質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六一号

第一種農地の転用許可基準の緩和に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十一月十六日

加藤 修一   


       参議院議長 平田 健二 殿



   第一種農地の転用許可基準の緩和に関する質問主意書

 福島県においては、放射能汚染の風評被害等によって営農の見込みが立てられず、除染の全体的な遅れから将来の農業経営に全く展望が持てなくなっている農家が少なくない。そんな折、今年七月の固定価格買取制度の施行を契機に、再生可能エネルギーの発電を地域復興事業の柱にとの期待が一気に広がっている。
 福島県もこれに呼応しメガソーラー候補地と電気事業者を公募した。山林、牧草地、雑種地、畑など計二十四か所、商談進行中の五か所を除いても全体面積で少なくとも約百五十ヘクタール(十一月十二日現在)が事業化計画で名乗りを上げている。
 ただし、二十四か所の計画には第一種農地は一平方メートルたりとも含まれない。農地法が第一種農地の転用について不許可と規制しているからである。農地法でも、農業用施設や高速道路の流通業務施設など例外的に立地を許可する施設がないわけではない。しかし国は、被災地・福島において、再生可能エネルギーの発電施設が電力の公共インフラであることを頑迷に認めようとしないのである。
 福島県復興計画は「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を基本理念の筆頭に掲げ、国・原子力発電事業者に対して、県内の原子力発電所の全基廃炉を求めることとしている。すなわち再生可能エネルギーの飛躍的推進による新たな社会づくりをめざし、未来を見据え雇用等の創出に懸命に取り組んでいるのである。
 私は本年四月二日の参議院予算委員会などで、規制緩和と構造改革の観点から、耕作放棄地や休耕地等を農地転用し、再生可能エネルギーの導入を積極的に推進し、東日本大震災の被災地の活性化を図るべきと主張してきた。ところが農林水産省は農地法の従来解釈に固執し、従来認めてきた青森県の第一種農地の転用方針を逆に転用を不許可とするなど、昭和二十七年に制定された農地転用許可制度の腰のすわらない姿勢がかえってあからさまになった。
 第一種農地は、大規模で造成や樹木伐採が不要であり、民家から距離が離れているなど、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー導入に有利な条件を満たす土地が多い。東京電力福島第一原子力発電所事故以降、農地に利用されておらず将来的にも利用することが見込まれない土地の活用は、「ふくしま再生」の一つの鍵とみられている。そのポテンシャルを活用するために第一種農地の農地転用を原則許可とするよう制度を改革すべきである。以下、その立場から質問する。

一 福島県内陸部の第一種農地もしくは牧草農地等の転用希望に対して、東日本大震災復興特別区域法(以下「特区法」という。)による転用手続きの簡略化が認められるのは「津波被害を受けた地域に限定する」旨の行政指導を国が行った事実はあるか。また特区法の適用上、放射線量の高い内陸部の被災農地と津波被害を受けた農地の転用に関して、区別をつける理由があるか。それぞれにつき、政府の見解を明らかにされたい。

二 農林水産省は、第一種農地や牧草地の農地転用を希望する農家に対し、当該農地について非農地への地目変更を推奨した事実はあるか。また、非農地と決定された土地を農用地に残置することがあるのかどうか、将来的に非農地から農地への復帰は制度的に可能か。それぞれにつき、政府の見解を明らかにされたい。

三 太陽光や風力を活用する再生可能エネルギー施設は公共インフラであり、農林水産省自身が農山漁村の活性化に結びつける重要性を強調している。「再生可能エネルギーの推進」を復興重点プロジェクトに位置付ける被災地・福島県においては、第一種農地ではあっても原則として設置許可の方向に農地転用許可制度を規制緩和すべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。

四 政府は閣議決定「エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針」(平成二十四年四月三日)において、本年度中に耕作放棄地などへの再生可能エネルギー設備の設置に関して農地制度における取扱いを明確化するとしている。我が国の農山漁村の活力低下が指摘されるなか、新たなエネルギー源として再生可能エネルギー源の導入が農業者の所得向上による農業復権の一つになるばかりか、日本の再生のためにも強く期待されており、法律・政令・省令などを含め総合的な見直しを行うべきである。その場合には、農地法、森林法、漁港漁場整備法、酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律などの改正にまで踏み込んだ抜本的な改正とするべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 農林水産省は第百八十回国会に農山漁村における再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案を提出したが、現在、継続審査となっている。同法律案では、農地法に基づく手続きの簡素化、農林地の権利移転を促進する計画制度の創設等の所要の措置を講ずることとされているが、これに付け加えて、第一種農地の区分にありながらも、長年の未耕作で荒廃した放棄地や災害や放射能汚染の被災で農地への復帰が困難な土地等の転用について立地基準を大幅に緩和するよう同法案の修正が行われるべきである。場合によっては、法案を再提出する際に前記の内容を盛り込むことも考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。