質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三九号

内閣参質一八〇第一三九号
  平成二十四年六月十九日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 岡田 克也   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員藤井基之君提出薬学教育の質の確保等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤井基之君提出薬学教育の質の確保等に関する質問に対する答弁書

一について

 大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)第三十二条第三項に規定する「薬学に関する学科のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするもの」(以下「薬学六年学科」という。)の設置については、まず、設置者による設置認可の申請等が必要とされているため、政府として、お尋ねの「新増設に関する見通し」をお示しすることは困難であるが、現在のところ、設置認可の申請等を受け、設置のための手続が行われているものはない。

二について

 薬学六年学科の学生の質の確保のためには、入学者の質の確保や教育の質の向上等が重要であると考えており、現在、文部科学省の「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」において、入学定員充足率、進級率、薬学実務実習の修了率等が低く、質の高い入学者の確保や体系的な教育の実施に問題があることが懸念される薬学六年学科が設置された大学に対し、当該大学における入学者選抜や教育の状況の調査等を行っているところであり、当該調査の結果も踏まえ、薬学六年学科を設置する大学に対して入学者の質の確保や教育の質の向上等を促してまいりたい。

三について

 薬学六年学科以外の薬学に関する学科における退学者の数については把握していないが、薬学六年学科については、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)等の改正により薬学六年学科が最初に設置された平成十八年度の入学者のうち、修業年限である六年後の平成二十三年度に卒業した者の数等を把握することを目的に薬学六年学科が設置された全国の大学に対して文部科学省が行った調査によると、平成十八年度の入学者のうち、平成二十三年度に卒業した者は八千五百九十人、卒業していない者は三千二百六十三人であり、そのうち、退学又は転学したと判明している者は四百七十八人である。

四について

 薬学六年学科について、社会からの要請に応えた医療の担い手としての薬剤師の養成のための教育が行われるよう第三者による十分な検証と適正な評価を行うため、薬学教育の関係者が、職能団体や企業関係者等の参画を得て、平成二十年に一般社団法人薬学教育評価機構を設立し、平成二十四年度から薬学六年学科における薬学教育の評価を実施しているものと承知している。また、政府としては、同機構が公正かつ適正な評価を行うための基準である「薬学教育(六年制)第三者評価評価基準」を策定するに当たっての助言等を行っている。

五について

 政府としても、薬学に関する実務の経験を有する専任教員(以下「実務家教員」という。)の知識・技能を維持することは重要であると認識しており、平成十八年度より毎年度「薬学教育指導者のためのワークショップ」を開催し、実務家教員を含む薬学に関する教員が直面する具体的な課題やその解決のための方策について議論する等の機会を設けているほか、平成二十二年度に文部科学省が薬学教育における現状と課題に関する調査研究のために実施した「大学における医療人養成推進等委託事業」において実務家教員の在り方やその資質向上のための大学における研修等の在り方を検討し、その成果や各大学における取組の例を各大学に周知している。

六について

 御指摘の「実務実習にかかる費用に対しても非課税にすべき」が具体的に何を意味するのか必ずしも明らかでなく、また、大学における薬学実務実習に係る費用は、実習施設ごとに異なり、その徴収の方法も大学ごとに様々であるため一概にお答えするのは困難であるが、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)別表第一第十一号に掲げられている教育に関する役務の提供を始めとする政策的な理由により非課税とされる資産の譲渡等の範囲は、消費一般に対して広く公平に負担を求めるという消費税の性格等に鑑み、最終消費者に対するサービスの提供等の一部に限定されているところであり、これを外部に委託する取引には課税することとされている。大学が薬学実務実習の実施を外部委託した場合に当該委託取引を非課税とすることは、こうした消費税に関する基本的な考え方や、他の事業者が非課税とされるサービスの提供等を外部委託した場合とのバランス等に鑑み、適当でないと考えている。

七について

 第九十七回薬剤師国家試験は、薬学六年学科を卒業した者が受験した最初の薬剤師国家試験であり、その合格率については、御指摘の平成二十二年九月三十日に策定された薬剤師国家試験出題基準が適用されたことのほかにも、薬学六年学科における教育の成果等様々な要因が影響していると考えられるため、お尋ねの「見解」を一概にお示しすることは困難である。