質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇号

田中慶秋前法務大臣の参議院決算委員会欠席に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十一月一日

世耕 弘成   
岩井 茂樹   


       参議院議長 平田 健二 殿



   田中慶秋前法務大臣の参議院決算委員会欠席に関する質問主意書

 去る十月十八日に開かれた参議院決算委員会で、熊谷大議員は、法務行政内における復興予算の使途、田中前法務大臣と指摘された暴力団の関係等について質疑通告し、同大臣に出席を要求した。
 しかしながら田中前法務大臣は出席せず、藤村官房長官は「法務大臣は、財団法人日本調停協会連合会が主催する『第六十回全国調停委員大会』及び『調停制度施行九十周年記念式典』に出席するという判断をされた、と聞いている」と答弁した。
 決算委員会は理事会において、記念式典が終わったら出席するものとして、熊谷議員の質問順位を変更し、理事間協議を継続したが、その後、法務省から委員長に文書で届出があり、当日十六時から駐日ドイツ大使への表敬及び意見交換、十九時から駐日ドイツ大使主催レセプションという日程を示して、結局田中前法務大臣は委員会に出席しなかった。
 憲法第六十三条は、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」と定めている。
 今回の田中前法務大臣の委員会欠席は、答弁拒否の疑いが強く、これは参議院が築いてきた充実した決算審査を貶めかねない傲慢な行為であると断ぜざるを得ない。
 また、国権の代表機関である決算委員会において、国民に対する説明責任を果たさない田中前法務大臣に閣僚たる資格は無い。
 熊谷議員は用意した質問も出来ずに質問権を奪われたと言える。更には問題の解決がなされず、割り当てられた質問時間も宙に浮いたままである。
 我が党は他の党とともに、参議院議長にこの件を報告し、しかるべき措置を野田内閣に要求したが、その回答はいまだない。
 これに関連して、以下のとおり質問する。

一 憲法第六十三条について、今回の田中前法務大臣の参議院決算委員会欠席に関し、十月二十九日付け文書で、城島財務大臣は「『病気その他出席しない正当な理由がある場合は出席しないことも認められる』と解されている」と、参議院決算委員長に回答しているが、これは政府の公式な憲法解釈なのか。

二 藤村官房長官は答弁で、「田中前法務大臣が『第六十回全国調停委員大会』及び『調停制度施行九十周年記念式典』に出席する」と説明し、参議院決算委員会を欠席したことを正当化しているが、本二件が「病気その他出席しない正当な理由がある場合は出席しないことも認められる」との解釈における「正当な理由」に当たると政府として考えるのか。

三 過去の例に照らしても「第六十回全国調停委員大会」、「調停制度施行九十周年記念式典」、「駐日ドイツ大使への表敬及び意見交換」、「駐日ドイツ大使主催レセプション」の各案件が、憲法が定める委員会出席よりも優先すべき重要な公務とは到底考えられず、このような理由で田中前法務大臣が、参議院決算委員会を欠席して答弁を拒否したことは、憲法第九十九条の憲法尊重擁護義務違反に当たらないか。

四 十月十八日の参議院決算委員会で藤村官房長官は、「法務大臣は、『第六十回全国調停委員大会』及び『調停制度施行九十周年記念式典』に出席するという判断をされた、と聞いている」と答弁しているが、この答弁も憲法第九十九条の憲法尊重擁護義務違反に当たらないか。

五 今回の参議院決算委員会の手続は、憲法第六十三条の「答弁又は説明のため出席を求められたとき」に当たると考えるか。

六 国会法第七十一条の「委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席を求めることができる。」との規定を政府としてどう考えるか。

七 委員長の権限において大臣の出席を求めることは、参議院委員会先例録二四八(国務大臣及び政府委員の出席要求は、委員長から直接これを行うのを例とする)で認められているように、参議院としても既に確立された慣例であるが、政府としては、議長を経由した出席要求しか認めないということか。

  右質問する。