質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第五四号

医療・介護分野に重点を置いた経済成長と雇用確保の在り方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年三月十一日

藤末 健三   


       参議院議長 平田 健二 殿



   医療・介護分野に重点を置いた経済成長と雇用確保の在り方に関する質問主意書

 政府は平成二十五年六月を目途にアベノミクスの三本の矢の一つである成長戦略を提示するとしているが、日本のような資本蓄積の進んだ経済においては、成長戦略の力点を「投資」のみならず、「消費」にも置くべきである。
 現在の安倍政権の経済政策は、金融政策を中心とするデフレ脱却に焦点が当たっているが、今後は、「デフレ」への対処だけではなく、実質的な需要を喚起しなければならない。特に医療・介護は、国民の需要が十分に満たされているとは言えない分野である。また、大きな雇用創出も期待できる分野でもある。
 こうした考えから、以下のとおり質問する。

一 二〇一〇年から二〇二〇年にかけて、日本の人口は約四百万人減るものの、六十五歳以上の高齢者は約六百六十万人増えると推計されており、今後、高齢者を中心に医療サービスの需要はますます増加すると見込まれる。一方、医療体制の状況を見ると、人口千人当たりの医師数は、日本の場合二・二人であるのに対して、ドイツは三・七人、フランスは三・三人、国民皆保険制度ではないアメリカでも二・四人などと、欧米と比べて日本の医師数は大幅に少ないことがわかる。
 社会の高齢化が進むとともに、医師という高付加価値な職種の雇用需要は大きくなるが、医師を増やすことは、同時に看護師、医療技術者、医療事務職員といった医療従事者、すなわち、医療分野全体の雇用創出へとつながることが期待できる。こうした考え方について、政府の見解を明らかにされたい。

二 介護分野を見ると、今後高齢者が増える中、現在、約百四十九万人いるとされる介護職員は、二〇二五年までに約二百三十七万人から二百四十九万人が必要とされており、介護分野の雇用も今後、急速に需要が増加することが見込まれる。
 そもそも、特別養護老人ホームの実態を見ても、入所申込者数は約四十二万人とも言われ、定員にひっ迫したような状況にあり、需要を全く満たしていない。その一方で、介護職員は現時点においても、慢性的な人員不足から過重労働となっており、介護職員の処遇を大幅に改善することが必要不可欠となっている。介護職員の処遇改善は、介護サービスそのものの改善にとどまらず、介護職員の所得が増えれば、これが消費を刺激することにもなる。こうした考え方について、政府の見解を明らかにされたい。

三 投資が蓄積し、社会が成熟した我が国においては、医療・介護分野への雇用対策は、極めて大きな経済効果をもたらす可能性があり、成長戦略においては必ず需要の掘り起こしを進めるべきである。医療と介護の充実は、すなわち、経済成長と雇用創出に直接貢献するだけではなく、高齢者の不安と不満を解消するためにも必要不可欠である。
 平成二十二年版の厚生労働白書によれば、産業における需要が一単位発生したときの直接・間接の労働力需要の増加を示す雇用誘発係数を見ると、公共事業が〇・〇九七二であるのに対して、介護は〇・二六三六となっている。これは、予算が同じ規模の場合、介護のほうが公共事業の約二・七倍の雇用を生み出すことになる。
 このように、雇用を創出するためには、公共事業を増やすよりも、まず、介護や医療の分野に投資すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。