質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第二一一号

内閣参質一八〇第二一一号
  平成二十四年八月十日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員森ゆうこ君外一名提出今国会成立の著作権法の一部を改正する法律における違法ダウンロード刑事罰化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員森ゆうこ君外一名提出今国会成立の著作権法の一部を改正する法律における違法ダウンロード刑事罰化に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の附帯決議については、文部科学省として、広く国民が「違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することの防止の重要性」に対する理解を深め、著作物の適正な利用が図られることを目標に、これまで「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」及び「平成二十四年通常国会 著作権法改正等について」を文化庁ホームページに掲載したほか、平成二十四年七月に、各都道府県教育委員会等に対して事務連絡を発出し、各学校の授業等において「違法ダウンロードの刑事罰化に係るQ&A」を活用することを依頼している。今後は、関係団体が作成した啓発用パンフレットの活用を学校等に促すなど、関係団体との連携協力を図りつつ、「違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することの防止の重要性」についての啓発等に努めてまいりたい。

一の2について

 御指摘の附帯決議の内容については、関係団体に対して「著作権法の一部を改正する法律について(通知)」(平成二十四年六月二十七日付け二十四庁房第九十一号文部科学副大臣通知)を発出する等によりその周知を図ってきたところであり、今後は、関係者の取組状況を把握した上で、必要に応じ、適切な措置を講じてまいりたい。

一の3について

 警察庁において、都道府県警察に対して通達を発出する等して、御指摘の附帯決議の内容、著作権法の一部を改正する法律(平成二十四年法律第四十三号)による改正後の著作権法(以下「新法」という。)第百十九条第三項の規定の趣旨等について周知する予定である。

二の1について

 犯罪の成否は、法と証拠に基づき、個別の事案ごとに適切に判断されるべき事柄であると考えている。

二の2について

 新法第百二十三条第一項の告訴を行う前に警告を行うかどうかは権利者の判断によるものであるが、政府としては、今後とも、御指摘の「改正法Q&A問七―八」の内容について、権利者団体を含め、広く国民への周知を図ってまいりたい。

三の1の①及び②について

 御指摘の「個々人の違法ダウンロード自体は軽微である」とは、具体的な数量を念頭においているものではなく、また、御指摘の「一人あたりの違法ダウンロードの数量」については把握していない。

三の1の③及び④について

 御指摘の「家庭内で行われる行為についての規制の実効性の確保が困難である」とは、家庭内で行われる違法行為を把握し、摘発することは、通常困難であることが多いということであり、また、お尋ねの「「困難である」との状況に変化はあるか」については把握していない。

三の1の⑤について

 御指摘の二つの理由以外に特段の理由はない。

三の2の①について

 御指摘の「無料放送番組、広告付きあるいはプロモーション用などで無料配布されている音楽・映像」の具体的な内容が必ずしも明らかではないが、当該音楽・映像が新法第百十九条第三項に規定する「有償で公衆に提供され、又は提示されているもの」ではない場合には、同項に規定する「有償著作物等」には該当しないものと考える。

三の2の②から④までについて

 新法第三十条第一項に定める私的使用の目的をもって新法第百十九条第三項に規定する「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画」を行った時点で、当該録音又は録画の対象となる著作物又は実演等が同項に規定する「有償著作物等」に該当する場合であって、自らその事実を知りながら当該録音又は録画を行って著作権又は著作隣接権を侵害したときは、刑事罰の対象になるものと考える。

三の3について

 御指摘の「有償で公衆に提供・提示されていたとしても、現在にあっては、有償での入手あるいは聴取の方法がない場合(例えば古いレコードなど)」の具体的な内容が必ずしも明らかではないが、新法第百十九条第三項に規定する「有償で公衆に提供され、又は提示されているもの」ではない場合には、同項に規定する「有償著作物等」には該当しないものと考える。

三の4について

 政府としては、新法第百十九条第三項の規定について、刑罰法規としての内容は明確であり、罪刑法定主義に反するものではないと考えている。

三の5について

 御指摘の「フランス及び韓国における「スリーストライク制」」の導入については、政府としては、現時点において予定していないが、諸外国の状況等を踏まえつつ、今後、必要に応じ、その可否を含めて検討してまいりたい。

三の6について

 お尋ねの「違法アップロード対策」については、政府としては、今後とも、違法アップロードが行われないよう、国民への普及啓発等の充実を図るとともに、違法アップロードに対する取締りや海外における違法アップロードについての関係団体を通じた対策を行ってまいりたい。

三の7について

 政府としては、御指摘の「インターネット利用の委縮効果」が生じないよう、新法第百十九条第三項の趣旨等について、今後とも「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」について広く国民に対して周知するなど、インターネット、広報誌その他の媒体の活用、「著作権セミナー」その他の講習会や研修会の開催等を通じた広報啓発活動を行うとともに、関係団体による広報啓発活動を支援してまいりたい。