が危ぶまれる事例が生じるなど、大学の質を保証する観点からは一部に懸念すべき状況も生じていると認識している。
 政府としては、大学が自らの判断で社会の変化等に対応していくことができるよう、これまでの大学の設置認可の弾力化等の方向性は維持しつつ、一部の懸念すべき状況を踏まえて、大学の質を保証する観点から設置基準の一層の明確化や審査の充実等を図ることにより、大学の設置認可に係る制度を適切に運用することが必要であると考えている。

三について

 大学の質・量の充実を図るためには、引き続きこれまでの大学の設置認可の弾力化等の方向性を維持しつつ、その制度を適切に運用するとともに、大学の設置後において、適切な競争等が行われることなどを確保すべく、文部科学大臣によって認証を受けた機関が大学の教育研究等の状況について定期的に評価を行う認証評価制度を更に充実することや私立大学における早期の経営判断を促進する制度等を導入することまで含めた全体的な仕組みの確立が必要であると考えている。そのような観点から、政府としては、今後とも、大学が自らの判断で社会の変化等に対応して多様で特色ある教育研究活動を展開しつつ、大学の質も十分に保証されるよう、大学の設置前及び設置後を通じた大学の質の保証に係る方策の在り方について検討を進めてまいりたい。なお、文部科学省においては、私立大学の設置者が自ら責任を持って的確な経営判断を行えるようにするため、私立大学の運営が困難に陥らないようにすることを含めて個別的な経営指導を行っており、今後ともその充実に努めてまいりたい。