質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第二三〇号

内閣参質一八〇第二三〇号
  平成二十四年八月十七日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員森まさこ君提出東京電力株式会社による法人への損害賠償に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員森まさこ君提出東京電力株式会社による法人への損害賠償に関する質問に対する答弁書

一について

 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の事故(以下「本件事故」という。)に関し、御指摘の「一括支払の算定期間」については、原子力損害賠償紛争審査会が平成二十三年八月五日に決定した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)及び平成二十四年三月十六日に決定した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第二次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)」(以下「第二次追補」という。)において、営業損害の終期について、「基本的には対象者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが」、「当面は示さず、個別具体的な事情に応じて合理的に判断するものとする。」としており、経済産業省が中間指針及び第二次追補を踏まえ同年七月二十日に公表した「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方」(以下「考え方」という。)及び東京電力が考え方を踏まえ同月二十四日に公表した「避難指示区域の見直しに伴う賠償の実施について(避難指示区域内)」(以下「東京電力賠償基準」という。)において、避難指示区域内における営業損害に係る賠償金の一括支払の対象となる期間(以下「一括支払期間」という。)について、農林業は五年分、その他の業種は三年分としている。一括支払期間と既に賠償金が支払われた営業損害に係る期間を加えると、公共用地の取得に伴う損失補償額の算定において転業に通常必要とする期間のおおむね二倍となる。営業損害に係る賠償金については、東京電力において、東京電力賠償基準等を踏まえ、適切な支払がなされるものと考えており、現時点において、中間指針等を改定する必要はないものと考えている。

二及び三について

 お尋ねの「過剰な退職金」や「法人への慰謝料に相当する損害賠償」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかでないが、本件事故と相当因果関係のある損害については、東京電力により適切な賠償金の支払がなされるものと考える。

四及び五について

 第二次追補においては、「営業損害を被った事業者において、本件事故後の営業・就労(転業・転職や臨時の営業・就労を含む。)によって得られた利益や給与等があれば、これらの営業・就労が本件事故がなければ従前の事業活動に仕向けられていたものである限り、損害額から控除するのが原則と考えられる。」が、本件事故後の「営業・就労によって得られた利益や給与等を一律に全て控除すると、こうした営業・就労をあえて行わない者の損害額は減少しない一方、こうした営業・就労を行うほど賠償される損害額は減少することになる。このため、当該利益や給与等について、一定の期間又は一定の額の範囲を「特別の努力」によるものとして損害額から控除しない等の「合理的かつ柔軟な対応」が必要である。」としているが、資本金の額又は出資の総額が一億円超の法人については、一般的に経営基盤が比較的安定していることから、営業損害に係る賠償金の支払において「特別の努力」を考慮する必要はないものと考えている。なお、東京電力においては、資本金の額又は出資の総額が一億円超の法人であっても、事業実態の詳細を確認するなどした上で、個別の事情に応じて「特別の努力」を考慮して営業損害に係る賠償金の支払を行うかどうかを判断することとしていると承知している。
 また、「特別の努力」については、本件事故後の営業・就労によって得られた利益、給与等を損害額から控除するとの原則とは異なる取扱いをするものであり、その額に上限を設定することについては一定の合理性があると考えている。

六について

 東京電力賠償基準において、「特別の努力」については、迅速な賠償金の支払の観点から、本件事故後の営業・就労によって得られた利益、給与等のうち、平成二十四年三月以降のものについて考慮するものと承知している。