質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第七〇号

重粒子線がん治療に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年四月二日

有田 芳生   


       参議院議長 平田 健二 殿



   重粒子線がん治療に関する質問主意書

 がんは、日本で昭和五十六(一九八一)年より死因の第一位であり、平成二十二(二〇一〇)年には年間約三十五万人が亡くなり、生涯のうち約二人に一人ががんにかかると推計されています。
 このような現状において、身体的負担が少なく、確実にがん病巣を破壊できる治療法として期待されているのが重粒子線治療です。独立行政法人放射線医学総合研究所(以下「放医研」とする)は、世界初の医療用重粒子線がん治療装置(HIMAC)を研究・開発し、治療において優れた成績を上げていることは世界中から認められているところです。我が国が世界をリードしているこの治療の普及と新たな発展に関連して、以下質問します。

一 重粒子線がん治療は、施設整備に多額の費用を要しており、また医療保険の適用がないことから、患者の費用負担の大きさも普及に当たっての大きな課題となっています。先進医療から保険適用へ移行する可否は、二年に一度、厚生労働省の中央社会保険医療協議会で審議されて決まります。医療保険が適用される見通しはありますか。

二 重粒子線がん治療に当たっては、施設整備と併せて、放射線治療医、医学物理士等の医療従事者の確保・育成も大きな課題としてあげられています。平成二十四(二〇一二)年の我が国の医学物理士認定者数は六百七十三名です。それに比べ、米国では二〇〇四年時点で、すでに約四千名の従事者が数えられています。人口比を加味しても、我が国の絶対数は不足していませんか。

三 平成二十年度の診療報酬改定では、特定の放射線治療を行う医療機関の施設基準に医学物理士が認められました。今後、こうした医療従事者の処遇について、国家資格化も含め、どのように取り組んでいくつもりですか。

四 群馬県は、昨年、政府が打ち出している国際戦略総合特区制度に基づき、「群馬がん治療技術国際戦略総合特区」の創設を申請しました。世界で五つしかない重粒子線治療施設の一つである群馬大重粒子線医学研究センターを中心に、医療産業拠点作りを目指したものです。申請時、県産業政策課は「世界最高水準のがん医療を提供するモデル地域となることで、機器の輸出や外国からの研修の受け入れ、温泉地などと連携した医療観光にもつなげ、関連産業を活性化させたい」としていました。しかし、この申請は認められませんでした。理由をお示し下さい。

五 政府は平成二十四年度補正予算に山形大学が導入を目指している新型の重粒子線がん治療装置の研究開発費として、十億円を計上しました。山形大学に重粒子線がん治療装置を備えた施設が設置されれば、東北・北海道では初めてとなります。国民が平等に治療を受けられるためには、地域展開の必要性があります。他にも検討中の医療機関、大学等があればお示し下さい。

六 文部科学省が進める重粒子線がん治療のための超伝導小型炭素線回転ガントリーの開発は、圧倒的な臨床経験を有する放医研の治療方式を国際標準化(放医研スタンダード)し、国際競争力を強化する上で必要不可欠とされています。このため現政権は、平成二十四年度補正予算において民主党政権時の当初より大幅増の十三・四億円を計上しています。この開発は三か年の計画期間を経て平成二十六年度まで継続します。実用開始を見込んでいる平成二十七年度から国際展開へ向けて具体的にどのように取り組む予定か、お示し下さい。

七 政府は「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成二十五年一月十一日閣議決定)の中で「成長による富の創出」を実現することが必要であると述べ、医療分野では再生医療の研究開発・実用化へ向けての支援に取り組むとしています。海外から新たな需要を呼び込み、富の創出につながる重粒子線技術の普及を支援する予定はありますか。

八 平成二十四年六月、民主党政権下で取りまとめた「医療イノベーション五か年戦略」において、重粒子線がん治療装置について、小型化や海外展開を視野に入れた研究開発を行うとしています。政府は、五か年戦略の継続と重粒子線施設の整備に当たっての取り組み方針を持っていますか。

  右質問する。