質問主意書

第181回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六六号

内閣参質一八一第六六号
  平成二十四年十一月二十二日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員浜田昌良君提出被後見人の親族への情報提供による成年後見制度の更なる利用促進に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出被後見人の親族への情報提供による成年後見制度の更なる利用促進に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「最高裁判所事務総局家庭局の実情調査」によれば、後見等の開始の申立件数は、平成十二年四月からの一年間では八千九百五十六件であったものが、平成二十三年一月からの一年間では三万七百六十三件にまで増加しているところ、これによれば、成年後見制度の利用は年々増加しているといえるものの、他方で、認知症の高齢者や知的障害又は精神障害を有する者の数に比較して、御指摘のように「成年後見制度の利用状況は未だに低調である」との意見があることも承知している。
 成年後見制度の利用件数がこのような状況である理由は必ずしも明らかではないが、成年後見制度がいまだ十分に周知されていないことのほか、認知症の高齢者等が親族等の援助を受けながら日常生活を送ることができているため、成年後見制度を利用していないという場合も少なからず存在するのではないかと推測されるところである。御指摘のとおり、成年後見人等と本人の親族との間で十分な信頼関係が構築されることは望ましいことではあるが、成年後見人等が本人の財産状況等に関する情報をその親族に提供することについては、本人のプライバシー等の保護を図るべき成年後見人等の責務に照らし、問題があるものと考える。

二及び三について

 成年後見人等による不正行為を防止するためには、事案に応じて適切な者を成年後見人等に選任すること、選任された成年後見人等に自らの職務と責任の重大さの自覚を促すこと、成年後見人等に対する適切な監督体制を構築すること等が重要であると考えている。家庭裁判所においても、このような観点から、多額の金銭の受領が見込まれるなど金銭管理に十分な注意を要する事案では弁護士や司法書士等の専門職を成年後見人等に選任したり、親族等の専門職以外の者を成年後見人等に選任する場合には成年後見人等の職務と責任についてビデオの視聴や面接による説明を通じて十分な自覚を促したりしているほか、事案に応じて成年後見人等の事務を監督する後見監督人等を選任するなどして不正行為の防止に努め、また、後見等の事務が開始された後は、成年後見人等に対し、定期的に後見等の事務の報告を求めるなどしてこれを監督し、不正行為の兆候を把握した場合には、速やかに適切な措置を講ずるように努めているものと承知している。このほかにも、成年後見人等の不正行為を未然に防止する趣旨で、平成二十四年二月からは、本人が有する金銭を、その払戻しの要件を厳格化した上で信託銀行等に信託することを内容とする「後見制度支援信託」を利用することができるようになるなど、様々な運用上の工夫がされているものと承知している。
 政府としては、成年後見制度の利用の促進のためにも、成年後見人等の不正行為を防止することやそのための合理的な監督体制を構築することが極めて重要であるものと認識しているところ、現在行われている運用上の工夫による効果等も考慮しながら、今後、更に必要な施策について検討してまいりたい。

四について

 御指摘のように「親族以外」で成年後見人等になる者としては、弁護士や司法書士等の専門職やいわゆる市民後見人など様々な者が想定されるが、これらの者が成年後見人等に選任される場合には、二及び三についてで述べた家庭裁判所による指導や監督等に加えて、選任の前後を通じて、各地の弁護士会や公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート等の団体により、成年後見人等の事務を適正に行うために必要な知識の習得や経験の共有を図るための研修等が行われているところであり、また、市区町村等が実施する市民後見推進事業等においても、このような研修等のほか、弁護士や司法書士等の専門職等による市民後見人への支援体制の整備などの取組が行われているものと承知している。
 政府としては、成年後見人等は、このような指導等を通じて、後見等の職務の内容や責任の重大さについて十分理解するに至るものと考えているが、更に御指摘の「成年後見人等の行動指針又はガイドライン」を策定することが必要か否かについては、これらの指導等による効果等をも踏まえつつ、慎重に検討してまいりたい。