質問主意書

第183回国会(常会)

答弁書


答弁書第四一号

内閣参質一八三第四一号
  平成二十五年三月八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員江口克彦君提出道徳教育の充実に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員江口克彦君提出道徳教育の充実に関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十一年九月の政権交代以降の道徳教育に係る取組については、文部科学省として、平成二十年三月に改訂した小学校学習指導要領(平成二十年文部科学省告示第二十七号)及び中学校学習指導要領(平成二十年文部科学省告示第二十八号)等に基づき、引き続き、児童生徒の発達の段階に応じた道徳教育に関する指導内容の重点化等に係る周知等や、道徳教育の推進を主に担当する「道徳教育推進教師」の配置の促進などに取り組んだほか、平成二十一年に実施された行政刷新会議の事業仕分け等を踏まえ、従前の「道徳教育実践研究事業」等を再編し、新たに、各地方公共団体が実施する地域の特色を踏まえた道徳教育の取組への支援などを行う「道徳教育総合支援事業」を立ち上げてこれを実施してきた。また、同省が作成した道徳教育の教材である「心のノート」については、行政刷新会議の事業仕分けにおいて、「心のノート」に関してはホームページに掲載することで十分である旨の意見が複数挙げられたことなどを踏まえ、全ての小中学生への配布を取りやめ、その内容を同省のホームページに掲載し、必要に応じて印刷できるようにする方式に変更した。これらの結果、平成二十二年度の道徳教育関係予算額は前年度の約五割となった。
 しかしながら、学校におけるいじめなどが大きな問題となっている現下の状況も鑑みると、道徳的価値について自ら考え、主体的に行動することができる児童生徒の育成を目指し、道徳教育の充実に向けた取組を強化することが必要であると評価されることから、平成二十四年十二月の政権交代後に編成した平成二十四年度補正予算により、「心のノート」を一部改訂の上で、平成二十五年度に全ての小中学生へ配布するため、印刷等の準備を行うこととし、また、今国会に提出している平成二十五年度予算においても、平成二十六年度における「心のノート」の配布のための印刷等の準備を行う経費を計上しているところである。これにより、学校や家庭において「心のノート」が活用され、引き続き行われる「道徳教育総合支援事業」等とも併わせて、より一層、道徳教育の充実が図られることになるものと考える。

二及び三について

 御指摘の「徳育の教科化」については、平成十九年六月一日の教育再生会議の第二次報告において、「徳育の教科化」を図るべきとの提言がなされたことなどを踏まえ、中央教育審議会において、小学校及び中学校における道徳の時間の教育課程上の位置付けなどについて、教育課程に係る専門的な観点から検討が行われた。その中では、道徳教育を充実・強化すべきであるとの認識では一致が見られたものの、「道徳の時間を現在の教科とは異なる特別の教科として位置付け、教科書を作成することが必要」との意見がある一方で、「道徳の時間は現在の教育課程上の取扱いを前提にその充実を図ることが適当」など様々な意見があり、平成二十年一月の答申では、これを教科化するとの提言までは行われなかった。この答申を踏まえ、文部科学省としては、同年三月に改正した学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)並びに同月に改訂した小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領においては、「徳育の教科化」を実施しなかったものである。
 しかしながら、本年二月二十六日の教育再生実行会議の第一次提言においては、一についてで述べたような現下の状況に鑑み、いじめ問題の本質的な解決に向け、心と体の調和のとれた人間の育成に取り組む観点から、道徳教育の抜本的な充実や新たな枠組みによる教科化などに取り組むことが提言されたところである。この提言を踏まえ、同省としては、今後、同省に有識者会議を設置し、「心のノート」の全面的な改訂や、研修の実施等による教員の指導力の向上など、道徳教育の充実に取り組むとともに、これらの成果等も踏まえながら、道徳教育の教育課程上の位置付けとしてこれを教科化することを始めとする今後の道徳教育の具体的な在り方について、検討を進めてまいりたい。

四について

 家庭教育については、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第十条第一項が「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。」と規定するとともに、同条第二項が「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」と規定している。政府としては、同条や同法第十七条第一項に規定する教育振興基本計画等に基づき、家庭教育に関し、保護者に対する学習の機会や情報の提供を行うとともに、その相談に応ずるなど、家庭教育の支援の取組を積極的に推進してまいりたい。