質問主意書

第181回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三七号

内閣参質一八一第三七号
  平成二十四年十一月二十日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 岡田 克也   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員加藤修一君提出低周波音による健康被害の防止に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出低周波音による健康被害の防止に関する質問に対する答弁書

一について

 公害等調整委員会(以下「公調委」という。)の裁定は、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第二条第三項に規定する公害に係る被害について紛争が生じ、損害賠償の責任又は被害の原因に関する裁定が申請された場合に、公害紛争処理法(昭和四十五年法律第百八号。以下「法」という。)第四十二条の二第一項の裁定委員会により、個別の事件ごとに判断が行われるものであり、大気汚染や騒音、振動といった公害の類型ごとに「因果関係や損害賠償を問う基準となる明確な定義」が存在するものではない。裁定に当たっては、裁判例や過去の裁定も踏まえ、加害者側の事情と被害者側の事情、具体的には、侵害行為の態様とその程度、被侵害利益の性質とその内容、侵害行為の公共性の内容とその程度、侵害行為の開始とその後の継続状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等が総合的に判断されるものである。

二について

 全都道府県の審査会等(法第二十四条第二項に規定するものをいう。)に対し低周波音による被害に関する調停の申請が行われた事件について、①当該年度において調停の申請を受け付けた件数、②当該年度において調停の手続が終了した件数、③②のうち調停が成立した件数、④②のうち調停が打ち切られた件数、⑤②のうち申請が取り下げられた件数、⑥②のうち公調委に対し裁定の申請が行われた件数を、平成元年度から平成二十三年度までについて、各年度ごとにお示しすると、次のとおりである。
 平成元年度 ①二件 ②一件 ③一件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成二年度 ①零件 ②一件 ③一件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成三年度 ①零件 ②零件 ③零件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成四年度 ①零件 ②零件 ③零件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成五年度 ①一件 ②零件 ③零件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成六年度 ①一件 ②二件 ③二件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成七年度 ①一件 ②零件 ③零件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成八年度 ①一件 ②一件 ③零件 ④一件 ⑤零件 ⑥零件、平成九年度 ①二件 ②二件 ③零件 ④二件 ⑤零件 ⑥零件、平成十年度 ①一件 ②二件 ③零件 ④二件 ⑤零件 ⑥零件、平成十一年度 ①零件 ②零件 ③零件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成十二年度 ①一件 ②零件 ③零件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成十三年度 ①一件 ②二件 ③一件 ④一件 ⑤零件 ⑥一件、平成十四年度 ①三件 ②零件 ③零件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成十五年度 ①三件 ②三件 ③一件 ④二件 ⑤零件 ⑥零件、平成十六年度 ①四件 ②一件③零件 ④一件 ⑤零件 ⑥零件、平成十七年度 ①二件 ②一件 ③一件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成十八年度 ①一件 ②四件 ③零件 ④四件 ⑤零件 ⑥一件、平成十九年度 ①二件 ②零件 ③零件 ④零件 ⑤零件 ⑥零件、平成二十年度 ①四件 ②四件 ③一件 ④零件 ⑤三件 ⑥零件、平成二十一年度 ①二件 ②四件 ③零件 ④零件 ⑤四件 ⑥二件、平成二十二年度 ①七件 ②三件 ③零件 ④一件 ⑤二件 ⑥零件、平成二十三年度 ①四件 ②八件 ③一件 ④六件 ⑤一件 ⑥一件
 ②の調停の手続が終了した合計三十九件について、調停の申請の受付から手続の終了までの平均期間は約一年五か月であり、③の調停が成立した合計九件のうち発生源対策を行うことで当事者の双方が合意した件数は七件であり、④の調停が打ち切られた合計二十件について、法第三十一条第一項の調停委員会が当事者の出頭の下で意見の聴取等を行った回数の平均は約十二回である。

三について

 「参照値」については、「低周波音問題対応の手引書」において、「物的苦情に関する参照値」と「心身に係る苦情に関する参照値」の二種類を示しており、それぞれ、建具類のがたつきや室内での不快感等について苦情があった場合に、その苦情の原因が低周波音によるものかどうかを判断する目安になる値として、低周波音の閾値(それ以下では反応を生じない最大値)や心理反応についての聴感実験データ等を基に、学識経験者からなる低周波音対策検討委員会において示された数値である。
 また、公調委に対する低周波音による被害に関する裁定の申請について、測定調査の結果等が「参照値」を下回っていることのみをもって、申請を棄却する裁定は行われていない。

四について

 一般消費者の生活の用に供される「電気温水器」や「風力発電設備」による健康被害が、消費生活用製品安全法(昭和四十八年法律第三十一号)第二条第六項に規定する重大製品事故に該当するか否かについては、個別具体の事案に即して判断されるべきものである。

五について

 お尋ねについて、製造物責任法(平成六年法律第八十五号)及び国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)に基づく低周波音による健康被害に関する訴訟につき、政府として把握している限りでお示しすると、次のとおりである。
 製造物責任法に基づく訴訟については、独立行政法人国民生活センターのホームページの「製造物責任法(PL法)による訴訟」において、「家庭用ヒートポンプ給湯機健康被害神奈川事件」、「業務用ヒートポンプ給湯機健康被害岩手事件」及び「家庭用ヒートポンプ給湯機健康被害群馬事件」として掲載されており、いずれについても現在訴訟係属中と承知している。
 国家賠償法に基づく訴訟については、平成二十四年七月二十日に提訴された「低周波音被害国家賠償請求事件」(訴状に記載された事件名)を把握しており、その概要としては、居住地の隣地に所在する機器(冷凍庫、給湯器等)が発する低周波音により健康被害を受けたという原告ら(六名)が、環境大臣が規制権限を行使しなかったことが違法であるとして、国に対し、損害賠償を請求したものであり、同法に基づく請求額は八百十九万円で、現在訴訟係属中と承知している。

六について

 御指摘の機器について低周波音に関する苦情があることは承知しているが、一般環境で観測されるような低周波音の領域では、人間に対する生理的な影響は現時点では明らかとはなっていないため、政府においては、低周波音による影響について、今後とも最新の科学的知見等の収集に努めてまいりたい。