質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三四号

内閣参質一八〇第一三四号
  平成二十四年六月十五日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員加藤修一君提出原木シイタケの復興対策の促進に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出原木シイタケの復興対策の促進に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成二十四年度における特用林産施設等体制整備事業については、平成二十四年三月十六日から同月二十一日までの間に十一県から事業実施の要望が出され、当該要望に対し、同年四月六日の平成二十四年度予算成立後である同月十三日付けで補助金の配分予定額を示し、同月十四日から同年五月二十八日までの間にこのうち四県から交付申請が出され、当該申請に対し、同年六月七日付けで交付決定を行ったところである。農林水産省としては、このように、速やかに事務を実施していると認識しており、「執行が遅れている」との御指摘は当たらないものと考えている。

一の2について

 特用林産施設等体制整備事業においては、当該事業によって整備される施設が個人の私有財産の形成に資することのないよう、受益範囲を原則五戸以上とする採択基準を設けているものであるが、地域の実情に即し必要と認められる場合は、受益範囲を三戸以上とすることとしている。

二について

 消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省及び農林水産省が連携して、消費者をはじめとして流通業者、小売業者等を対象として、食品中の放射性物質への対策に関する説明会を、平成二十四年四月以降六回にわたり開催し、食品中の放射性物質に関する基準値(「食品、添加物等の規格基準」(昭和三十四年厚生省告示第三百七十号)及び「厚生労働大臣が定める放射性物質」(平成二十四年厚生労働省告示第百二十九号)に規定する放射性セシウムの値であって、当該値を超えて食品に含有してはならないとされているものをいう。以下同じ。)の設定の考え方、食品中の放射性物質の検査の方法、生産現場での対応方法等について説明してきたところである。今後とも、しいたけの取引の現状を十分把握しつつ、引き続きこのような説明を行っていく考えである。

三の1について

 原木しいたけについて、出荷を差し控えるよう関係事業者等に要請することを内容とする原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二十条第三項に基づく原子力災害対策本部長による関係県知事に対する指示(以下「出荷制限指示」という。)の対象となった市町村の数は、平成二十四年六月十一日現在で六県九十四市町村である。御指摘の「賠償交渉が未着手」の意味するところが必ずしも明らかではないが、これらの市町村においては、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の事故(以下「本件原発事故」という。)による損害の賠償に関し、少なくとも、東京電力によるしいたけの生産者若しくは生産者団体(以下「生産者等」という。)を対象とした説明会又は両者の間の打合せは行われているものと承知している。

三の2について

 「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(平成二十三年八月五日原子力損害賠償紛争審査会決定。以下「中間指針」という。)では、しいたけを含む農林産物(茶及び畜産物を除き、食用に限る。)のうち、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県及び埼玉県の各県において産出されたものについては、本件原発事故以降に現実に生じた買い控え等による被害をいわゆる風評被害として、原則として賠償すべき損害とされている。また、これ以外の本件原発事故以降に現実に生じた買い控え等による被害であっても、具体的な買い控え等の発生状況等を検証し、出荷制限指示の内容等を考慮して、本件原発事故と相当因果関係が認められる場合は、賠償の対象とされている。

三の3について

 中間指針では、お尋ねの「シイタケの観光及び体験農園等」を含む観光業については、営業の拠点が福島県、茨城県、栃木県及び群馬県のいずれかの県にある場合に、本件原発事故以降に解約、予約控え等により生じた減収等、又は外国人観光客に関して、我が国に営業の拠点がある場合に、本件原発事故前に予約が既に入っており、かつ、少なくとも平成二十三年五月末までに通常の解約率を上回る解約が行われたことにより生じた減収等をいわゆる風評被害として、原則として賠償すべき損害とされている。また、これ以外の本件原発事故以降に現実に生じた解約、予約控え等により生じた減収等であっても、本件原発事故と相当因果関係が認められる場合は、賠償の対象とされている。

三の4について

 農林水産省においては、本件原発事故による損害の賠償に関し、これまでも、東京電力としいたけの生産者等との間の打合せに林野庁担当職員を派遣するなど、賠償の請求に関する手続が円滑に行われるよう努めてきたところである。今後とも、当該手続が円滑に行われるよう、このような取組を行っていく考えである。

四の1について

 平成二十三年におけるしいたけ原木一本当たりの価格は、現在集計中である。

四の2について

 農林水産省においては、平成二十五年度における原木しいたけの円滑な生産を確保するため、しいたけ原木の供給可能量を調査するとともに、需給に関する情報を共有する体制を構築するなど、しいたけ原木の供給量を増加させる取組を支援している。また、本件原発事故の後のしいたけ原木の購入費用が本件原発事故の前のしいたけ原木の購入費用を上回る場合にその差額の二分の一以内を補助するなど、しいたけ原木の購入に対する支援を行っているところである。

四の3について

 農林水産省においては、きのこ原木について、「きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値の設定について」(平成二十三年十月六日付け二三生産第四七四三号・二三林政経第二一三号農林水産省生産局農産部園芸作物課長、林野庁林政部経営課長及び同部木材産業課長連名通知)において、きのこ原木及びほだ木に含有される放射性セシウムの値であって、きのこ原木及びほだ木をきのこ生産に使用する場合に、そのきのこから検出される放射性セシウムの値が食品中の放射性物質に関する基準値を超過しないと考えられる当面の目安として取り扱うこととするものを「当面の指標値」として設定している。平成二十四年三月の当該指標値の見直しに当たっては、学識経験者の助言を受けながら、同月までに得られたきのこ及びほだ木の放射性セシウム濃度の測定結果を基に分析を行い、一キログラム当たり五十ベクレル以下という値を定めたものである。その後も、学識経験者の助言を受けながら、きのこ及びほだ木の放射性セシウム濃度の測定を継続して行っており、その結果を基に分析を行い、同年夏頃を目途に当該指標値を見直すこととしている。