質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二四号

米兵の性暴力・犯罪の対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十一月六日

糸数 慶子   


       参議院議長 平田 健二 殿



   米兵の性暴力・犯罪の対策等に関する質問主意書

 私が共同代表を務める「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」は、本年十月十六日、沖縄県本島中部で起きた米海軍兵二人による集団強姦致傷事件に対し激しい憤りをもって「米海軍兵士による女性への性暴力事件に抗議し軍隊の撤退を求める要求書」を野田佳彦内閣総理大臣、アメリカ合衆国のオバマ大統領等、関係機関の長宛に十月十七日付けで送付した。以下、その内容を引用する。
 基地・軍隊の長期的な駐留を強いられている私たち沖縄県民・女性は、昨日未明(十月十六日)に発生した海軍兵士による集団強姦致傷事件にショックと強い憤りを覚えます。「仕事を終えて自宅へ一人で歩いて戻っているところを襲った。女性の首には絞められたような跡があった。」と報じられていますが、帰宅途中の女性を標的にその自由と安全を奪い恐怖の中に暴力を行使する許しがたい犯罪です。去る八月に那覇市内で起きた強制わいせつ致傷事件をも喚起されます。
 今回の加害海軍兵士の犯行は、米本国の基地より輸送任務で嘉手納基地に飛来し、沖縄滞在は二泊で、しかも数時間後には離沖するという中で起こしており、軍の任務遂行中で性暴力をはたらくことに、軍隊の構造的暴力が露呈されています。被害者の通報が適時になされたからこそ加害者逮捕に至りましたが、さもなければ、性暴力は隠蔽され、任務遂行となっていたことになります。
 さらに、県民の強い反対の声を封殺するかのように強行配備されたMV22オスプレイ機が住民の頭上で飛行訓練するのはまさに「空飛ぶ凶器」であり、陸上においては米兵の性暴力、事件事故は「歩く凶器」だと言えます。前年度の全米海兵隊における女性兵士に対する性暴力事件が、その発生率で他の基地の約二倍にもなることも、八月に知らされたばかりです。しかしそれは、今回のような沖縄女性に対する性犯罪を除外したものなのです。
 米軍は、ひき逃げ死亡事故、タクシー強盗など米兵による事件事故の多発により、二〇一〇年の六月から兵士の深夜零時以降の外出禁止令を無期限で発していましたが、今回の事件は、その枠外で起こっており、在沖米軍以外の米軍人に対しては、どのような規律が存在するのか疑問です。
 被害にあった女性が受けた心身の痛みと恐怖は計り知れず、その回復が最重要視され、加害者への厳正な処罰がなされなければなりません。米軍駐留の長い年月の中で、度重なる米軍の女性に対する暴力、人権侵害事件の発生は、米軍駐留がいかに住民のいのちと尊厳を脅かすものであるかを示しています。あわせて、米兵による性暴力被害を訴え出られない女性が決して少なくないことを忘れてはなりません。
 私たちは「軍隊は構造的暴力組織であり、地域においても、また国家間においても真の安全を保障しない」という立場から、以下のことを要求します。

一、被害女性のプライバシーが守られ、心身のケアがはかられること

一、被害女性への謝罪と加害米兵の厳正なる処罰を行うこと

一、女性、子どもの安全な生活環境を保障するため、全米兵の基地外行動を禁止すること

一、沖縄からすべての基地・軍隊は撤退すること

 右記の要求書を踏まえ、以下、質問する。

一 一九七二年五月十五日の沖縄の本土復帰以降、在日米軍の軍人及び軍属、その家族を加害者とする性暴力・犯罪に対し、日米両政府においてどのような協議が行われたのか。日米合同委員会の開催日時、協議内容、取決め事項等の詳細を時系列的に明らかにされたい。

二 在日米軍の兵士による性犯罪等の凶悪事件を撲滅するには深夜の外出禁止措置では効果がなく、全米兵の基地外行動を禁止するしかないと考える。米兵の基地外行動の禁止に対する日本政府の見解を示されたい。

三 日本政府は、在日米軍の兵士による性暴力・犯罪に対し、どのような対策及び予防措置等が望ましいと考えるか。

四 米兵による性暴力の被害者の一人であるキャサリン・ジェーン・フィッシャーさん(オーストラリア国籍)が本年十月二十五日、外務省に対し、被害者対策の一環として「米軍人・軍属等による事件事故被害者の対策チーム」及び「二十四時間体制の性犯罪被害者救援センター」の設置を要請したが、日本政府の見解を示されたい。

  右質問する。