質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

消防飛行艇及び人体と環境に配慮した泡消火剤を用いた空中消防体制の強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十月三十日

秋 野 公 造   


       参議院議長 平 田 健 二 殿



   消防飛行艇及び人体と環境に配慮した泡消火剤を用いた空中消防体制の強化に関する質問主意書

 日本の国土の約七割は森林であり、森林は国土の保全、水源のかん養、地球温暖化防止等、私たちの生活に大切な役割を果たしている。しかしながら森林火災は、一年間に全国で約千八百件も発生し、その消失面積は約八百ヘクタールとなっている。全国で毎日平均約五件の森林火災が発生し、毎日平均約二・三ヘクタールの森林が消失していることになるが、森林が一旦火災により消失すると、その機能が回復するまでには何十年もの年月と多大なコストを要することから、火災の発生自体の防止に努めるとともに、発生した森林火災に対して早期かつ有効な消防により消失面積を最小限にすることが重要である。
 平成七年一月十七日に発生した阪神・淡路大震災においても、人命救助の迅速化とともに大規模火災に対する消防の改善が大きな課題として指摘されている。
 その結果、人命救助の迅速化については、ハイパーレスキュー隊が発足し、ドクターヘリが全国的に整備されるなどの対策が追加され、顕著な改善が認められているものの、大規模火災に対する消防については、必ずしも改善が認められていない。
 当時、「震災時の火災に対して何故ヘリコプターで消火活動をしないのか」という疑問が沸き起こった。この疑問に対して、当時の自治大臣及び消防関係者は、ヘリコプターによる空中消防を行わなかった理由として、①上空の熱気流による危険性②上空の強い上昇気流による危険性③消火剤散布による人体への悪影響についての懸念④投下水量の不足等を指摘した。
 これらの課題が整理されていたにもかかわらず、十分な改善策や別の対策についての検討はなされることなく、東日本大震災においては、一都十県で三百二十四件の火災が発生し、なかでも、宮城県気仙沼市では津波が襲った後に石油タンク等から漏れた重油に引火し、大火災が発生した。さらに千葉県市原市の石油コンビナートも延焼したが火の勢いが強く消火活動ができずに、十日以上燃え続けて自然鎮火した。
 大規模火災だけが問題ではない。二〇一一年八月九日に岡山県石島及び香川県井島(同じ島)で発生した森林火災は両県にわたって延焼し、両県知事より陸上自衛隊に災害派遣が要請された。その結果、消防庁と防衛省による連携が行われて消火がなされた一例は、近隣の消防車を結集できない四百二十一の有人離島を含む六千八百五十二の離島やへき地の消火活動は大規模火災とともに自治体のみで解決できる問題ではなく国の支援が必要な実態を示している。
 その他、地震で水道管が破壊され消火栓を用いることができず、また道路が寸断され消防車が集結できない状況が火災を拡大させ、尊い命が奪われ得ることを考えると陸上消防に空中消防を強化した上で両者を適切に組み合わせることにより消防能力を強化する検討は急務である。
 国においてもJAXA(宇宙航空研究開発機構)が、消防飛行艇を用いた空中消火技術の研究を進捗させているところであるが、このような取組を強化することは重要である。
 公明党は防災・減災ニューディールにより、災害に強い国土づくりを十年かけて行うことを政策提案しているところであるが、国民の生命・身体・財産を守る観点から、以下質問する。

一 林野火災対策実態調査によると、平成十二年から平成二十一年の間の空中消防回数は、年平均百二十三回である。これらの実績を踏まえ、これまで整備されてきた自治体による道路を用いた陸上消防を主としながらも、大規模火災や離島・へき地の火災に対して、空中消防を強化した上で組み合わせることは、消火能力の強化策として有効であると考えられるが、政府の見解如何。

二 平成十四年度の林野火災に係る調査研究を踏まえ、平成十五年十月、「林野火災の予防及び消火活動について(通知)」が各都道府県に発出されている。この通知を根拠に、現状では空中消防として複数機のヘリコプターが連携して散水を繰り返す方法が実施されている。しかしながら、ヘリコプターによる空中消火の問題点として、阪神・淡路大震災時に当時の自治大臣及び消防関係者が指摘した、①上空の熱気流による危険性②上空の強い上昇気流による危険性③消火剤散布による人体への悪影響についての懸念④投下水量の不足等の課題はいまだ克服されていない。他方、消防飛行艇は消防ヘリコプターと比較して、熱気流及び上昇気流の影響を受けにくく、投下水量を大幅に増加させるとともに多様な放水が可能となる。また環境に配慮した泡消火剤を用いることが可能ならば、人体への影響を考慮せずに済むことになることから、右記の①から④の問題点について克服する可能性があると考えるが、政府の見解如何。

三 阪神・淡路大震災、離島やへき地の林野火災も含めた大規模火災に対して、平成十九年二月に総務省消防庁及び農林水産省林野庁により「広域的な林野火災の発生時における消防活動体制のあり方検討報告書」が取りまとめられているが、大規模火災が発生した時の情報収集・連絡、関係機関の情報共有・連携に関することが主題で、過去に指摘された空中消火の課題克服への検討はなされていない。その報告書提出から、既に五年が経過しており、東日本大震災の教訓も踏まえ、消防飛行艇による空中消火の必要性について、JAXAの飛行シミュレーターを使用するとともに、実機実証試験を実施して検証し、結論を得ることは今後の対策を考える上で有益ではないかと考えるが、政府の見解如何。

四 空中消防に当たっては消火剤の利用が有効である。特に人体と環境に配慮した泡消火剤の使用は重要であると考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。