質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四四号

内閣参質一八〇第一四四号
  平成二十四年六月二十二日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員川田龍平君提出国際的基準に基づく安全設備がない状況下での原発の再稼働問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出国際的基準に基づく安全設備がない状況下での原発の再稼働問題に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「スウェーデン国防軍研究所が中心となって二〇〇二年にまとめた報告書」については、その存在を承知していなかったところであるが、「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」(平成四年五月二十八日原子力安全委員会決定)においては、「スウェーデンではシビアアクシデントに関する基本方針が、千九百八十年から千九百八十一年に政府から出された。その中では、土地汚染を生じるような大量の放射性物質放出の可能性は小さいが、これをさらに低減するため、その手段としてフィルター付格納容器ベント設備の設置が要求され、すべてのプラントに設置済みである。なお、具体的な設計では、大規模土地汚染と急性死亡の発生防止の観点から、放出FPを千八百メガワットの原子炉の炉心インベントリの〇・一パーセント以内に抑えることが要求されている。」と記述している。

二について

 炉心損傷に至るような事故に際して、フィルター付きのベント設備が設置され機能した場合、ベントに係る放射性物質の大気中への放出が低減されるものと考えられるが、東京電力株式会社の福島第一原子力発電所の事象の進展においては、電源喪失により照明が無くなったこと、現場の線量が上昇したこと、ベント弁の開閉に用いる圧縮空気の系統で漏えいしたこと等、複数の要因が相互に関係したことにより、ベント弁の操作そのものが円滑に行われなかったと推定されることから、仮に、福島第一原子力発電所にフィルター付きのベント設備が設置されていたとしても、当該設備がどの程度機能し、それによりどの程度放射性物質の大気中への放出が低減されたかについては確定的に述べることはできないと考えている。

三について

 国内の実用発電用原子炉については、フィルター付きのベント設備は設置されていないが、経済産業省原子力安全・保安院において、平成二十四年三月二十八日に、今後の規制に反映すべきと考えられる三十項目の安全対策を取りまとめており、その一つとしてフィルター付きのベント設備の設置を挙げている。
 また、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)において、大飯発電所第三号機及び第四号機(以下「大飯三・四号機」という。)における更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画を取りまとめ、その中で、安全性を不断に高めていくという観点から、フィルター付きのベント設備の設置を予定していると承知している。

四について

 平成二十四年四月六日に原子力発電所に関する四大臣会合において取りまとめた「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」(以下「判断基準」という。)は、この一年間に政府として積み重ねてきた対策や知見を整理したものであり、判断基準において示された基準(三)においては、フィルター付きのベント設備の設置等、更なる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が明らかにされていることを求めている。細野内閣府特命担当大臣の発言は、こうした更なる安全性・信頼性向上のための対策を着実に実施することや、今後、新たな知見が得られれば、その都度、原子力発電所の安全対策に反映することなどを述べたものであり、「虚偽の事実を述べながら国民を欺く歴史的な発言」との御指摘は当たらないと考えている。

五及び六について

 判断基準において示された基準(一)及び基準(二)を満たすことが確認できた原子炉については、福島第一原子力発電所の事故を引き起こしたものと同程度の地震や津波が来襲しても、炉心を管理された状態で維持し冷温停止の状態につなげることができる対策がとられていることとなる。また、基準(三)においては、フィルター付きのベント設備の設置等、更なる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が事業者により明らかにされていること、今後新たに設置することを目指している原子力規制組織が打ち出す規制への迅速な対応に加え、事業者自らが安全確保のために必要な措置を見いだし、これを不断に実施していくという事業姿勢が明確化されていることについて確認することとしている。関西電力の大飯三・四号機については、これに基づき、平成二十四年四月十三日に、地震・津波による全電源喪失という事象の進展を防止するための安全対策が既に講じられていることや、関西電力が更なる安全性・信頼性向上のための実施計画を明らかにしていること等について確認した上で、電力需給の見通しや燃料費の増加の影響も含めて検証し、総合的に運転再開の必要性について判断したところである。