質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五二号

内閣参質一八〇第一五二号
  平成二十四年六月二十九日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員田村智子君提出国営土地改良事業による地形改変により悪化した中海の水質浄化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員田村智子君提出国営土地改良事業による地形改変により悪化した中海の水質浄化に関する質問に対する答弁書

一について

 鳥取県及び島根県の調査によれば、国営中海土地改良事業(以下「本事業」という。)に係る大海崎堤及び森山堤の締切り並びに農用地の造成のためのしゅんせつ、人工護岸の整備等の事業の実施後において、中海の化学的酸素要求量、全窒素及び全りんの数値が著しく上昇したとは認められない。また、湖沼水質保全特別措置法(昭和五十九年法律第六十一号。以下「湖沼法」という。)第四条第一項の規定に基づき、平成二十二年三月に鳥取県知事及び島根県知事が策定した中海に係る湖沼水質保全計画(以下「湖沼計画」という。)によれば、中海の水質悪化の原因として、湖底に蓄積した汚濁物質の溶出や、それに伴うプランクトンの発生等が考えられるものの、未解明の部分も多い。

二について

 御指摘の「中海の水質浄化のための事業」については、その意味するところが必ずしも明らかではないが、本事業に係る中浦水門の撤去、堤防開削及び本庄排水機場の撤去に係る平成二十三年度末までの事業費の総額は、それぞれ約六十億円、約二十九億円及び約四億円である。なお、これらの事業は、本庄工区の干陸並びに宍道湖及び中海の淡水化の中止のために必要な措置として実施したものであり、これらの事業の水質浄化に係る効果についてお答えすることは困難である。
 御指摘の事業のうち、「浅場の再生」、「浚渫窪地の埋戻し」及び「ヘドロの除去」については、その意味するところが必ずしも明らかではないが、国が河川管理者として実施した浅場整備及び覆砂、くぼ地覆砂並びに底泥しゅんせつに係る平成二十三年度末までの事業費の総額は、それぞれ約七十億円、約二十八億円及び約二百億円である。また、浅場整備及び覆砂については、施工した箇所のモニタリング調査を継続して実施しているところであり、くぼ地覆砂及び底泥しゅんせつについては、溶出実験の結果に基づき、底泥からの全窒素及び全りんの溶出量が低減したものと推定している。

三について

 中海の水質については、森山堤の内側の本庄工区の地点も含め、鳥取県及び島根県において定期的に測定し、その結果を公表しているものと承知している。

四及び五について

 中海の水質保全については、湖沼法第三条第一項の規定に基づき環境大臣が中海を指定湖沼に指定するとともに、国、鳥取県、島根県等が連携して、湖沼計画に基づき、下水道、農業集落排水施設及び浄化槽の整備、浅場及び藻場の造成、覆砂等の事業を推進するとともに、水質の監視及び調査、住民の理解と協力による水質保全活動の推進等の措置を講じているところである。
 また、国土交通省中国地方整備局、農林水産省中国四国農政局、鳥取県、島根県、関係市等の各行政機関が共同して平成二十二年四月に「中海会議」を設置し、同会議において、中海の堤防、護岸等の整備、水質及び利活用に関すること等について、当該各行政機関が地域の漁業者等の意見を踏まえつつ、検討及び協議を行っているところである。

六について

 御指摘の「大海崎堤防」については、国有財産ではないことを踏まえると、政府としては、その開削について判断する立場にない。
 御指摘の「窪地の埋戻し」及び「本庄水域の底に造られた道の跡(でこぼこ)の改善」については、その意味するところが必ずしも明らかではないが、本事業で行ったしゅんせつは河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第九十五条の規定に基づく協議を行った上で適正に実施したものである。なお、島根県水産技術センターによれば、中海における貧酸素水塊の根本的な原因は、富栄養化による底質の悪化である。
 御指摘の「浅場の造成」については、その意味するところが必ずしも明らかではないが、国が河川管理者として実施する浅場整備及び覆砂については、同法第十六条の二第一項の規定に基づく斐伊川水系河川整備計画及び湖沼計画に基づき、引き続き、必要な取組を進めることとしている。