質問主意書

第181回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二三号

内閣参質一八一第二三号
  平成二十四年十一月十三日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員佐藤正久君提出尖閣諸島をめぐる中国政府の挑発行為及び発言に対する日本政府の見解及び対抗策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員佐藤正久君提出尖閣諸島をめぐる中国政府の挑発行為及び発言に対する日本政府の見解及び対抗策に関する質問に対する答弁書

一について

 楊潔中国外交部長は、本年九月二十七日(現地時間)に行った第六十七回国際連合総会における一般討論演説において、日本は日清戦争末期に尖閣諸島を窃取した旨の発言を行ったと承知しているが、同様の表現は、例えば、同年八月二十四日付け中国外交部報道官談話においても使用されているところである。尖閣諸島に関する中国側の独自の主張に基づく同国政府の個別の言動の背景等について、政府としてお答えする立場にない。

二について

 御指摘の報道については承知しているが、外交上のやり取りの詳細について明らかにすることは、相手国との関係もあり差し控えたい。

三について

 御指摘の「調査及び開発」が具体的に何を指すのかが必ずしも明らかではないが、政府としては、本年九月十一日に取得した尖閣諸島の魚釣島、北小島及び南小島(以下「尖閣三島」という。)の利活用の方策については、その内容、必要性、尖閣諸島の長期にわたる平穏かつ安定的な維持及び管理を図るという尖閣三島の取得及び保有の目的等を総合的に勘案しつつ、検討していく必要があると考えている。

四について

 航空自衛隊の航空機による緊急発進の回数については年度の四半期ごとに公表することとしており、特定の期間における特定の国の航空機に対する緊急発進の回数については、航空自衛隊の対応能力を明らかにするおそれがあることから、お答えを差し控えたい。

五について

 お尋ねの「国有化以降、接続水域に侵入」及び「領海を侵犯」の意味するところが必ずしも明らかでないが、尖閣三島を取得した本年九月十一日から十月末日までの間に、海上保安庁が、尖閣諸島周辺の我が国接続水域内において確認した中国公船の種類及び隻数は、同年九月十四日に「海監」と呼称されている中国国家海洋局所属の船舶(以下「海監」という。)六隻、同月十八日に海監十隻及び「漁政」と呼称されている中国農業部漁業局所属の船舶(以下「漁政」という。)二隻、同月十九日に海監七隻及び漁政六隻、同月二十日に海監四隻及び漁政四隻、同月二十一日に漁政八隻、同月二十二日に海監二隻及び漁政十隻、同月二十三日に漁政三隻、同月二十四日に海監四隻及び漁政九隻、同月二十五日に海監四隻及び漁政二隻、同年十月一日に海監四隻及び漁政二隻、同月二日に海監四隻及び漁政三隻、同月三日に海監四隻及び漁政一隻、同月四日に海監四隻及び漁政四隻、同月五日に海監四隻及び漁政四隻、同月六日に海監四隻及び漁政四隻、同月七日に海監四隻及び漁政一隻、同月八日に海監四隻、同月九日に海監四隻及び漁政四隻、同月十日に海監四隻、同月二十日に海監四隻及び漁政一隻、同月二十一日に海監四隻、同月二十二日に海監四隻、同月二十三日に海監四隻及び「科学」と呼称されている中国科学院海洋研究所所属の船舶(以下「科学」という。)一隻、同月二十四日に海監四隻及び科学一隻、同月二十五日に海監四隻、漁政二隻及び「東海救」と呼称されている中国交通運輸部救助サルベージ局所属の船舶一隻、同月二十六日に海監四隻、同月二十七日に海監四隻、同月二十八日に海監四隻、同月二十九日に海監四隻及び漁政二隻、同月三十日に海監四隻及び漁政二隻並びに同月三十一日に海監四隻及び漁政一隻である。
 また、同期間に、海上保安庁が、尖閣諸島周辺の我が国領海内において退去要求を行い、領海外に退去させた中国公船の種類及び隻数は、同年九月十四日に海監六隻、同月十八日に海監三隻、同月二十四日に海監二隻及び漁政二隻、同年十月二日に海監四隻、同月三日に海監三隻、同月二十五日に海監四隻、同月二十八日に海監四隻並びに同月三十日に海監四隻である。
 さらに、お尋ねの「政府の評価(中国政府の狙いを含む)や対応」の意味するところが必ずしも明らかでないが、尖閣諸島に関する中国側の独自の主張に基づく同国政府の言動については、我が国として全く受け入れられず、かかる我が国の一貫した立場については、中国政府に対して明確に伝えているところである。尖閣諸島周辺海域の警備については、関係省庁が連携して適切に対応しており、例えば、情勢に応じて海上保安庁のしょう戒体制を強化するなど監視警戒を厳正かつ的確に行っているところである。中国側の独自の主張に基づく同国政府の個別の言動の背景等については、政府としてお答えする立場にない。

六について

 防衛省においては、平素から我が国周辺海域における中国海軍艦艇の動向を含め、警戒監視活動に努めているところであるが、尖閣三島を取得した本年九月十一日から十月末日までの間に、海上自衛隊が南西諸島付近で確認した中国海軍艦艇の種類、隻数及び場所は、同月四日に宮古島の北東約百十キロメートルの海域を東シナ海から太平洋に向けて南東進する中国海軍ルージョウ級ミサイル駆逐艦一隻、ルフ級駆逐艦一隻、ジャンカイⅡ級フリゲート一隻、ジャンウェイⅡ級フリゲート一隻、フーチン級補給艦一隻、ダージャン級潜水艦救難艦一隻及びダーラオ級潜水艦救難艦一隻の合計七隻、同月十六日に与那国島の南南東約四十九キロメートルの海域を太平洋から東シナ海に向けて北進し、その後、魚釣島の南西約八十キロメートルにおいて日中両国の地理的中間線を通過し北西進するルージョウ級ミサイル駆逐艦一隻、ルフ級駆逐艦一隻、ジャンカイⅡ級フリゲート一隻、ジャンウェイⅡ級フリゲート一隻、フーチン級補給艦一隻、ダージャン級潜水艦救難艦一隻及びダーラオ級潜水艦救難艦一隻の合計七隻、同月二十二日に沖縄島の南約四百七十キロメートルの海域を北進するルーヤンⅠ級ミサイル駆逐艦一隻、ルーヤンⅡ級ミサイル駆逐艦一隻及びジャンカイⅡ級フリゲート一隻の合計三隻並びに同月二十三日に宮古島の北東約百三十キロメートルの海域を太平洋から東シナ海に向けて北西進するルーヤンⅠ級ミサイル駆逐艦一隻、ルーヤンⅡ級ミサイル駆逐艦一隻及びジャンカイⅡ級フリゲート一隻の合計三隻である。
 また、お尋ねの「政府の評価(中国政府の狙いを含む)や対応」の意味するところが必ずしも明らかでないが、政府としては、我が国周辺海域における中国海軍艦艇の動向を含め、海上自衛隊の固定翼哨戒機P―三C及び護衛艦により適切に警戒監視活動を行っているところであり、中国軍の動向を引き続き注視していく考えである。こうした中国軍の個別の動向に係る中国側の意図については、政府としてお答えする立場にない。

七について

 お尋ねの「国有化以降、中国漁船による尖閣諸島付近の接続水域への侵入及び領海侵犯等」の意味するところが必ずしも明らかでないが、尖閣三島を取得した本年九月十一日から十月末日までの間に、海上保安庁が、尖閣諸島周辺の我が国領海内において違法操業している中国漁船に対して退去警告を行い、領海外に退去させた隻数及び場所は、同月十二日に大正島周辺海域において二隻及び同月二十八日に久場島周辺海域において一隻であり、また、同期間に、水産庁が、尖閣諸島周辺の我が国領海内において違法操業している中国漁船に対して退去警告を行い、領海外に退去させた隻数及び場所は、同月二十二日に大正島周辺海域において一隻である。なお、海上保安庁及び水産庁では、尖閣諸島周辺の我が国接続水域内において確認した中国漁船は、個別具体的には把握しておらず、お答えすることは困難である。
 さらに、お尋ねの「政府の評価(中国政府の狙いを含む)や対応」の意味するところが必ずしも明らかでないが、尖閣諸島付近の我が国領海に入る日本籍船以外の船舶に対して、関係省庁が連携して適切に対応しており、例えば、尖閣諸島付近海域において巡視船により常時しょう戒を行うほか、海上保安庁の航空機により随時しょう戒を行うとともに、関係省庁において情報収集を行っている。また、こうした活動の中で、必要に応じて外交ルート等を通じて中国側に申入れを行っているところである。五についてで述べたとおり、中国側の独自の主張に基づく同国政府の個別の言動の背景等については、政府としてお答えする立場にない。

八について

 お尋ねの「国有化以降、台湾の公船や漁船による尖閣諸島付近の接続水域への侵入及び領海侵犯等」及び「通過場所」の意味するところが必ずしも明らかでないが、尖閣三島を取得した本年九月十一日から十月末日までの間に、海上保安庁が、尖閣諸島周辺の我が国領海内において退去要求を行い、領海外に退去させた、又は尖閣諸島周辺の我が国接続水域内において確認した台湾海岸巡防署所属船の隻数及び場所は、領海にあっては、同年九月二十五日に魚釣島周辺海域において十二隻、接続水域にあっては、同月二十一日に魚釣島周辺海域において一隻、同月二十五日に同海域において十二隻、同年十月一日に同海域において一隻、同月四日に同海域において一隻及び同月九日に同海域において一隻である。
 また、同期間に、海上保安庁が、尖閣諸島周辺の我が国領海内において違法操業している台湾に登録されている漁船に対して退去警告を行い、領海外に退去させた隻数及び場所は、同月三日に魚釣島周辺海域において一隻及び、同月二十六日に久場島周辺海域において一隻である。なお、海上保安庁及び水産庁では、尖閣諸島周辺の我が国接続水域内において確認した台湾に登録されている漁船は、個別具体的には把握しておらず、お答えすることは困難である。
 さらに、お尋ねの「政府の評価(台湾の狙いを含む)や対応」の意味するところが必ずしも明らかでないが、尖閣諸島に関する台湾側の独自の主張に基づく言動については、我が国として全く受け入れられず、かかる我が国の一貫した立場については、台湾側に対し、公益財団法人交流協会を通じて明確に伝えているところである。尖閣諸島周辺海域の警備については、五についてで述べたとおり、関係省庁が連携して適切に対応しており、例えば、情勢に応じて海上保安庁のしょう戒体制を強化するなど監視警戒を厳正かつ的確に行っているところである。同諸島付近の我が国領海に入る日本籍船以外の船舶に対しては、七についてで述べたとおり、関係省庁が連携して適切に対応しており、例えば、同海域において巡視船により常時しょう戒を行うほか、海上保安庁の航空機により随時しょう戒を行うとともに、関係省庁において情報収集を行っている。また、こうした活動の中で、必要に応じて台湾側に申入れを行っているところである。台湾側の独自の主張に基づく台湾側の個別の言動の背景等については、政府としてお答えする立場にない。

九について

 お尋ねの「日中両国間で合意済みであった中国政府関係者らによる日本訪問事業」がどのような事業を指すか必ずしも明らかでなく、網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、日本政府が中国政府関係者を招聘する事業において、お尋ねのような中止の事例及び欠席の事例は存在しない。また、お尋ねの「国際会議やイベントに中国政府関係者等が参加を取り止めた、あるいは代表者を差し替え、または格下げした事実」の意味するところが必ずしも明らかでなく、網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、中国政府関係者が参加を取りやめた事例として、現時点で政府として把握しているものについて、①会議等の名称及び②会議等の開催予定日は、次のとおりである。
 ①日中著作権協議 ②平成二十四年九月十三日
 ①日中著作権セミナー ②平成二十四年九月十四日
 ①ミャンマーに関する東京会合 ②平成二十四年十月十一日
 ①第十回世界税関機構(WCO)アジア大洋州地域研修センター長会合 ②平成二十四年十月二十五日及び二十六日
 ①世界遺産条約採択四十周年記念最終会合 ②平成二十四年十一月六日から八日まで
 ①第六回日中韓三国保健大臣会合 ②平成二十四年十一月十一日
 なお、本年十月十二日及び十三日に開催された第六十七回国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会の公式会合については、中国側は出席予定者を明らかにしていなかったが、朱光耀中国財政部副部長及び易綱中国人民銀行副行長が出席した。
 我が国として、尖閣諸島をめぐる事態が日中関係の大局に影響を与えることは望んでおらず、政府としては、中国側に対して、このような我が国の考え方を累次説明しているところである。

十について

 お尋ねの「日中両国間で合意していた日本政府関係者らによる中国訪問事業」がどのような事業を指すか必ずしも明らかでなく、網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、中国政府が日本政府関係者を招聘する事業において、お尋ねのような中止の事例は存在しない。また、お尋ねの「国際会議やイベントに日本政府関係者らが参加を取り止めた、あるいは代表者を差し替え、または格下げした事実」の意味するところが必ずしも明らかでなく、網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、日本政府関係者が参加を取りやめた事例は、現時点で政府として把握している限り、存在しない。政府としては、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、尖閣諸島をめぐる事態が日中関係の大局に影響を及ぼすべきではないと考えている。

十一について

 本年十一月五日から十六日までの間に実施している日米共同統合演習の訓練計画を日米両政府間で検討し調整する過程においては、入砂島を使用する訓練を含む様々な案を検討し、本演習の目的との整合性等を総合的に勘案した結果、同島を使用する訓練は演習に含めないこととしたものであり、政府としては、同島を使用する訓練計画を中止又は変更したとは認識していない。
 なお、本演習は、特定の国又は地域を想定したものではない。