質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六六号

内閣参質一八〇第一六六号
  平成二十四年七月六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員佐藤正久君提出シリアの治安情勢に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員佐藤正久君提出シリアの治安情勢に関する再質問に対する答弁書

一について

 シリア・アラブ共和国(以下「シリア」という。)のバッシャール・アサド大統領が、本年六月二十六日(現地時間)の新内閣閣僚宣誓式後の初閣議において、「我々はあらゆる側面において真の戦争状態にある。この言葉が意味することの全ては、我々が戦争状態にあるなら、我々の全ての政策及び意識、全ての部門がこの戦争と戦場における勝利のために向けられなければならない。」と発言したことはシリアの国営放送の発表を通じて承知している。我が国は、これまで累次にわたりシリアにおける全ての暴力を断固として非難し、暴力の行使を即時停止するよう働きかけを行ってきており、当該発言は、こうした我が国の立場に反するものである。また、シリア政府は、アナン国際連合・アラブ連盟共同特使がシリア政府、シリア反体制派及びその他全ての関係者による暴力停止等のために行った六項目の提案を同年三月に受け入れたとされているが、当該発言は、当該提案のうち、特に「居住区内及びその周辺における部隊の展開の即時停止、重火器の使用停止及び軍隊の撤退開始」という項目を遵守する意思がシリア政府にはないことを示していると考えており、したがって、シリアの情勢は、極めて深刻な状況にあると認識している。

二について

 バッシャール・アサド大統領の御指摘の発言以降、シリアの情勢が特段に悪化したとは一概には言えないと考えるが、シリアにおいては、十五か月以上にわたり弾圧と暴力が続いており、連日各地において多数の死傷者が発生していることから、シリアの情勢は極めて深刻な状況にあると認識している。

三について

 政府としては、シリアの情勢について、在ヨルダン日本国大使館内の在シリア日本国大使館臨時事務所等及び国際連合兵力引き離し監視隊(以下「UNDOF」という。)に派遣されている自衛隊部隊(以下「UNDOF派遣部隊」という。)等を通じ、UNDOFを含む国際連合等から情報収集を行っている。ダマスカス市内における死傷者は、他の地域と比較して少ないものの、ダマスカス近郊においては、連日、多数の死傷者が発生していることから、ダマスカス近郊の治安状況は、極めて深刻な状況にあると認識している。

四について

 UNDOF派遣部隊は、これまでUNDOFの活動に必要な日常生活物資等の輸送を行ってきたところであるが、このうちダマスカスとUNDOFの宿営地との間の輸送は、三についてで述べたダマスカス近郊の治安状況等に鑑み、UNDOFの司令官が本年六月下旬に指図の内容を変更したため、UNDOF派遣部隊は行っていない。

五について

 シリアの情勢は極めて深刻な状況にあり、アサド政権の現状は予断を許さない状況にあると考えている。政府としては、引き続き、今後のシリアの情勢を注視していくこととしている。

六について

 UNDOF派遣部隊の業務については、国際連合シリア監視団が活動を休止しているか否かにかかわらず、同部隊の要員の安全に十分配慮して実施すべきことは当然であり、同部隊の部隊長等は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号)第八条第一項の規定により定めた実施要領に従って、同部隊の安全を確保する等所要の措置を講ずることとなる。
 なお、四についてでお答えしたとおり、ダマスカスとUNDOFの宿営地との間の輸送は、現時点では行っていない。

七について

 お尋ねの「PKO派遣の前提」の意味するところが必ずしも明らかではないが、UNDOFについては、先の答弁書(平成二十四年五月二十九日内閣参質一八〇第一二〇号)五についてで述べた我が国として国際連合平和維持隊に参加するに際しての基本的な五つの原則が、現時点においても満たされていると考えている。