質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第八九号

内閣参質一八三第八九号
  平成二十五年五月十四日
内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員福島みずほ君提出ボーイング787型機のバッテリー事故の原因解明と根本的な事故対策及び拙速な運航再開計画の見直しの必要性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出ボーイング787型機のバッテリー事故の原因解明と根本的な事故対策及び拙速な運航再開計画の見直しの必要性に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの本年一月七日(米国東部時間)に米国のボストン空港に駐機中の日本航空株式会社(以下「日本航空」という。)所属ボーイング式七八七型機(以下「B―七八七型機」という。)JA八二九Jにおいて発生したバッテリー損傷事案(以下「一月七日の事案」という。)及び本年一月十六日に全日本空輸株式会社(以下「全日空」という。)所属B―七八七型機JA八〇四Aにおいて発生したバッテリー損傷事案(以下「一月十六日の事案」という。)について、現時点では根本的な原因の特定には至っていない。

一の2について

 国土交通省運輸安全委員会(以下「委員会」という。)としては、一月十六日の事案に関するこれまでの調査によって明らかになった事実から、バッテリーの損傷はバッテリーケースの内側で生じており、その損傷の状況から、バッテリー内の複数のセルにおける化学的反応や異常な電流に関連して発熱し、大きな損傷につながったものと考えており、この点において、委員会、当該調査に参加した米国国家運輸安全委員会(以下「NTSB」という。)及びザ・ボーイング・カンパニー(以下「ボーイング社」という。)の間で大きな考え方の違いはないと考えている。
 また、委員会としては、ボーイング社が一月七日の事案及び一月十六日の事案(以下「両事案」という。)に関するこれまでの調査によって明らかになった事実を踏まえ、想定される全ての原因について対策を立てていると承知しており、委員会としても、現時点において、ボーイング社が想定している原因以外の原因を想定していない。

一の3について

 NTSBが本年四月二十四日(米国東部時間)に開催した公聴会(以下「四月二十四日の公聴会」という。)において米国連邦航空局(以下「FAA」という。)のスティーブ・ボイド航空機・運航乗務員担当マネージャーが、一般論として、バッテリーには常に一定程度、発熱現象の発生の可能性があることを想定した上で、発熱現象がもたらす結果と、発熱現象の発生の可能性を最小限に抑えなければならない旨述べたことは承知しているが、御指摘の発言を行った事実があるとは承知していない。

一の4について

 NTSBが本年四月二十三日(米国東部時間)に開催した公聴会(以下「四月二十三日の公聴会」という。)又は四月二十四日の公聴会においてNTSBのデボラ・ハースマン委員長が御指摘の発言を行った事実があるとは承知していない。

一の5について

 FAAがB―七八七型機の型式証明を行った際に適用した審査基準においては、バッテリーの不具合の結果として放出される煙又は有害なガスが航空機内に危険な量まで充満する状態となる確率は、千万飛行時間に一回未満とすることとされているが、四月二十三日の公聴会及び四月二十四日の公聴会において、FAAのスティーブ・ボイド航空機・運航乗務員担当マネージャーは、一月七日の事案については、飛行中に発生した事案ではないことから当該基準に定める状態に該当するか否かを判断することは困難であり、また、一月十六日の事案については、当該基準に定める状態に至らなかったとみられる旨証言していると承知している。
 なお、平成二十二年十一月九日(米国東部時間)、試験飛行中のB―七八七型機において、配電盤から発火する事案が発生し、その後、B―七八七型機の当該配電盤の設計変更等の対策が行われた事実は承知しているが、B―七八七型機においては、当該配電盤とバッテリーとは直接接続されておらず、当該事案はバッテリーの不具合により発生したものではないと承知している。

一の6について

 御指摘の報道は承知しているが、その事実関係については承知していない。

一の7並びに二の1及び2について

 両事案を受けてボーイング社が作成し、FAAが承認した是正措置(以下「是正措置」という。)においては、両事案に関するこれまでの調査によって明らかになった事実を踏まえ、想定される全ての原因に対応して、バッテリー内のセルの過熱を防ぐための直接的な対策、バッテリー内のセルが過熱した場合に他のセルに熱が伝播することを防ぐための対策及び万一バッテリー内のセル間で熱が伝播した場合の火災等の発生を防ぐための対策の三段階の対策を講ずることとされており、政府としては、是正措置により両事案のようなバッテリー損傷事案の再発防止が十分可能と考えている。
 また、国土交通省においては、B―七八七型機の運航再開を認めるに当たり、B―七八七型機の運航の安全の確保に加え、利用者の安心を確保するため、日本航空及び全日空に対して万全の措置を講ずるよう要請したところであり、御指摘のような飛行中のバッテリーの監視等の措置については、当該要請を受けて、両社が追加的に講ずることとしたものであると承知している。

二の3及び4について

 FAAによれば、御指摘の措置について検討を行った事実はないとのことであり、また、国土交通省においても、御指摘の措置について検討した事実はない。

二の5及び三の1について

 政府としては、是正措置において、両事案に関するこれまでの調査によって明らかになった事実を踏まえ、想定される全ての原因について対策が講じられており、是正措置により両事案のようなバッテリー損傷事案の再発防止が十分可能と考えている。
 なお、B―七八七型機の電力については、発動機の作動中は、主に、B―七八七型機の発動機に装備されている複数台の発電機から供給されるものであり、バッテリーは、駐機時の電源や非常時の予備電源等として限定的に使用されるものである。

三の2及び3について

 政府としては、B―七八七型機の安全の確保を最優先に対応してきた結果、是正措置により両事案のようなバッテリー損傷事案の再発防止が十分可能と考え、運航再開を認めたものであり、御指摘は当たらない。

三の4について

 政府としては、是正措置に基づく運航再開の決定に対し、NTSBが御指摘の「同意」又は「何らかの疑問」の提起を行ったか否かについて、承知していない。

三の5について

 委員会は、航空事故等、鉄道事故等及び船舶事故等の原因を究明するための調査等を行うことを任務としており、是正措置に基づく運航再開の決定について同意する立場にはない。

三の6について

 政府としては、是正措置において、両事案に関するこれまでの調査によって明らかになった事実を踏まえ、想定される全ての原因について対策が講じられており、是正措置により両事案のようなバッテリー損傷事案の再発防止が十分可能と考えていることから、運航再開を認めたことについて見直しを行う考えはない。