質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一七五号

放射性物質の拡散防止対策及び原発の安全設備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年七月五日

川田 龍平   


       参議院議長 平田 健二 殿



   放射性物質の拡散防止対策及び原発の安全設備に関する質問主意書

 放射性物質の拡散防止対策及び原発の安全設備について、以下質問する。

一 先に私が提出した「放射性物質の拡散防止対策に関する質問主意書」(第百八十回国会質問第七八号)に対する答弁書(内閣参質一八〇第七八号)の「一、三及び四について」において、政府は、「受入団体においては、当該受入団体において発生した一般廃棄物と被災地から受け入れた災害廃棄物とを混合して、一般廃棄物の(中略)御指摘の「一般ごみとの混合による焼却」は、国際原子力機関(IAEA)が平成十六年八月に出版した「規制除外、規制免除及びクリアランスの概念の適用」(以下「IAEA指針」という。)に記述がある「希釈」には当たら」ないとしている。しかしながら、通常の日本語の概念で考えるならば、まさにこれこそが希釈であるとしか考えられない。
 よって、政府が希釈と考える具体的事象と本件との相違を明らかにされたい。

二 前記一における答弁書の「六について」において、「放射性セシウム濃度が当該当面の指標値を超える薪及び超えない薪を結束又はこん包して組み合わせた薪(以下「組み合わせた薪」という。)については、ロットごとに薪の放射性セシウム濃度及び重量を管理し、(中略)組み合わせた薪について再度、検査を行い、放射性セシウム濃度が当該当面の指標値以下となることが確認できる場合には、組み合わせた薪が生産された都道府県内に限り流通させることは構わない趣旨であることを示したところである。」とあるが、なぜ当該薪の流通は同一都道府県内に限られるのか、また、なぜ同一都道府県内であれば、無条件に許されるのか、その理由を示されたい。
 また、答弁書の当該記述は、指標値を超える薪も含めて結束し、意図的にロットとしての放射性セシウム濃度の希釈を図っていることに異ならない事実の露見と思料するが、この点について、政府はどのように考えるか。

三 先に私が提出した「国際的基準に基づく安全設備がない状況下での原発の再稼働問題に関する質問主意書」(第百八十回国会質問第一四四号)に対する答弁書(内閣参質一八〇第一四四号)の「一について」において、「スウェーデンではシビアアクシデントに関する基本方針が、千九百八十年から千九百八十一年に政府から出された」とある。すなわち、これは一九八六年のチェルノブイリ事故前である。そして、そこには「フィルター付格納容器ベント設備の設置が要求され、すべてのプラントに設置済み」と明記されている。この点に関して、ヨーロッパにおいてはチェルノブイリ事故前から設置を求められていた安全設備を、日本では当該事故後も政府が各電力会社に設置を求めなかったことは、いかなる理由からなのか。また、依然として当該安全設備がない状況で今後三年近く大飯原発を再稼働させることは、チェルノブイリの教訓、福島の教訓に学ばない日本政府の態度を世界に示すに等しい。このような国民の生命を軽視する政府に対し、国際的な信頼が得られると政府は本気で考えているのか。この点に関する政府の見解を明らかにされたい。

四 前記三における答弁書の「二について」は、シビアアクシデント用のフィルターが設置されていても、シビアアクシデント時に有効な働きができたかどうか分からないとの趣旨によるものといえる。しかしながら、シビアアクシデント用フィルターは、シビアアクシデント時に予想されるあらゆる過酷な状況においても、稼働運用されるように設計設置されるのは当然である。政府は電源喪失により、シビアアクシデント用フィルターが機能しないがごとき詭弁を弄するが、シビアアクシデント用フィルターが手動式として動作し得ることも世界的常識である。よって、このような答弁は全く的外れであり、日本政府の原子力発電設備に対する無知ぶりを見事に露見した歴史的答弁であると、私としては考える。
 少なくともスウェーデン並みのシビアアクシデント用のフィルターが設置されていれば、東京電力福島第一原発はメルトダウン(炉心溶融)したとしても、これほど甚大な各種損害を我が国にもたらすことはなかったであろうことは明らかである。
 この点に関し、前記世界的常識を十分検討した上で、再度政府の見解を示されたい。

五 シビアアクシデント用フィルター付きベント設備(炉心溶融を含むあらゆる事故の際に、炉心から放出される放射性物質のうち外部に放出される物質を〇・一パーセント以下(希ガスを除く)にする条件を満たすもの)に関し、仮に原子炉一基に対して当該ベント設備一機を設置した場合における、その建設費用及び設置費用について、それぞれ政府の承知しているところを明らかにされたい。

  右質問する。