質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第八三号

内閣参質一八〇第八三号
  平成二十四年四月二十日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員川田龍平君提出放射性物質による汚染瓦礫の焼却処理等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出放射性物質による汚染瓦礫の焼却処理等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 事故由来放射性物質(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「特措法」という。)第一条に規定する事故由来放射性物質をいう。以下同じ。)により汚染された災害廃棄物の処分方法については、災害廃棄物をそのまま最終処分場に埋め立てる方法や屋外に設けたテント内に保管する方法についても検討を行った。その結果、災害廃棄物をそのまま最終処分場に埋め立てる方法については、埋立てを行う災害廃棄物に含まれる事故由来放射性物質であるセシウム一三四及びセシウム一三七(以下「放射性セシウム」という。)について、それらの放射能濃度の合計(以下「放射性セシウム濃度」という。)が一キログラム当たり八千ベクレル以下であれば、当該埋立作業に伴う作業者の被ばく線量は年間一ミリシーベルトを下回るとの結果を得たところである。また、屋外に設けたテント内に保管する方法については、災害廃棄物に含まれる放射性セシウム濃度に応じ、保管場所から適切な距離を確保することにより、周辺に居住する者の被ばく線量は年間一ミリシーベルトを下回るとの結果を得たところである。いずれの方法においても災害廃棄物を安全に処理することが可能であり、事故由来放射性物質により汚染された災害廃棄物を処理する各地方公共団体等において、その災害廃棄物の性状等に応じて適切な処理方法を採用することが可能である。

一の2について

 災害廃棄物安全評価検討会においては、事故由来放射性物質により汚染された災害廃棄物について、「一般廃棄物焼却施設の廃ガス処理装置におけるCs、Srの除去挙動」に加え、「放射能を帯びた災害廃棄物の処理に関する検討」、「災害廃棄物の放射能濃度の推定方法について」、「福島県の浜通り及び中通り地方(避難区域及び計画的避難区域を除く)の災害廃棄物の処理・処分における放射性物質による影響の評価について」及び「焼却炉周辺及び煙道排ガス調査結果」等を総合的に勘案して焼却の安全性を評価したものである。

一の3について

 お尋ねの事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の焼却処理については、第一回から第三回までの災害廃棄物安全評価検討会において検討を行い、十分な能力を有する排ガス処理装置が設置されている施設で焼却処理が行われる場合には、安全に処理を行うことが可能との評価を得たところである。また、同検討会の委員については、放射能分野の観点に加え、環境、廃棄物処理の観点からも検討する必要があることから、これらの分野の専門家の中から選定したところである。
 同検討会の検討過程については、議事要旨及び会議資料を公表することにより、公開しているところである。さらに、同検討会終了後に、毎回報道機関に対し議事内容について説明を行っている。なお、第一回から第四回までの同検討会の議事録は公表している。また、第五回から第七回まで及び第十二回の同検討会については、同検討会の内容を録音した電磁的記録が保存されていることから、議事録を作成して公表する予定である。さらに、今後は同検討会を公開した上で、議事録も公表することとしている。

一の4について

 環境省が、バグフィルターを設置している福島県福島市に所在するあらかわクリーンセンターの焼却施設において実施した放射性セシウムを含む廃棄物を焼却した際の集じん器に流入する燃焼ガス中及び排ガス中の放射性セシウム濃度の測定結果については、先の答弁書(平成二十四年三月二日内閣参質一八○第三六号)三についてでお答えしたとおりである。
 また、同センターにおいてバグフィルターにより除去された飛灰及び焼却灰の放射性セシウム濃度は、それぞれ一キログラム当たり四万三千九百ベクレル及び一キログラム当たり五千九百五十ベクレルであった。
 さらに、同省においては、地方公共団体等が実施した一般廃棄物の焼却施設や産業廃棄物の焼却施設における排ガス中の放射性セシウム濃度の測定結果を取りまとめたところであるが、この結果によれば、ほとんどの施設で不検出であり、検出された事例でも、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則(平成二十三年環境省令第三十三号。以下「施行規則」という。)第三十三条等に定める事業場周辺の大気中の事故由来放射性物質についての濃度限度(以下「大気中の濃度限度」という。)を大幅に下回っていることを確認している。
 以上のことから、バグフィルター等の十分な能力を有する排ガス処理装置を有する焼却施設においては、事故由来放射性物質により汚染された災害廃棄物を安全に焼却することが可能であると考えている。

一の5について

 東日本大震災により生じた災害廃棄物中の石綿については、環境省から関係都道県に対し、「廃石綿やPCB廃棄物が混入した災害廃棄物について」(平成二十三年三月十九日付け環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課事務連絡)により処理方法を示したところであり、関係する地方公共団体において分別が行われているものと考えている。
 また、災害廃棄物中のポリ塩化ビニルについては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)第四条第一項に適合する焼却施設において、同規則第四条の五第一項に定める基準に従い維持管理を行うことにより、安全に焼却することが可能であると考えている。

二について

 環境省が、平成二十三年七月十四日にあらかわクリーンセンターにおいて事故由来放射性物質により汚染された災害廃棄物及びそれ以外の一般廃棄物を混合して焼却した際の排ガス、バグフィルターにより除去された飛灰及び焼却灰の放射性セシウム濃度の調査を行ったところ、それぞれの放射性セシウム濃度は、不検出、一キログラム当たり七万三千ベクレル及び一キログラム当たり二万八百ベクレルであった。
 なお、この調査においては、焼却施設周辺の大気中の放射性セシウム濃度は測定していないが、排ガスの放射性セシウム濃度は大気中の濃度限度を十分に下回っていた。
 さらに、同省は、先の答弁書(平成二十四年三月二日内閣参質一八○第三六号)三についてでお答えしたバグフィルターを設置している同センターの焼却施設における放射性セシウムの除去率の調査に加え、電気集じん器を設置している焼却施設である福島県須賀川市に所在する須賀川地方保健環境組合及び同県伊達市に所在する伊達地方衛生処理組合において放射性セシウムの除去率の調査を行っており、九十六・六パーセント以上との結果を得たところである。
 なお、お尋ねの報告書等については、承知していない。

三について

 セシウムは土壌に吸着されやすい性質を有していることから、埋め立てた廃棄物が雨水等に接触しセシウムが溶出した場合においても、溶出したセシウムを土壌に吸着させることにより、汚染の拡大を防止することが可能であると認識している。こうした観点から、施行規則においては、特定廃棄物(特措法第二十条に規定する特定廃棄物をいう。)等の埋立ては、五十センチメートル以上の土壌の層が敷設された場所において行うこととしている。

四について

 事故由来放射性物質である放射性セシウムにより汚染された災害廃棄物のうち、放射性セシウム濃度が一キログラム当たり八千ベクレル以下のものについては、先の答弁書(平成二十四年二月十七日内閣参質一八〇第二〇号)二についてでお答えした評価において、埋立作業に伴う作業者及び周辺住民の被ばく線量は年間一ミリシーベルトを下回るとの結果を、また、最終処分場の周辺住民の埋立て終了後の被ばく線量は年間十マイクロシーベルトを下回るとの結果を得ており、安全性を確認している。当該災害廃棄物については、特措法第二十二条の規定に基づき、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)の規定が適用されるため、原則として一般廃棄物の最終処分場に埋立てを行うこととなる。
 原子力発電所の解体によって発生する廃棄物については、放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方(昭和六十三年三月十七日原子力安全委員会決定)に示されているように、処理に伴い周辺住民が受ける被ばく線量は年間一ミリシーベルト以下となるよう、また、埋設終了後の被ばく線量は年間十マイクロシーベルト以下となるよう規制している。核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第六十一条の二の規定に基づき、その物に含まれる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして、セシウム一三四又はセシウム一三七のみの場合については一グラム当たり〇・一ベクレルとする基準以下であれば、廃棄物処理法等の適用については、核燃料物質によって汚染された物でないものとして取り扱うこととなり、再生利用も可能となる。また、当該基準を超えれば、原子炉等規制法第五十一条の六に基づき、廃棄物埋設に関する確認を受けることとなる。
 事故由来放射性物質である放射性セシウムにより汚染された災害廃棄物及び原子力発電所の解体によって発生する廃棄物の処理に関する基準については、いずれも、処理に伴い周辺住民が受ける被ばく線量が年間一ミリシーベルトを下回ること等となるよう設定したものである。

五の1及び2について

 放射性物質による大気の汚染等の防止のための措置については、従来、環境基本法(平成五年法律第九十一号)においては、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)その他の関係法律で定めるところによるとされており、原子炉等規制法に基づく製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制並びに放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)に基づく放射性同位元素及び放射線発生装置並びに放射性汚染物の取扱いに関する規制等の措置を講じてきたところである。さらに、事故由来放射性物質による環境の汚染に対処するため、特措法が制定され、現在、特措法に基づく取組を進めているところである。
 また、今国会に提出した原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(以下「法律案」という。)においては、環境基本法第十三条の規定を削除とすること等としている。
 政府としては、特措法附則第五条及び第六条に基づき、今後、特措法の施行後に得られた知見等も踏まえつつ、大気の汚染等の防止のための措置について、具体的な対応を検討することとしている。

五の3について

 お尋ねの放射性廃棄物が、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年通商産業省令第七十七号)等に規定する核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物で廃棄しようとするものを意味するのであれば、当該放射性廃棄物は一般廃棄物の焼却施設で処理することとはされていない。
 お尋ねの放射性廃棄物が、事故由来放射性物質により汚染された廃棄物を意味するのであれば、当該廃棄物が一般廃棄物の焼却施設で処理される際の規制等について、御指摘の項目ごとに示すと、それぞれ次のとおりである。
①「一般廃棄物焼却施設で受入れ可能な廃棄物の放射性物質の基準」については、存在しない。
②「焼却施設の排気筒における放射性物質の基準」及び③「焼却施設の敷地境界における放射性物質の基準」については、施行規則第三十三条の規定により、特定一般廃棄物処理施設(特措法第二十四条に規定する特定一般廃棄物処理施設をいう。)の設置者等は、処分に伴い生じた排ガスの排出口において、当該排ガス中の事故由来放射性物質の濃度を監視することにより、当該施設の周辺の大気中の濃度限度を超えないようにすることとされており、また、当該施設の敷地の境界における放射線の量を七日に一回以上測定し、かつ、記録することとされている。
④「清掃従事者を放射性物質から守るための基準」については、電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号)第三条等の規定により、放射性物質(放射性セシウムの場合はその濃度が一グラム当たり十ベクレルを超えるものに限る。)又はそれに汚染されたものを取り扱う業務を行う事業の事業者は、実効線量が三月間につき一・三ミリシーベルトを超えるおそれのある区域、又は放射性物質の表面密度が表面汚染に関する限度の十分の一を超えるおそれのある区域を管理区域として明示し、管理区域内における被ばく線量を測定した上で、その実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないように管理しなければならないこと等とされている。
⑤「焼却施設内の設備における放射線の管理基準」については、存在しない。
⑥「焼却灰や汚泥などを埋立処理する際の放射性物質の基準」については、施行規則第三十三条の規定により、特定一般廃棄物処理施設に該当する最終処分場の設置者等は、最終処分場の管理期間中、最終処分場からの放流水及び最終処分場の周縁の地下水の事故由来放射性物質の濃度並びに最終処分場の敷地の境界における放射線の量の測定等を行うこととされている。
⑦「焼却灰や汚泥など再利用する場合の放射性物質の基準」については、存在しない。
⑧「清掃従事者の放射線防護や放射線に関する知識・教育に関する法制度」については、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第三十五条の規定により、事業者は、取り扱う原材料等の有害性を含む、労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行わなければならないとされている。
 なお、これらのうち、現存する規制等に関しては、現時点では見直す予定はないが、今後、必要に応じて見直しを検討することとしている。

六について

 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物を埋め立てた最終処分場の維持管理については、施行規則において、排水口における放流水中の事故由来放射性物質の濃度の監視等必要な措置を講ずることとされているところである。また、最終処分場を廃止した後の管理や跡地利用については、今後、その在り方を検討してまいりたい。