質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第七〇号

内閣参質一八三第七〇号
  平成二十五年四月十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員有田芳生君提出重粒子線がん治療に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員有田芳生君提出重粒子線がん治療に関する質問に対する答弁書

一について

 一部のがんを対象とする重粒子線がん治療の保険適用ついては、引き続き、先進医療会議において当該治療の安全性、有効性等について科学的な根拠に基づく評価を行った後に、中央社会保険医療協議会においてその可否について検討を行っていくこととなるため、その見通しについて、現時点でお答えすることは困難である。

二について

 我が国と米国とでは、重粒子線がん治療に限らず、放射線治療に関する医療提供体制、放射線治療の対象となる患者数等が異なると考えられることから、米国と比べて我が国の放射線治療に携わる医療従事者の絶対数が不足しているかどうかについて、一概にお答えすることは困難である。

三について

 お尋ねの「医学物理士」等の医療従事者の労働条件については、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)等の関係法令に基づき当該医療従事者が勤務する医療機関と当該医療従事者との間の契約で決められるものと承知している。また、お尋ねの「医学物理士」を国家資格とすることは、考えていない。

四について

 総合特別区域法(平成二十三年法律第八十一号)第八条第一項の規定による国際戦略総合特別区域の指定については、「総合特別区域基本方針」(平成二十三年八月十五日閣議決定)に基づき、「総合特別区域評価・調査検討会」(以下「検討会」という。)において指定申請について検討を行った後に、その結果を踏まえ、政府として指定案の検討を行うこととされている。
 政府としては、お尋ねの群馬県からの国際戦略総合特別区域の指定申請について、「重粒子線がん治療の技術的先端性や治療機器の開発の意義はあると考えられるものの、医療、医療機器の製造、医療ツーリズムの関係が具体性に欠ける等他の類似の医療プロジェクトとの比較優位が明らかでなく、また、地元企業との連携実績が乏しく、産業集積強化方策や事業の持続可能性を示す経済分析についても更なる検討が必要と考えられる。」との理由により指定の対象として推薦しないこととした検討会の検討結果は妥当であると判断し、指定を行わなかったものである。

五について

 政府としては、お尋ねの山形大学以外の重粒子線がん治療装置の導入を検討中の医療機関、大学等については、把握していない。

六について

 重粒子線がん治療装置については、独立行政法人放射線医学総合研究所(以下「放医研」という。)において、当該治療装置の海外展開も念頭に置きつつ、当該治療装置を活用したがん治療技術の確立を目指し、平成二十六年度までに超伝導小型炭素線回転ガントリー(以下「ガントリー」という。)の研究開発を行い、平成二十七年度からガントリーを用いた当該治療装置を活用したがん治療技術に係る実証試験を行うこととしている。

七について

 重粒子線がん治療技術の普及について、政府としては、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成二十五年一月十一日閣議決定)を踏まえ、平成二十四年度補正予算において、ガントリーの研究開発に必要な経費として約十三億四千万円を計上したところであり、放医研においては、重粒子線がん治療装置の更なる高度化のための研究開発を行うとともに、海外から医師、技術者等を受け入れることにより、将来、海外で重粒子線がん治療に携わる人材の育成に取り組むこととしている。

八について

 お尋ねの「医療イノベーション五か年戦略」(平成二十四年六月六日医療イノベーション会議決定)については、その内容を充実すべく所要の見直しを行うとともに、当該戦略に掲げられた施策の推進に努めてまいりたい。
 また、お尋ねの「重粒子線施設の整備」については、当該施設を整備しようとする医療機関等が自らの判断で行うべきものと考えているが、重粒子線がん治療装置の普及に当たっては、その小型化等が有効であるため、文部科学省において、そのための研究開発に取り組んでいるところである。