質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第二〇号

内閣参質一八〇第二〇号
  平成二十四年二月十七日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員川田龍平君提出放射性物質の拡散対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出放射性物質の拡散対策に関する質問に対する答弁書

一について

 農林水産省において、平成二十三年十一月二十五日から平成二十四年一月三十一日にかけて、福島県を含む十六都県のスギ林百八十二か所で、スギの雄花に含まれるセシウム一三四及びセシウム一三七(以下「放射性セシウム」という。)について、それらの放射能濃度の合計(以下「放射性セシウム濃度」という。)を調査したところ、最高値として一キログラム当たり二十五万三千ベクレルとの結果を得たところである。また、当該調査箇所のうち四か所で、スギの雄花及びその内部の花粉に含まれる放射性セシウム濃度を調査したところ、それぞれの放射性セシウム濃度はおおむね同程度であるとの結果を得たところである。さらに、これらの結果を基に、人がスギの花粉を吸入した場合に想定される内部被ばく線量を、一定の条件の下で試算したところ、最高値として毎時○・○○○一九二マイクロシーベルトとの結果を得たところであり、これらについては、同年二月八日に既に公表したところである。なお、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「法」という。)第七条に基づき策定した基本方針(平成二十三年十一月十一日閣議決定)において、「追加被ばく線量が年間二十ミリシーベルト未満である地域」における土壌等の除染等の措置に係る長期的な目標として、国際放射線防護委員会(以下「ICRP」という。)の勧告等を踏まえて目指すこととしている追加被ばく線量の上限値である年間一ミリシーベルトを一時間当たりの空間線量率に換算した値は、毎時○・二三マイクロシーベルトである。
 政府としては、引き続き、花粉の飛散状況、環境中の放射線量等を監視し、情報提供してまいりたい。

二について

 環境省においては、ICRPの勧告等の考え方に従って平成二十三年六月三日に原子力安全委員会が示した「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」を踏まえ、一定の条件の下で、放射性物質に汚染された廃棄物の処理の安全性に関する評価を行った。その結果、分別、焼却、埋立て等の処理の各工程の中で、法第一条に規定する事故由来放射性物質により被ばくする可能性が最も高い経路である、一辺二百メートル、深さ十メートルの最終処分場で、作業者が一日八時間、年間二百五十日の労働時間のうち半分を当該最終処分場内で重機を使用して埋立作業を行うとの条件の下であっても、埋立てを行う廃棄物に含まれる放射性セシウム濃度が一キログラム当たり八千ベクレル以下であれば、当該埋立作業に伴う作業者の被ばく線量は年間一ミリシーベルトを下回るとの結果を得たところである。また、当該最終処分場の周辺住民の埋立て終了後の被ばく線量は年間十マイクロシーベルトを下回るとの結果を得たところである。
 お尋ねの「クリアランスレベル」については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十一条の二第一項の規定に基づき、原子力事業者等が、工場等において用いた資材その他の物が再生利用される場合を含め、これらの物に含まれる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして定められた基準であり、今後も当該資材その他の物に適用されるものと考えている。
 お尋ねの埋立処分の安全性については、法第二十四条第一項等に規定する特定一般廃棄物処理施設等に該当する最終処分場(以下単に「最終処分場」という。)の設置者等は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則(平成二十三年環境省令第三十三号)第三十三条第二号等の規定により、最終処分場の管理期間中、最終処分場からの放流水及び最終処分場の周縁の地下水について、法第一条に規定する事故由来放射性物質の濃度の測定等及び最終処分場の敷地の境界における放射線の量の測定等を行うこととされている。政府としては、その結果の公表については、最終処分場の設置者等において適切に判断されるものと考えているが、埋立処分終了後の長期的な安全性を確保するための方策については、今後検討してまいりたい。

三について

 廃棄物の焼却施設においては、バグフィルター等の集じん器に流入する燃焼ガスについては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)第四条の五第一項等の規定により、おおむね摂氏二百度以下に冷却することとされている。したがって、集じん器に流入する燃焼ガスに含まれる放射性セシウムは、そのほとんどが気体の状態では存在せず、ばいじんに凝集して吸着しており、集じん器によりばいじんと共に捕捉されるものと考えている。
 なお、環境省において、福島県内のバグフィルターを設置している焼却施設で、放射性セシウムを含む廃棄物を焼却した際の集じん器に流入する燃焼ガス及び排ガス中の放射性セシウム濃度の調査を行ったところ、排ガス処理設備における放射性セシウムの除去率が九十九・九パーセント以上であるとの結果を得たところである。