質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六三号

低周波音の健康被害対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十一月十六日

加藤 修一   


       参議院議長 平田 健二 殿



   低周波音の健康被害対策に関する質問主意書

 ヒートポンプ給湯器の低周波音による健康被害を訴え、製造会社や住宅販売会社等の責任を問う訴訟が各地で起きている。本年七月、群馬県や広島県の住民六人は遂に国を相手取って損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 二〇一〇年時点で電気給湯器(エコキュート)の普及は約二百万台だが、「革新的エネルギー・環境戦略」(平成二十四年九月十四日)によると、政府は省エネ対策を抜本的に強化するため、二〇三〇年までにエネファームなど家庭用燃料電池を含め電気とガスの高効率給湯器を全世帯の約九割まで導入する計画である。
 政府は、低周波音による健康被害を新型公害と位置付け、被害防止対策及び発生源対策に腰を据えて取り組むべき段階にある。低周波音を発生する機器を製造する企業及び業界団体にも、SRI(社会的責任投資)、CSR(企業の社会的責任)等の観点から、国民の厳しい視線が向けられている。
 岩手県滝沢村環境基本条例は、「予防原則」に基づき、「電磁波や低周波による影響などの調査研究」の施策を進めることとしている。家電製品など消費者を取り囲む製品の新技術が環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも規制措置を可能にする考え方が「予防原則」であり、我が国においては予防的取組方法と称しているものである。
 国こそがこのような取組への対応が求められる。憲法第二十五条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有」し、「国は、すべての生活部面について、(中略)公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とされている。政府はこの際、低周波音の健康被害対策について、必要かつ十分な予防及び防止の抜本的な対策をとるべきである。この観点から以下質問する。

一 ヒートポンプのメーカーで構成する社団法人・日本冷凍空調工業会は、据付け時に隣家の寝室を避けることなどを奨励する業者向けガイドブックを作成している。しかし、このガイドブックの内容については、複数の隣家等に対してプライバシーを侵害しかねない対応を求めることになっており、これ自体、住宅密集地の多い我が国での被害防止策として限界があり、個人が対応する上で効果的なものと言えない。低周波音軽減のための技術改善こそ優先すべき解決策であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 政府は、家庭用燃料電池(エネファーム)を二〇三〇年までに五百三十万台にすることを目指して、平成二十一年度予算から二十四年度予算までに計約六百七十六億円の補助金をかけて普及を支援している。しかし、一方でそれに伴うと思われる低周波音被害の苦情も激増している。関係省庁の掌握している苦情の件数、内容、具体的な被害対策を明らかにされたい。

三 製造業の業界団体が作成している製品アセスメントは、設計などの際の製品の環境負荷の軽減の評価や改善のために活用されている。しかし、これら開発段階での改善は3Rなどに限定した環境面だけに活用する必然性はない。低周波音による健康被害の防止など、製品の安全性向上にも製品アセスメントを拡充すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 OECD諸国で低周波音に係る基準又は法規制等を定めている国における規制手法の概要について、政府の承知しているところを明らかにされたい。また、台湾における規制基準に基づく規制と日本の低周波音規制との違いについて、政府の承知しているところを明らかにされたい。

五 消費者安全法に基づく消費者安全調査委員会は、低周波音被害について、報告徴収や被害現場への立入検査など事故等原因調査等を行い、関係省庁に対し発生防止や被害軽減のための各種措置をとるよう勧告・意見具申すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

六 消費者安全法では、地方公共団体及び国民生活センターの長が消費者事故等(重大事故を含む)の情報を得たときは、内閣総理大臣に対し通知するものと規定されている。しかし、事故等に関係するメーカー等の事業者に対しては同情報を通知しなければならないとの規定はない。
 消費者が自らを守るためには機器の使用について十分に理解しておくことが重要だが、それにも限界がある。特に製品そのものの改善が求められるものについてはメーカーに対応を求めることが合理的である。このため関係事業者に情報を機敏に提供することが被害拡大を防止したり、事業者の専門的知見などの協力を得ることにつながる。事業者への通知を義務化するよう法改正すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。