質問主意書

第183回国会(常会)

質問主意書


質問第四〇号

高江ヘリパッド工事における土砂崩落事故に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年二月二十五日

糸数 慶子   


       参議院議長 平田 健二 殿



   高江ヘリパッド工事における土砂崩落事故に関する質問主意書

 沖縄防衛局が、沖縄県国頭郡東村高江で施工中の「北部(H二十三)着陸帯移設工事」の工事現場(N-四・一地区)で、本年一月上旬、土砂崩落事故が発生した。この事故は、直径七十五メートルのヘリパッドの一部である「無障害物帯」の法面が崩落したもので、大量の赤土が、県民の水瓶である福地ダム上流の谷に流出している。
 この土砂崩落事故について、次のとおり質問する。

一 二月二十日、今回の事故について、沖縄防衛局長から説明を聴取したところ、「八メートル×十五メートル程度の範囲で表層が崩れたが、発生場所は、施工エリアではなく、その周辺だ。」とのことであった。

 しかし、ヘリパッドは、直径四十五メートルの「接地帯」と、その外側の幅十五メートルの「無障害物帯」からなり、直径七十五メートルの大きさである。今回の事故は、「接地帯」の外周にある土砂流出防止柵の一部が崩壊し、そこから「無障害物帯」の土砂が大きく崩落したのであり、ヘリパッド予定地内部で発生した事故である。また、崩落個所付近では、本年度、またそれ以前から、様々な工事が行われてきており、決して「施工エリアの周辺」ではない。
 また、「八メートル×十五メートル程度の範囲」というのなら、土砂崩落は、「無障害物帯」の中で収まっていることになる。しかし、現場では、かなり下の谷まで赤土が流出しており、沖縄防衛局の説明は事実に反している。
 今回の土砂崩落事故の状況、また、事故後に講じた措置等について、政府の承知するところを明らかにされたい。

二 工事図面によると、崩落現場は、かなりの急斜面であるが、ヘリパッドの「無障害物帯」とするため、立木を全面伐採した箇所であった。やんばる地方では、各所の林道工事を見るまでもなく、斜面の立木を伐採した場合、再三、土砂崩落事故が発生している。今回の土砂崩落事故も、急斜面の立木を全面伐採したことによって発生したことは明らかである。事故発生当時、現地では大した雨量が観測されていないにもかかわらず、土砂崩落事故が発生したことは極めて深刻な事態である。沖縄防衛局は、今回の土砂崩落事故の原因をどう認識しているのか。

三 沖縄防衛局は、今回の工事にあたって、沖縄県の赤土等流出防止条例に基づき、県に「事業行為通知書」を提出している。これに対し、県は、審査後、防衛局に「確認済通知書」を返送したが、そこには、「赤土等流出防止施設基準及び同施設管理基準の遵守を徹底してください。」等の「留意事項」がつけられていた。
 赤土等流出防止条例施行規則の「別表(第四条関係)」の「第二管理基準」では、降雨の恐れがある時及び降雨時には見回り点検を実施して別紙二「見回り点検表」に記録すること、さらに災害により施設が破損したときは、別紙三「非常時の措置報告」により知事に報告することと定めている。そして、この別紙三では、「破損時の状況、原因等」、「講じた応急措置の概要」、「措置の結果」等を記載し、「見回り点検表の写し」及び「その他関係資料」を添付することとされている。
 また、そもそも赤土等流出防止条例では、県は赤土等流出防止対策状況の報告を求めることができると定められている。
 ところが、沖縄防衛局は、これらの「見回り点検表」や「非常時の措置報告」等を含め、今回の土砂崩落事故に関する報告書をいっさい沖縄県に提出していないが、その理由は何故か。早急に提出するよう指示すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 地元住民らの要請により、二月中旬、沖縄県と東村がそれぞれ現地立入調査を行った。しかし、その際、沖縄防衛局は、沖縄県と東村に対して、「米軍の許可が得られない」として、現地での写真撮影を禁止した。また、沖縄県が要求している事故直後の現場写真についても、同理由で提供を拒否している。沖縄県は、赤土等流出防止条例に基づき、立入調査等を行う権限を有しており、崩落事故の原因の究明、今後の赤土等流出防止策の検討のためにも、事故直後の現場写真の分析や、応急措置状況の写真撮影は必要不可欠である。
 そもそも、平成八年十二月二日の施設及び区域への立入許可手続についての合同委員会合意において、国会議員や地方議会議員、地方公共団体職員の「公的な立入」に際しては、「合衆国軍隊は、(略)すべての妥当な考慮を払う。」とされている。また、報道関係者の同行も申請により可能なはずである。
 沖縄防衛局が、県に対して、事故直後の現場写真、応急措置状況の写真を直ちに提供するよう指示すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。また、今後の「公的な立入」に際しては、写真の撮影を認めると同時に、報道関係者、また、地元住民代表らの同行についても認めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 今回、土砂崩落事故が発生したN-四・一地区のヘリパッド工事は、千百七十一平方メートルの森林伐採が行われ、そのために土砂崩落事故が発生した。しかし、今後、工事が予定されているH地区では、四千五百三十九平方メートルもの伐採が行われ、さらにG地区では、一・五キロメートルもの進入路も造成されるので、さらに大規模な森林伐採が不可避である。
 これら五か所のヘリパッド造成予定地でも、やはりかなりの急斜面が含まれており、このままでは、再度の土砂崩落事故の発生が危惧される。
 今後の土砂崩落事故再発を防止するためにも、今回の事故の原因を究明し、ヘリパッドの位置の選定、工法の選択についての再検討が必要である。そのため、赤土等流出防止条例を所管する沖縄県や専門家、地元住民等を交えて検討の場を設けられないか。それまでの期間は、ヘリパッド工事を一時中止すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。